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かお

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様々な場所にある顔について文章を書きます。
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2019年4月の記事一覧

明魚人イェップ



明魚人(めんぎょじん)とは、明太子と人間の、あいの子である。半魚人に明太子が足されたと考えると分かりやすいかもしれぬ。とはいえ、魚卵と魚が合わさったような生き物が人の顔面をして人の言葉を話す、と言われても、大概の人には到底理解し難いものであり、この奇妙奇天烈な化物は長らく認知されることも無く、田舎のドブでひっそりと集落を形成して暮らしていたそうである。

イェップは、メスの明魚人である。両親は

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ロボ・ギャングW4H



ロボ・ギャングのW4Hは、いつものように愚連隊の仲間たち、G5XやMNO69らと、夜の街へと繰り出した。ガソリン・バーで飲んでいると、途中、CGC先輩がやって来た。その姿にW4Hたちは驚いた。何と、CGC先輩の耳から金のボルトが飛び出ているではないか。それだけではない。顎の辺りはチェーンで巻かれているし、へそにはプラチナ・ボルトが埋められている。最高にクールなCGC先輩だった。皆が羨望の眼差し

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ルドルフ・コールナーJr



ルドルフ・コールナーは、北欧にある小さな国の農夫であった。牛を飼い、畑でトウモロコシの栽培をしていた。しかし、あるとき国の独裁者の卑劣な裁定により、牛と畑を奪われてしまうこととなる。彼には妻がいた。牛と畑を奪われるということは、つまり仕事を失うということであり、明日からの食糧もままならぬこと、それはすなわち家庭の死を意味していた。正義感の強いルドルフ・コールナーは独裁者への復讐を胸に、一人立ち

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恋するペンギン



これは、自分の家にある電気ヒーターの裏面である。そろそろ暖房も要らないだろうと思って、ひっくり返したところ、ハッと驚いた。

どう見ても、照れ笑いを浮かべて頬を染めるペンギンの顔に見えるのである。一度そういう風に見えると、もうペンギンにしか見えない。これは、表向きには電気ヒーターであるが、それと同時に、ペンギンでもあるのだ。それにしても、このペンギンは、なぜ照れているのだろうか。

これは自惚

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