のし定食

「とにかく腹が減ったので目についた定食屋に入る。ボロい店内では店主のおっさんが一人で切り盛りしていて、他にお客は3組ほど、なかなか繁盛している。メニューを見ると、当店のおすすめ「のし定食」とある。一体何やろかと思っていたら店主がやって来て、のし言うのはここいらの名物や、まあ言うたら魚のすりもん、ここ来る人は皆が皆のし頼みはるけどな、正直ここだけの話腹一杯にはならんで、と言う。隣のお客が食べている定食を見ると、白飯と味噌汁と香の物と、そして丼山盛りの白いふわふわしたホイップクリームのようなものがあり、そこに醤油を垂らして食べている。あれがのしか、確かに美味そうやけど腹は満たされそうにない。悪いことは言わん、スタミナ定食にしとき、と店主が笑う。そして厨房からボウルを持ってくると、これがのしや、ほら一口食うてみ、とスプーンですくってのしを食べさせてくれた。美味かったが想像通り口の中に入れるとすぐに溶けて無くなる。美味いです、と言うと店主は、そやけど腹一杯にはならん、と改めて言い残して厨房へと消えた。さて、どうするか悩んでいると奥から一匹の小犬がやって来た。もふもふの可愛い茶色のやつだった。犬は自分の体に飛びつくと頬をぺろぺろしてきて、犬好きの自分は喜んでぺろぺろさせてやった。しばらく戯れ合っていると再び店主が現れて、これはうちで飼うてる犬や、人懐っこいからすぐお客さんに飛びつきよる。自分は犬を抱きかかえながら、滅茶苦茶可愛いす、名前は何ですか、と聞いた。すると店主は黙り込んだ後、何でお前に教えなあかんねん、と呟き、瞬く間に雰囲気がピリつく。皆ここに来たらこの子を可愛い可愛いて言う、けどな、こいつは紛れも無くおれの犬なんや、他の奴とそうやって馴れ合ってんのを見たら無性に腹が立つんじゃ、どこの馬の骨か分からん汚らしい奴にやなあ、勝手に自分の犬触られたら気悪いやろ、ものすごムカつく、今ものすごムカついてる、悪いことは言わんから今すぐ出て行け、そうせなおれは包丁でお兄さんを刺してまうかもしらん。あまりに淡々と凶悪なことを言うメンヘラ親父であった。」

最近あまり飯をちゃんと食べていないので、飯の夢を見た。もう少し食べたかった。


何もいりません。舞台に来てください。