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【シュールな設定に隠された真摯なメッセージ】『林檎とポロライド』が描くこと

2022年3月11日公開予定の『林檎とポロライド』。本作は2020年の東京国際映画祭にて公開された作品だ。(その際のタイトルは『アップル』)公開はまだ少し先だが、本作はとても面白く、個人的にはその年の映画祭のラインナップの中でも1、2位を争うくらいお気に入りの作品だった。

是非劇場公開して欲しいと思っていた作品だったので、一般公開が決まって嬉しい限り。今回の記事では本作の見所と魅力をネタバレ無しで伝えていきたい。

林檎とポロライドポスター画像400

物語は、突然、記憶喪失になる人が多発している社会。主人公も突然記憶を失ったということで、病院に運ばれるが一向に良くならない。
そこで病院が提案した『新しい自分作成プログラム』に参加するが…というあらすじだ。

監督はギリシャ出身の新進気鋭のクリストス・ニク。映画祭のラインナップの中でも本作は特に注目していたのだが、その理由の一つは監督の経歴。
というのも、クリストス・ニク監督は、同じギリシャ出身で『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』(2018)、『女王陛下のお気に入り』(2019)で各国の映画賞を受賞している名監督、ヨルゴス・ランティモスの助監督を務めている。

もう一つが本作自体の評価。第77回ヴェネチア国際映画祭においては、オリゾンティ部門のオープニング作品に、第93回アカデミー賞の国際長編映画賞ではギリシャ代表に選出されている。しかも本作を鑑賞した名女優ケイト・ブランシェットが、本作のことを大変気に入ってエグゼクティブプロデューサーとして参加している。
この前情報だけでいやが応でも期待してしまうだろう。

林檎とポロライド② (1)

そんな本作だが「世にも奇妙な物語」のような設定から、鑑賞前はシュールな物語を予想していた。だが、本作は奇抜な設定に反し、誰もが共感できるであろう真摯なメッセージが込められている。

ナレーションや説明台詞は一切ないのに、今、登場人物が何を感じているのか観てると自然に伝わってくる。主人公の孤独を感じさせる佇まいも様になっている。

林檎とポロライド④ (1)

本作のタイトルにもなってる「林檎」と「ポロライド」も鑑賞したらきっと納得することだろう。街並みや色合いがどこか孤独感を感じさせるのだが、小道具などの使い方がレトロチックで温かみを感じるの凄く好きだ。クリストス・ニク監督、ヨルゴス・ランティモスに続き、今後の活躍が凄く楽しみな監督だ。

『林檎とポロライド』は2022年3月11日(金)より、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次公開予定。気になる人は是非チェックして欲しい。


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