散歩から生まれた日本国民

今週の金曜日に大学のテストを控えている僕は、完全に煮詰まってしまったテスト勉強にうんざりして、大学の周りを散歩することにした。

今日はいつもと違う道を歩いてみるか。

通いなれた街だが、歩いたことのない道を歩くと、自分が子供の頃に戻って冒険しているみたいで少しだけ体が軽やかになる。いいリフレッシュになりそうだ。今年の7月は涼しいが、散歩するには丁度良い。

少し歩くと大きな交差点に出た。

ん?よく見ると交差点の周りに警察官が大勢いる。

大勢の警察官は各々が自分たちの定位置を見張りながら交通規制をしていた。全員が笛のようなものを口にくわえ、ピイピイとさえずり声をあげている。その場にいる警察官から感じられるのは周囲への強い緊張感だ。

なんだろう。怖いな。

たぶんこれが普通の反応だと思う。誰だって警察官が急にたくさん現れてピリピリしていたら、安心感を通り越して逆に怪しさを感じてしまう。

職質されないようにしよう。

後ろめたいことは何もないのに、「私は善良な市民ですオーラ」を全開にして交差点を渡ろうとする。

「すみません、交通規制をさせていただいてます。少々お待ちください。」

僕は信号を渡ることを止められてしまった。警察官が信号を操作するので信号はずっと赤のままだ。

なんだよ、迷惑だな。

心では不満の声を漏らしながらも、やはり従うしかない。僕の周りでは信号を待つ通行人達が列を作り始めていた。

すると、1人の大柄な警察官が大声で言った。

ご通行中の皆様、『おれつ』が通られますのでしばらくお待ちください。

なんだろう、「おれつ」って。本当に「おれつ」であっているのか定かではないが、確かにそう聞こえた。何かのパレードでもあるのかと思って期待したが、分からないのでじっとその場で待機だ。

少し待つと、白バイが2台通り過ぎた。目の前の交差点を渡るたびに左右を丁寧に確認している。そしてその後ろを黒い警察車両が通り過ぎる。

これは何か来る。

そう確信した後、すぐに黒くて大きな車が目の前を通り過ぎた。

中に乗っていらしたのは上皇陛下だった。

僕は、はっきりとこの目で見たのだ。車が通り過ぎる瞬間、奥様の美智子様は手を振っていらっしゃった。肉眼で柔らかい表情まではっきりと見えた。

本当に一瞬の出来事だったが、この御料車(皇室専用の車)を見た瞬間、僕は「うにゃっ」という意味不明な奇声を発してしまった。正確に言うと僕だけではない。周りにいたほとんどの人が「わっ」や「うひょっ」といった謎の声を漏らしていた。一台の車が通るだけで、一般人がみんな「うにゃっ」てしまう現象はなかなかないと思う。

そして僕は改めて思った。やはり自分は日本人なのだと。この心の底からの言葉にならない声がすべて、僕が日本人だという理由を物語っていた。







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シミズ マサヤ

大学生。趣味でエッセイを書いています。日本酒とTWICEが好きです。将来の目標は脚本を書くこと。まずはできることから情報発信をしていきたきです。メール:masaya304yahoo.ne.jp
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