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気球に乗ってどこまでも事件

気球に〜
のおって〜
どーこーまでーいこーうー

気球に乗ってどこまでも

という合唱曲がある。


高校生の時、そんなタイトルしか思い浮かばない事件が起こった。

この事件の主役は、
フルサトくん(仮)である。


前に音声配信でチラッと話したが、私の高校時代の副担任は、でんじろう先生だった。

彼が転任してきて最初に受け持ったクラスが私がいたクラスだった。

彼は、教室内で全力でブーメランを投げ、
生徒に手を繋がせて電気を流し、
わたしの指を沸騰した水銀に突っ込んだ。
(確か何かを指に付けると全く熱くない)

やべえ実験だとわたしが呼ばれる。
どんな関係だ。

で、まぁそんな先生がいるくらいだから、当時の我が校のモットーは、偏差値そこそこだけど進学校ではない、というやり方だった。


私は当時帰宅部だったけど、
多分部活はさらに自由だったんだと思う。

水泳部は、試合は褌(ふんどし)で泳いでたというから、多分勝負気があんまりなかったんだと思う。


うちのクラスで、ちょっと地味な感じだった男の子たちがいた。基本的みんなフラットな関係のクラスだったんだけど、まぁ、趣向の違いはそのまま受け入れられていた。

彼らが属していたのは、化学部。


進学校を目指さない我が校は、文化祭に力を入れていた。

クラスごとに楽しい催しに燃える。


でんじろう先生はわたしが教育実習に母校へ行った時は自分の実験ルームを作っていて、もう担任すら関係なく先生なのに出し物をしている始末だ。


そんな自由な文化祭で、比較的地味目だった化学部にあの時はスポットが当たった。


私たちのクラスは演劇をやり、本番が終わってみんなで別棟のちょっと低い屋上に舞台セットを運び、片付け前に外の空気を吸いながら一息ついていた。

みんなで話していると、男子達が
おいおいおいおい、
と言い出した。
わたしは校庭側に背を向けて彼らと話してたんだけど、顔がみんな空を見つめて素になっている。

ん?

と振り向くと、

化学部が公開実験をしていた。化学部の二人は、演劇終わってすぐさま実験に向かっていたようだ。


はい、ご期待通り気球である。



でも、自分達で透明のビニールゴミ袋を切って繋げて作った気球で、人が乗るカゴとかはついていない、シンプルなものだった。


そう、風が強かった。


そういえば同じ化学部のサシハラくん(仮)が、気球飛ばすから見に来てね!と言っていたわ!

一瞬そんなことが頭をよぎった。

気球はものすごい勢いで風を蓄え、ぐんぐんと上がっていた。
それは優に校舎を越える高さで、更に高校の校庭の周りに張り巡らされたフェンスよりも高く上がっていた。


明らかに体育会系ではない化学部の男子達が必死にロープを下で引いているが、どうも負けそうだ。


と、そこに、

フルサトくんが、ぶら下がっているじゃないか!!!!



それで先ほどの男子達はおいおいおいおい、となっていたのだ。


わたしが振り返った時点でも校庭を囲む高いフェンスのてっぺんくらいまでフルサトくんはロープに捕まって上がっていた。
フェンスは確か校舎くらいの高さだった気がする。


下では軟弱化学部が必死にロープを引いている。握力の限界がきたフルサトくんは、ズルズルと、ロープ伝いに滑り降り、無事に着地した。


クラスメイトがフェンス級まで上がり、無事に降りたのだ。


その夜のクラスの打ち上げで、フルサトくんはロープで火傷した掌をみんなに見せ、ヒーローインビューに照れ笑いしながら幾度も答えていた。


同じくクラスメイトで部長のサシハラくんもハラハラだったよー、と熱く語っていた。


打ち上げの時の二人の勇姿がとっても印象的だった。

今思えば、ちょっと微笑ましかったってことだと思う。


とはいえ、気球に乗ってどこまでもいけそうだったフルサトくんのあの姿と、おいおいおいおい、なみんなの反応は今でもやっぱ笑える。



あんこはるかの寄せ書きRADIOのこちらのトークにあった、今でも笑える学校の思い出話の投稿にさせて頂きます。





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