【ボクシニ 〜20年のキセキ〜】④

僕が14歳の頃


母方の祖母は病気で亡くなった
何の病気かは覚えていない


優しい祖母だった


決して怒ることはせず
いつも語りかけるように話してくれた


一方祖父は俗に言うガンコ親父

いつもビール片手に
説教じみたトークが定番
テレビでプロ野球中継を見ようものなら罵声の嵐だ

何かにつけては祖母にもあたる…
そんな祖父を好きにはなれなかった


でも不思議と
二人の作り出す空間は
居心地がよかった


年に数回しか行かない場所
でも思い出がたくさん詰まった場所



だが、今はもうない………



セピア色の世界
どこか似てる
あの頃の雰囲気と
どこか似てる


あの遠くに見える人影
あれは…
見間違えるわけがない


祖母の背中


あの優しかった祖母にまた会えた
喜びを隠しきれず大声で叫ぶ


「ばあちゃーーーーーん!!!」


遠く離れたところにいるが祖母だ
後ろ姿だが間違いなく祖母だ
僕が14歳の頃亡くなった祖母だ


久しぶりに再会できる


そう思った僕は嬉しくなり、遠くから呼びかける

何度も呼びかける

何度も何度も呼びかける


・・・


だが、祖母は反応すらしてくれない


「あれ?遠いから気づかないのかな?」


そう思いながら近寄る
呼びかけながら近寄る
それでも一向にこっちを向く気配もない…


段々と怒りに似た感情がわいてくる


それでも呼びかけながら近づき
ようやく手の届く位置まで来た


「ずーっと呼んでるのに全然気づいてくれないなんてひどいよ💢」


肩に手をかけながら
怒りの混ざった声で
少し荒々しく言った!


それでも祖母はこっちを向かない…


「こんな近くで話しかけているのに気づかないのはおかしい」


そう思った矢先
祖母が何かを持っていることに気づき覗き込んだ


それは……



つづく


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