見出し画像

Singin' in the Rain

展示8日目のお昼過ぎです。毎回時報から入っているような気がします。多分気のせいではない。ではないな…?

展示も過ぎてみると早いもので今日を含めてあと3日です。
平日も開いているので自分の個展(3連休含めて5日)とくらべるとゆったりと時間が流れているように思います。思えば遠いところに来たような、そんな気持ちで迎えることになりました。

ここアートコンプレックスセンターというのは四谷に位置する歴史のある建物に居を構えるギャラリーです。普段は彫刻や絵画の展示が主だそうで、それにぴったりの雰囲気と言えます。

実は自分がここを訪れるのは2度目になります。大学生の頃、大槻香奈さんの個展がどうしても見たくて夜行バスに揺られ、安ホテルをとって東京観光も兼ねて名古屋からやってきたのでした。

車窓を流れる道中の景色や東京の街並みがまるで異世界のように感じられ、自分がここに住むことはおそらく無いんだろうなと、悲観するでもなくぼんやり考えていたことを覚えています。

これが6、7年前のことになりますから、光陰矢の如し、過ぎ去ってみれば本当に早いものです。そう考えると今、自分がこのギャラリーで展示しているということが人生の伏線回収のような、満を持しての最終回のような、そんな気持ちでいます。

以前、自分の個展の時も似た話を書いたような気がしますが、インターネットが発達した現代において、こうして実際の場所を借りて絵の具でもないデジタルでの作品を展示することにどういった意味があるのか。ずっと在廊していると、その話題は十人十色、様々な受け取り方があるようです。

特に普段ギャラリーめぐりを趣味としているような方からすると随分異質な展示となっているのではないでしょうか。昔ながらの、一点ものを購入することに意義を見出すならば、どういうスタンスで臨むべきなのか、悩ましいところなのかもしれません。(実際にそう話されている方も見受けました)

印刷された作品を展示するということはどういうことか?

それは、端的に言ってしまえば「作家が思う1番良いロケーションで1番良いマテリアルで、そして最高画質で一つの作品を見ることができる」ということではないでしょうか。

SNSが発達したいま、作品を閲覧するデバイスはほぼスマホと言ってしまっても差し支えはないでしょう。あれだけ隆盛した個人サイトもすっかり鳴りを潜め、お絵かきチャットもなかなか見ない文化になり、絵を描くためのツールは無料で手に入るようになりました。スマホに指で絵を描く若い人もいるほどです。

そんな環境でPCでわざわざイラストを閲覧する人、というのはなかなか稀少な存在になったのではないでしょうか。pixivが一時期ほどの勢いを失ったのもここにあるような気がしています。

さてそうするとどうなるか。
単純に、絵を見る画面が小さくなります。自分の場合ですが、スマホで見やすいように、最初からスマホサイズにしてアップしています。回線速度を気にしてgif画像でイラストをアップしていたあの頃のようでなんだか笑えます。

小さめの72dpiで作品を書き出すと次はどうなるかといいますと、拘ったテクスチャやかきこみが潰れてしまいます。では高画質でアップしたらいいじゃないか。もっともな意見です。が、高画質でアップすると今度はそのデータを使って海賊版のグッズを作る輩が現れます。なんてこったい、です。にっちもさっちもいきません。

そう考えた時、キャンバスなのか、アクリルなのか、作家が思うように、海賊版を気にすることなく、無断転載に頭をかかえることなくファンの方に良い状態の作品を見てもらえる場所というのは、こういった実際の展示会場なのだと考えています。

ついでに作家自身から作品について話を聞くことができますし、デートにも持ってこいです。良いんです、デートで気軽に来たらいいんです。ポストカードを1枚だけ買って、今日という日を思い出すためのアルバムにしたら良いんです。それくらいアートが身近になったらいいなと、僕は思っています。

今週末の土日、一緒に過ごしたい誰かがいるあなたも、特に行くあては無いけれど外出はしたいあなたも、映画を見に行った帰り、せっかく外出したならもうひとイベント欲しいあなたも、ひとつ、「1番良い状態のイラストを見に行く」という選択肢を考えてみるのも、ありかもしれません。

ひとつの最前線がいま、ここにあります。

今回展示へお誘いくださったげみさん、けーしんさん、田中寛崇さん、3人展として肩を並べることになったhikoさん、しらこさん、
ひいてはアートコンプレックスセンターのスタッフの皆様には感謝の念にたえません。
残り2日間となりますが、どうぞよろしくお願いいたします。

http://www.gallerycomplex.com

物販もあるよ!

ご支援頂いたお金は新しいグッズの制作や遠方のイベントへの遠征、取材旅行の費用などに充てさせていただきます。あと単純にモチベーションがものすごくあがります。