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画集「私の時間」について。

作品の解説なんて野暮かな、と思いつつも、例えば自分だったらどうだろうか、好きなイラストレーターが作品について解説していたら?それは結構嬉しいかもしれない。。と思ったのでちょこっとだけ書いてみようと思います。

「私の時間」は前作「境界を渡る」から3ヶ月の間に描いたものをまとめたもので、流れとしては境界を〜からそのまま来ている作品群となります。前回がこっちとあっち、その境界を巡るお話が多かったのに対し今回はその先になにがあるのか、みなそれぞれの場所で自分自身の時間を生きていくのだろうなというぼんやりした感覚から着手しはじめたものです。とはいえ全部を計算づくで描いていくというよりも断片的に思い浮かんだものを言葉でつなぎ合わせていくような感覚でしたからある種パズルのように組み上げるイメージが強くありました。

そして作品をまとめる上でまずとても大事な表紙のデザインについて。画面に大きくラインを引いたのですが、これは地図記号の東西南北を示すものでこの本が生活の中で地図のように心の道標になったら嬉しいなという考えの元デザインしたものです。左下に入れた英文はサンテグジュペリの言葉です。気になった方は検索してみてください。

そして絵についてですが、、これはあんまり明文化しないほうが面白いかなと思いますのでそっと撫でる程度にとどめますが、

表紙絵「私の時間」は以前描いた「まるで夏みたいな、そんな1日だった」をまた別の視点から描いたものです。なので同じ洗濯物が揺れていたり、近い色調で描いていたりします。誰にも邪魔されない自分だけの時間を持っている人ってそれだけで素敵に見える気がします。

2枚目は早朝に誰かを待つ女性です。実はこれはとある絵画のオマージュとして描いたもので壁に差し掛かる複雑な形の影なんかにその作品の面影を見ることができます。結果としては全然違う絵面なのですが…。誰かを待つことってすごく幸福なことだと思います。かならず来てくれるなら。

3枚目はなんだか不穏なペンギンの絵です。よく都市伝説なんかでは鏡の向こうの世界、みたいなお話があると思うのですが、じゃあ水鏡の向こうにも違う世界が広がっていたりするのかな。という妄想がきっかけでした。空を飛ぶペンギンというモチーフはceroのアルバム「WORLD RECORD」に収録されている「exotic penguin night」という曲のイメージからです。ある夜動物園から飛び立ったペンギンたちのお話です。

4枚目は2点透視を描いてみたい!が最初だったので描きながら考えたのですが偶然を装って誰かの訪れをいまかいまかと待っている人がいたらかわいいなって思いついたのでそんなお話にしました。待っているのは手紙じゃなくてあなたなんですよっていつか伝えて欲しいですね。

5枚目はライオンと狼を従えた女性。運命の赤い糸で繋がってるんだからほら、臆せずかかってきなさいよって感じでなんでしょう。。僕がこういうキャラクターが好きなだけですねこれは…。お金とお酒が散らばってるのはどんな手段を使っても勝ちは勝ちだぜみたいなやつです。

6枚目は赤ずきんちゃんです。大きい動物が小さい女の子を守っているような絵面ってかっこよくて好きです。動物はもうちょっとうまく描けるようになりたいな…。

7〜9枚目、この3枚は短期間に描いたものです。夏に会社をやめて無職でやることも無いしとりあえず湘南行くか!って海に入り浸っていた時期があるんですがその頃見た風景や思い浮かんだ情景です。7→8枚目は同じ男の子だったりします。きっとずっとこの夏のことを忘れないんでしょうね。

10枚目、逃げる猫とそれを追うように誘う二人の女の子。夢の中というか、白昼夢的な絵が描きたいなというアイデアからスタートしました。目指した空気感としては「千と千尋の神隠し」のラスト、廃墟となったテーマパークを進んでいくときのあの空気です。明るくてカラッとしているけれどどこか少し不気味さが残るような絵になっていたらいいなぁと思います。しかしこの2人、何者なんでしょうね。

11枚目、いつか作ったgif画像の女の子です。キャラっぽさってなんだ?ていう疑問がずっとあってそれを模索するために描いた絵でもありました。単純にデザインが気に入っているので今後もまたどこかで出演するかもしれません。

12枚目、駐車禁止の看板です。どこまで情報を削れるか?という挑戦です。晴れた日の夕方にふと空を見上げて、今日は雲が無いなって思うあの感じです。遠くで子供の遊ぶ声が聞こえてくるような、そんな時間です。

13枚目、映画「パルプフィクション」のミアみたいな女性です。マフィア映画に出てくるイケてる女性、かっこいいですよね。すごく好きです。

14枚目、いつも地味に奇をてらったアイデアを出したりするんですがあえて思いっきり直球ストレートな絵を描いてみようと思ったのがこれです。ズバリ「オフィーリア」なんですがありがちすぎてちょっと笑っちゃう。でも描いていてすごく楽しかったです。あなたが眠るとき、そばに燦然と輝く月がありますように。

15枚目、なんでもないテーブルシーンです。手紙というモチーフが好きです。誰かが誰かへあてた文章って時点で素敵ですし、ケータイが発展した現代に置いて「時間がズレる」ということはそれだけでロマンを感じます。映画「アメリ」に亡くなったご主人の手紙を偽造して送るというエピソードがあるのですがなんとなくそのあたりを想像して描きました。受け取った人は中身だけ握りしめて給仕の仕事を放り出して出て行ってしまったのかもしれませんね。差出人の元へ。

16枚目、ほとんど乗ったことがないくせに飛行機というモチーフが好きです。旅立つ誰かとそれを見送る誰かと、見送ることもできなかった誰かがいて、そのことをいつか懐かしんだりするのかなと思います。よく考えると飛行機というモチーフは映画「秒速5センチメートル」から来ているような気がします。2章コスモナウトのラストがすごく好きなので。。

17枚目、山脈を前にキャンプをしている人の絵です。これは版画家、吉田博さんの作品に山でキャンプしている作品があり自分もやってみようと思ったのがきっかけでした。版画的なアプローチをするときはよく画集を拝見しています。時代を超えてこんなにも刺さる作品を作った人がいる、というだけで本当に勇気がもらえます。

こんな具合でしょうか。かなりとっ散らかった文章になってしまいましたがざっくりした解説になります。物語については短文集「よるのために」で自分の世界観を補完しているのでもしご興味を持っていただけましたらもう少しで通販も開設するのでお手にとっていただければと思います。

もちろん「私の時間」も現在売り切れになっている「境界を渡る」も通販しますので今しばらくお待ちください。どうぞよろしくお願いいたします。


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