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リスクをとるから企画になる。白T専門店に学ぶ、逆張りの強さ。

博報堂の先輩に夏目拓也さんという人がいる。当時一年目の僕ともフラットに接してくれ、喫煙室でよくくだらないアイデアを話したりしていた。彼の本職はストラテジックプランニングで、いわゆるマーケティングだ。その中身は僕もよく知らない。

5.6年ぶりに彼と会ったのは、Facebook上だった。「世界初 白Tシャツ専門店、オープン!」白Tラバーな僕の目に止まった記事に登場してるのが、夏目さんだった。久しぶりにやられた感があった。

確かに白Tこそ「神は細部に宿る」プロダクトであり、画像やサイズ表記を超えて見比べたり試着したりしないと、いい買い物体験ができない。これだけECが広がるなかで、店舗をやる意味がある素晴らしい企画だと思った。

自分だけの“白T”が見つかる専門店/シロティ

土曜日は白Tに出会いに。「#FFFFFFT SENDAGAYA」

グッドウェアが名前負けしていないワケ。

記事を読んでもらえればわかるが、この店は白Tしか置いてないことに加えて「土曜日のみ開店」という小売ビジネスとしては狂った判断をしている。サラリーマンとしての事情も半分あったとは言え、その思いきりが結果的に行列を生み、価値を高め、日本全国さらには海外からのお客さんを集めている。

いま、この国のアパレル業界は厳しいという話題が絶えない。業界の会う人会う人、みんな悲観的だ。もちろん夏目さんも店を始めるときに色んな業界人にアドバイスもらったらしいが、途中でふと気づいたという。「うまくいってない業界の習慣なわけだから、全部無視というか逆張りしたほうがうまくいくんじゃないか」と。

その結果、白T専門店は大当たりした。一年目だけでなく、二年目はより多くの人を集め、他の小売では出ないような利益を出している。素人革命だ。

普通に考えれば、ここで展開を広げていくところだが、そこは慎重になっている。有名百貨店などからの誘いも全て断っているらしい。普通のマーケティングをし始めては、結局どこにでもあるものになってしまうからだ。例えば、お客さんの中には、もっと開いてくれ、と求める声もあるだろうが、ただそれで曜日や店を増やしたら、全く別の体験になってしまう可能性もある。

これはブランド発想のようで、究極の生活者発想なんだと思った。生活者発想というのは、博報堂の掲げるスローガンだが、実は代理店のような受託ビジネスではこのような企画はできない。たとえ提案することはあっても、実現までリードすることは難しい。なぜなら、誰もこんなふざけたリスクを取れないからだ。

ちゃんとしてる企画というのは、大体つまらない。もちろん広告マンはそのバランスを見極めて、絶妙な企画アイデアを出す。しかしリスク取った、事業そのものが企画みたいなものには敵わないのだ。逆に言えば、リスクを意思決定というか、押し通せるほどの関係になったとき初めて、クリエイティブができるようになる。それは僕自身もEWPEACEでいろんな関わり方の仕事をやっていて実感する。

夏目さんを褒めているのか批判してるのか、わからなくなったが(褒めてます笑)、企画には覚悟が求められるなと感じた夜だった。