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倶知安(くっちゃん)から帰る電車の中で会ったおじいちゃんの話。

ニセコでの演奏を終えて、倶知安から札幌に帰る電車の中にて。

私が座っている席の対席に、昔ながらの長靴を履いたおじいちゃんがやってきて、
「いいですか?」と笑顔で聞いてきた。

私は笑顔でそれに答える。

数秒かけてゆっくりと座ったのち、
「旅行ですか?」と聞いてくるおじいちゃん。

私は、
この「いいですか?」「旅行ですか?」の二言だけでおじいちゃんの不思議な魅力の虜になっていた。

というのも、
話す速度言葉の抑揚・語尾の余韻
そしてその笑顔から、
言いようのない優しさや切なさを感じたから。
言葉に、おじいちゃんの人生がいっぱい詰まっていたのを感じたから。
今思い出しても泣きそうになるくらい優しい声。

私は読んでいる本を一旦閉じ、
ニセコでピアノを演奏して今札幌に帰るところだ、と伝えた。

更に話したそうにしているおじいちゃんを感じながらも、
観光客が沢山いた電車の中はとても静かだったため、
話すのを躊躇っておじいちゃんへの笑顔は残しつつ私は本に目線を落とした。

時間が経ち、小樽に着く頃になって本をカバンに入れると、
「そのカバン、そういう風になってるんだぁ。いいね機能的で」とおじいちゃん。

…余談。
私はHIKAKINさんと色違いのバックパックを使っているのだが、

これが本当に便利な代物で、
MacBook ProやiPadや楽譜を入れる場所(背中の部分)や、
一眼レフなどのカメラを入れる場所(下の部分)、
そしてメインの収納スペース、

計3箇所入れるスペースがあり、メイン部分は上からも横からも出し入れ可能で、上の口はパッチンしてクルンとなってカチっと閉まるのだ!
それが持ち手にもなる!

なんてオシャレで便利!(語彙力なさすぎてごめんなさい。)


さて、本筋に戻るが、
おじいちゃんは上の口がパッチンしてクルンとなってカチッと閉まるのを見て「機能的」と言ったのだった。

私がカバンを一通り紹介したら、

おじいちゃん「いくらくらいするの?」

私「3万円くらいですね」

おじいちゃん「あ〜笑 すごいね、お兄ちゃん若いけどちゃんと稼いでるんだ。わしゃ年金だから無理だ。」

私「おいくつなんですか?」

おじいちゃん「今89歳!脳梗塞やってね、医者さんにとにかく人と喋れって言われたから、声かけるようにしてんの。」

私「あー!それは良いことですね!」

おじいちゃんはとてもハッキリと、心地の良いゆったりとしたスピードで話した。
そして私は、
彼から発せられる言葉、そして彼と共有している時間と空間を「尊い」と思った。

その理由はなんなのか。

『遠くまで出張して、演奏が終わった帰りの電車の中』という状況で、私の心と時間に余裕があったからか。

それとも、
ご高齢の方の人生における残された時間は自分よりも少ないから、
その時間を自分と共有してくれたことに感動したからなのか。

きっと色々な要因が合わさって、おじいちゃんとの時間と空間が尊いものになったとは思うが、

やはり、
おじいちゃん自身の人格が素晴らしかった。
その喋り方に彼の生き様を見た。
生と死を受け入れていた。


実際におじいちゃんに聞いてみないとわからないけど、
話しただけでそれを感じさせるって、どんな人生を送ってきたのだろう。


その人の言葉に、

佇まいに、

人生が詰まっているのだ。


あんなおじいちゃんになりたい。


おじいちゃん「付き合ってくれてありがとう。」

私「こちらこそ、ありがとうございました!」


…きっともうあのおじいちゃんと会うことはないだろう。
自分にとって凄く特別な出会いだったのでここに書き記しておく。

読んでくださりありがとうございました!

読んでくださりありがとうございます!!