【ボクシニ 〜20年のキセキ〜】28

31歳

投げ方を変えた翌シーズン
昨シーズンの勢いのまま順調にスタートを切ったが、なぜか徐々にパフォーマンスが下がっていく
その焦りから練習のし過ぎもたたり
肩を痛めてしまう
それでもプレーをし続けたせいで
肘にも異常をきたす
騙し騙しプレーが続く


「あの時の自分をもう一度…」


昨年の良かったときに戻ろうと
時間があれば試行錯誤した
その間にチームはリーグ優勝を何度も獲得していた
僕は焦る気持ちがどんどん強くなっていったが、調子が上向くことはなかった…


34歳のシーズンオフ

様々なきっかけが重なりイップスになり
投手を辞めることを決め
打者としてチームで活躍することを決心する


それと同時に今までアベレージヒッター(ヒットを打つことを求められる)タイプから
パワーヒッター(ホームランや長打を求められる)タイプにモデルチェンジすることを決心する
それはチームメイトにホームランや長打を打てる左打ちの選手がいないというチーム事情も考慮したからだ
忘年会の席で来季の目標を聞かれ 


「ホームランバッターになる」


とチームメイトに宣言した


…クスクスクス…


失笑されたあと


『お前にそんなこと望んでない』


と言われた…
なぜそんなにまで笑われて否定されなきゃいけないのか
なぜ挑戦することがダメなのか
僕にはわからなかった…


実は野球の常識として
《投げるスピードと飛距離は天性のもので努力ではどうしようもない》
という定説がある
僕は今までの自分の中にある固定概念をすべて捨てることを決心してからというもの
その野球の常識に立ち向かうことも決心した
ただ、なぜか打ち破ることができると思った
確信はないが
自信はあった


毎日夜な夜なバットを振る
プロ野球選手のスイングを参考にしては取り入れてそれを自分にフィットさせていく
モデルとした選手は同じ左打ちということもあり筒香嘉智選手と柳田悠岐選手を主に
それ以外にもたくさんの選手のニュースやドキュメント番組や動画などを見ては
フォームだけでなく、考え方や感覚などあらゆるものを会得しようと試みた
・・・そこで一つの違和感に気づく


僕は右の肋骨が広がらなかったのだ


その理由は事故の傷…
自分の目から腹部を見てカタカナの「ト」のように見える僕の傷口は
傷口が開くような動きをすることを拒んでいたのだ
右投げ左打ちの僕には致命傷だった…


バッティングに必要な回転軸が二つある


地面に対して水平方向に動く横回転
地面に対して垂直方向に動く縦回転
これらが合わさって良いスイングができる
僕には縦回転が圧倒的に足りなかった(できなかった)


気づいたときはショックだった…
だが、嘆いててもはじまらないし
欠点がハッキリしている分、取り組みやすい
それでいて
これが改善できたら絶対プレーが良くなる、チームに貢献できる…


僕に《立ち止まる》という選択肢はなかった


だが、トレーニングは想像以上にたいへんなものだったことを取り組んだ直後に知ることとなる…



つづく


#ボクシニ

#20年のキセキ

#モデルチェンジ #考え方 #取り組み方

#致命傷 #回転軸 #イップス

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鍼灸師・スポーツトレーナー・治療家 本を読むことが苦手、というかできない… そんな畑違いの自分が小説に挑戦しました。 内容はノンフィクションです。 ぜひ一読ください。
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