ミルキー

 眠たくて眠たくてしょうがない。病気なのかとおもうほどどんだけでも眠れる。
【プルプル……】
 部屋のコールが鳴るたびにいちいちおどろく。今あたしはヘルスの個室に待機をしている。
「はい」
 コール4回で受話器をあげる。ベッドから徒歩二歩のところなのにまだ覚醒していない頭で寝ぼけた声をだす。
『指名のお客さんです』
「——は、はい」
 別に支度をすることもないのでそのまま部屋を出る。お客さんと対面するカーテンの前に立つ。いちおう背筋を伸ばして。
 フロント側のカーテンが細くあきフロントのおじさんが
「ももちゃん、寝癖なおして。髪の毛すごいことになってるよ」
 ふふふ、と苦笑いを浮かべる。あ、という口の形をつくり両手で髪の毛を撫でつける。おかっぱあたまの猫っ毛の髪の毛。以前は(ほんの1年前)は腰まであった髪の毛はタバコを吸うときライターがみあたらなくてガスコンロの火でつけようとしてそのときに髪の毛がチリチリと音を立てて燃えた。だからそれ以降もう短くしているしタバコもやめた。
 フロントのおじさんがよし、みたいな顔をしたので再び背筋を伸ばす。
「ももちゃんご指名のお客さまどうぞー」
「あ、こんにちはー」
 多分以前にあっているけれど誰だったのか一向に思い出せないまま、こちらの部屋ですと部屋にうながす。
 しかし気のせいで一度もあったことのない人だった。顔なんて憶えちゃいないしさすがに3回あえば憶えると思うけれど。
「えっと、ネットでみてあいたくてきました。どもども」
 お客さんはひどく貧相で痩せていたしおい飯食ってんのかよ、体型が小学生じゃね? と内心噂をしながらもシャワーをする。
「キャー。ほんものだ。かわいいし。うそみたい」
「あ、どもども。ありがとうです」
 ははは。苦笑いしかでない。この台詞などたいていいわれる。ネットに載っているのは身体のみで顔は出てはいない。きっとよほどの美人を想定してくるはずなので想定外だったときのリアクションにはもうすっかりと慣れている。
 お客さんはしつこかった。女体を貪る。その言葉にふさわしいく立派な変態だった。まあそうゆうのにも慣れている。
 お客さんはあまりにも興奮をしたようで勝手に果てていた。ので結果楽だった。途中で睡魔が襲ってきたのにはおどろいた。襲っているのはお客さんなのに。

「僕、豆腐屋で働いているんです」
 なんでそんなに痩せているの。とゆう話題になり、お客さんはそういった。
「あー、だからか」
 なのでそういいかえす。はたしてなにがだからか。なのか自分でも意味が不明瞭だったけれど
「豆腐はヘルシーだものね」
 笑顔をつくりそう締めくくる。
「あ、これ、あげる。美味しいよ」
 帰りぎわポケットから『ミルキー』を取り出しあたしの手の中にパラパラと置いた。合計5つのミルキー。ママの味のミルキー。
「わー、なつかしいー」
 ありがとう、微笑んでうけとった。

 早速ミルキーを舐める。ママの味はしない(いったいどんな味なんだか)けれどすばらしいくらいに甘いミルキーは舌を耽美にした。5つ目のミルキーを食べているときそれはおこった。
「ゲゲゲ」
 ミルキーに銀歯がひっついて取れたのだ。そういえばミルキーで銀歯がとれたのは今に始まったことではないことに気がつく。
「ミルキーは銀歯の味〜」
 あたしは天井を仰ぐ。豆腐欲しかったなぁ。チッと舌打ちをしてまたベッドに横になり目をつむる。

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