【ボクシニ 〜20年のキセキ〜】③

バチンッ!


破裂音のような音が鳴った瞬間
手術台の真上にある照明が点灯し
僕を容赦なく照らしてくる


「眩し過ぎるな」


と思いつつも


「ドラマで見たことあるシーンだ」


と、ちょっと嬉しくもあった


『それではこれより手術を始めます。麻酔を…』


そう言われた瞬間に意識が遠のいていった…




ん?
ここはどこだ?


目を覚ましたと思ったらそこはセピア色の世界
地平線すら見えないくらい広いセピア色の世界


驚きのあまり声を失いかけた
でもそのまま何もせずにいると状況に飲み込まれてしまいそうで


「なんだここは?」


不安をかき消そうと発した目一杯の言葉
その一言を発するのが精一杯
それ以降はただただ呆然と立ち尽くす…


立ち尽くすことしか許さないのではないか?


そう思わずにいられなかった



・・・・・・



どれくらい呆然としてただろう
時間を知るすべはない…


だが、時間を気にすることなくいられたおかげか
少し落ち着いてきて前向きな感情が湧いてくる


「何とかしなくちゃ」


そうつぶやき周囲を見渡してみると
すごくすごく遠くにポツンと人影が見える


あれは……




つづく

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?