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世界一のLCC サウスウエスト航空が掲げる「顧客第二主義」 - バニラエアの炎上から考えたこと

バニラエア航空のような炎上は、他人事じゃない

バニラエア航空が車いすの男性の搭乗を断り、自力で階段を登らせたとニュースになっている。一方で、その男性も確信犯だったのでないかと炎上している。
(関連記事) http://www.huffingtonpost.jp/hirotada-ototake/post_15315_b_17326010.html

この問題は非常に複雑だ。確かに企業としての対応が良くなかったように思うが、正直どの視点でみるか・どういう情報を知っているかによって、判断が変わる類のものだ。一概に意見することは難しい。(追記:前提として、障害者差別解消法は守られるものでなければならない。以下はそこから僕が飛躍して考えてみたものだ)

現場の対応が難しいのは、障がい者に限った話ではない。3年ほど前に任天堂がトモダチコレクションというゲームを北米で出すときに、あるファンが「同性婚できないのはおかしい」と要望を出し、任天堂ができないと回答し、炎上したことを思い出した。

それも「その他」という選択肢があればいいのか。LGBTが必要なのか。いや、もっと別の分け方や表記設定を求める人がいたらどうなるのか。ある意味でキリがないなぁと思ったことがある。(トイレのような公共空間も同じだ。今のところは、その他(多目的)ということで落ち着いてはいるが)

同様の問題は、バニラエアや任天堂に限らず、あらゆるシーンで起こり続けるだろう。高齢者や妊婦、病気怪我などなど、あらゆるマイノリティとしての側面を持った人が基本サービスから何かしらはみ出してしまう可能性をもっている。それ自体は昔からあったことだ。

じゃあなぜこれだけ騒ぎになるかと言えば、誰もがメディアを持ち、発信・共有できるようになったことで、たとえマイナーな意見であっても、会社や社会全体を巻き込んだ議論を起こすことができるようなってしまったことだ。

個人VS企業となったとき、不利なのは明らかに企業のほうだ。損失もケタ違いに大きい。何よりいつどこに、ユーザー拒否のリスクを孕んでいるか、全く読めない。かといって、企業として未だグレーな部分にすべて対応し続けるのは現実的ではないだろうから、現場で柔軟に例外判断していけるようにしていくしかないのだろう。結局、しわ寄せがいくのは現場で働く人々なのだ。

一体だれが、顧客第一主義であるべきと決めたのか

どうしたらいいのか、正直答えは出ない。ただ発想を逆転させるというアプローチはどんなときも存在する。その参考となるのが、サウスウエスト航空である。

1967年創業、1971年運行開始の同社は、バニラエアと同じ格安航空会社(LCC)のパイオニアだ。高い収益率を誇り、顧客満足度も航空業界トップの常連として有名だ。もちろん低コストを徹底したLCCだから、あらゆるものが“無い”。

そんなサウスウエスト航空の理念は「顧客第二主義」だ。その理由は「従業員満足第一主義」を貫いている。社員を大切にすることがが、結果的に顧客満足に繋がるというフィロソフィだ。

サウスウエスト航空のCEOであるハーバート・ケレハー氏は、「従業員を侮辱するようなお客様は自社の飛行機には乗せない」と公言する。そして基本理念として、「ざっくばらんに」「ありのままの自分で」「仕事を楽しもう」を掲げる。その結果、一人一人の社員が創造力を発揮し、サービスを行い、全体の満足を生み出している。まさに逆転の発想だ。

インターネットのおかげで僕らは自由なメディアを持つことができた。どんな個人も声をあげられる社会は素晴らしい。しかし、お客様の声がでかくなりすぎる社会は、裏を返せば、働くのがつらく大変な社会である。そういう状況も、働くことにネガテイブな日本人を増やしてしまっている一因ではないか。僕は、顧客第二主義を掲げる日本企業がもっと出てきてもいいと思っている。