【往復書簡】9通目(急行2号様)

拝啓 急行2号様

最近猫アレルギーを克服しつつあるシモダです。

ずっと駄目だと思っていたものが実は思い過ごしで、蓋を開けてみたらなんてことはないというのはよくある話で、試さずに決めつけるのはよくないなあと改めて実感しました。とはいえ今もまだ目の痒みと鼻水、くしゃみはでます。本当に克服できているのかは定かではありません。

さて、ゴールを決めた時がスタートとして、道具を使うのと使わないのではどちらが早いのかについて色々と考えてみました。

まずはゴールをどこに設定するか。徒競走(100m)ぐらいであれば、号砲が鳴ってから車の免許をとって運転するよりも走った方が早くゴールするでしょう。歩いても余裕かもしれません。そのゴールが例えば42.195kmだったらどうだろう。日本縦断だったらどうだろう。と、距離をずっと伸ばしていくと、必ずどこかで免許をとったほうが早く到着するところに辿り着きます。

次にどんな道具を使うか。先の例にあげたように、自動車だと免許を取るまでにそれなりの時間を要しますが、原付の場合はより早く免許取得できるし、自転車ならばそもそも免許取得の必要もありません。それを使えるようになるまでの時間とそれを使うことによる作業時間の合計が、道具を使わず作業した場合の所要時間より短くなれば、道具を使った方が早くゴールすることができるような気がします。

徒競走の例えを使ってしまったのでややこしくなりましたが、これをものすごくわかりやすく例えた有名な話があります。そう、リンカーンの斧の話です。あまりにも有名なのでここでは割愛しますが、気になったら「リンカーン 斧」で検索してみてください。ここまで書いて昔算数で習った「みはじ(はじき)」を思い出しましたが、ゴールまでの距離と扱えるようになるまでの時間と扱った上での時間をそれぞれ把握できたら、どちらが早いのかは自ずとわかるのではないでしょうか。

ただ、いざ人生になるとゴールの位置も果てしなく遠く曖昧だし、その道具を満足に扱えるようになるまでどのくらいの時間がかかるのかも、その道具を使って実際にどのくらい時間を短縮できるのかも想像がむずかしい。むずかしいからこそ、日頃から思考し続ける必要があるんでしょうね。

急行さんがおっしゃってる「時間がない」ですが、それ自体はやりたいことがあるからこそ芽生える危機感で素晴らしいと思います。書かれているように、解消するための時間をどう捻出するか考える時間を短縮することができれば、多少なりとも行動に使える時間を増やせるでしょう。《時間をどう捻出するのか》を考える時間は、車の免許を取るのと一緒で、ずっと遠くへ早く行こうとする場合には必要な遠回りだと思います。日頃から鍛えましょうお互いに。

京都と大阪、楽しかったです。居住歴でいうと今住んでいる福岡よりも長いので、むしろ落ち着く部分が多々あって。それでも今回も初めて行く場所や、初めて会う方のおかげで刺激的でした。

今のところ自分にとって関西は思考をチューニングするための場所です。じゃあ今の福岡は自分にとってどんな場所なんだろうか。なんてことも考えつつ、関西に限らず、一歩外に出るとまだまだ知らないことだらけなので、引き籠もらず今後も積極的に思考の換気をして、新鮮な空気をひつじがに持ち帰りたいです。

青色について、様々な角度からのご回答ありがとうございます。扱いがむずかしいんですね。青色を組み合わせるという発想自体なかったので、非常に興味深いです。また、深海や宇宙に続く色で怖いというのはなんとなくわかります。その傍らで雲や波といった明るさ(白)に続く色というのも青色の面白さかと。青と白の間、青と黒の間にある、漠然とした色についつい引き込まれてしまいます。

あ、ひつじがののれんは群青っぽい色でオーダーを出しました。理由は色名に「羊」が含まれているからです。安直ですが、「羊(未)」は様々な言葉の中に含まれているので意味づけがしやすいです。青が好きなのもまた事実ですが。

ここまで書いて「抽象画のことがよくわからない」のが具体的にどういうことかという質問をすっ飛ばしてたことに気がつきました。危ない危ない。今回は最後にそれにお答えします。よくわからないというのは言い換えるなら説明ができないに近くて、「どこが好き?」について「ここが好き」と答えることはできますが、「これはどんな作品?」という問いに対して答えられる語彙がなく、言語化するためにじっくり見ればみるほどその奥深さにやられてしまい、結局未だに「よくわからない」という感想になってしまうのです。

ただ、今はわからないけど面白いし(恥ずかしながら昔はその面白さもわかりませんでした)、できればもう少しわかるようになりたい。なので、疑問や違和感を見つけ出して、それをきっかけに世界の解像度をもっと上げていきたいです。急行さんの作品も引き続き楽しみにしてます。

グループ展の最中でご多用かと思われますが、どうぞご無理をなさらず。今回の展示も楽しまれてください。時間があればゆっくりと作品を眺めたいものです。

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