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品川区への事務事業評価請願まとめ

 2023年9月、品川区減税会のメンバー最新鋭ねこ(内藤)が、「品川区に導入予定の事務事業評価のあり方に関する請願」を提出しました。

結果的に、品川区はこの請願の内容を満たした「あるべき事務事業評価」を導入しました。こちらのNoteでは、その中で得られた知見や気づきなどを共有します。

なお、最新鋭ねこを含む品川区減税会のメンバーは、ビジネスなどの知見はあっても政治の実務や行政業界には明るくなく、このプロジェクトを始めるまで「請願」というアクションが取れることすら、はっきりとは認識していませんでした。

そう、我々はドシロウトである。


請願とは?

日本国憲法 三章 国民の権利及び義務
第十六条 何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有し、何人も、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。

と、憲法にも明記された国民の正当な権利が請願です。
国や地方公共団体に意見や要望を提出する手段の一つであり、議員の紹介があれば「請願」、議員の紹介が無ければ「陳情」となりますが、どちらも取扱いやプロセスの違いはほとんどありません。

請願は容易には採択されず、品川区の場合、請願や陳情の9割以上が不採択となっています。

具体的な提出方法は、自治体によって大きくは変わらないと思いますが、提出先の自治体に直接問い合わせて確認してください。今回は品川区議会の窓口に電話でも質問しながらフォーマットに内容を記載し、窓口に直接持っていきました。

資料1) 今回の請願書。紹介議員の署名、請願者の個人名や住所に加え、請願の要旨を記載
裏面や別紙にその理由などの資料を追加できる。

請願に至った背景

 品川区には2023年時点で事務事業評価が存在しませんでしたが、森澤区長就任後、事務事業評価を含む行政評価PJに予算が付けられ再開される見込みとなっていました。一方でその中身はまだ確定しておらず、「あるべき事務事業評価」といえるものが導入されるか不透明だったため、私はその要件を区にインプットする方法を模索していました。

資料2) 渡瀬さんのポストなどから学んできた「あるべき事務事業評価の6要件」を整理


プランA:
区長、または同PJの責任者に直接説明するトップセールス型アプローチ

プランB:
請願を品川区議会に提出
 
 実は請願は本命ではなくプランBという位置づけでした。
ビジネスでの知見を転用し、このような施策はキーパーソンへの直接接触が有効と考えていましたが、そのプランAは実現しなかったため、減税派区議である筒井議員のアドバイスでプランBの請願へと方針を切り替えることにしたのです。

請願の狙い

 請願によって「あるべき事務事業評価」の要件を提示し、導入される事務事業評価の質を担保。情報公開を怠る最低レベルの自治体から先進自治体へ一気にレベルアップさせ、のちの減税活動をスムーズにする土台を作るのが狙いです。

 最低レベルからいきなり最高レベルまで持って行こうとしたのは、最初に中途半端な出来の事務事業評価が導入されては、行政側に情報公開はしているという形式的な大義名分を与えてしまい、後に立て直すのは厄介になるという強い懸念を私が持っていたためです。

またまた渡瀬さんのポストを元にした自治体の事務事業評価基準に自治体をプロット

実際の施策と結果

請願にあたって実際に行った施策とその結果を以下にまとめます。

  1. あるべき事務事業評価の定義
     2022年に減税活動を開始して以降、事務事業評価の意義や位置づけ、ベンチマークとなる自治体の事務事業評価の要点を学んできました。そこからポイントは前掲の6要件(資料2)に集約されると自分なりに理解、紙に整理し、区に何を要求するべきかを明確に言語化しました。

  2. 紹介区議と連携しつつ、請願書を作成
     筒井議員の署名が入った請願を提出するため、請願書のドラフトを共有し、内容や書きぶりを調整しました。最終ドラフトには渡瀬さんからもアドバイスをいただき反映させています。事務事業評価のみの論点に集中させるため「減税会」を名乗らず、「草の根勉強会」としたのも最終ドラフトでの変更でした。(資料1)

  3. 委員会の審議を傍聴
     請願書を区議会の受付に提出し、私に発言権があるわけではありませんが、9月の総務委員会の審議を傍聴しました。予想通り反対する議員、賛成派かと思っていたら反対派だった議員、以前私の丁寧なアポ取りをガン無視したwにも関わらず、積極的に賛成意見を述べ賛成票も投じてくれた議員、特に関心がなさそうな議員。消極的かと思っていたら請願書をしっかり読み込み、「6要件のすべては採用済み、または採用予定」とする答弁を行った政策推進担当課長の姿勢を見ることができたのは大きな学びだったのと同時に、後で述べる反省点にもつながります。※実際の事務事業評価が公開されたのち、この答弁通りの「あるべき」が実現したかを確認する必要があります。

  4. 委員会は不採択 
    結果は「不採択」でした。ぶっちゃけ委員会が始まる前に筒井議員からネタバレされていたのでサプライズではありません。しかし、不採択の理由は政策推進担当課長が委員会で述べたように、区の方針で「6要件のすべては採用済み、または採用予定」だからです。請願を採択しなくても、その要望は実現されるからという理由なので、実質完全勝利です。・・・負け惜しみではありません(震え声)


学び、反省点、注意点

 本来はここから書き始めるべきなのですが、請願がどのようなものかイメージが湧かない読者(私と同じドシロウトですよね?)がほとんどでしょうから、あえて時系列に沿って書いてきました。

学び:
請願は採択/不採択だけの話ではなく、各議員や行政の反応を観察する場ともなりました。今回は一回で決着を見ましたが、一度不採択となっても再チャレンジは可能なため、一度目は各議員の論調をしっかり確認することに使い、そこからヒアリングや説明に回っても良さそうです。

・手続き上は議会に請願を提出しますが、行政側もその内容を読み込んで答弁を考えるため、自治体に議論を起こすにも良い手段になりました。

・請願の結果は区のサイトだけでなく、品川区が各戸に配布する『品川区議会だより』にも掲載されるため、区民にイシューを広く周知する広報としても使えます。

『品川区議会だより』より抜粋。ここに「減税」の単語が並ぶ時も近い(?)

・いずれにしても請願は単線的な採択/不採択のプロセスというより、請願を軸にして様々なアクションや相互作用を狙える可能性を持つ施策と捉えるのが正しく、こうした提案プロセスはむしろビジネス分野よりも柔軟な動きが容認されているように感じました。

反省点:
・総務委員会で初めて接触した政策推進担当課長がプランAのキーパーソンで、想定以上に積極的に取り組んでいたことから、品川区のケースではやはりプランAが正解でした。反対派もいる議会に話を持って行ったのは戦略ミスとも言えますが、行政にインプットする機会にもなったため結果オーライという感想です。もっと自信をもってプランAを強硬に推進すべきでしたが、自分が行政業界に明るくないという自覚が、やや消極的な行動に繋がっていました。

・委員会で各議員や担当課長の姿勢が仮説と違ったのは、単に自分の解像度が低かったことを意味しています。事前のヒアリングや接触が足りませんでした。また、筒井議員が他の会派から「この内藤(最新鋭ねこ)っていう人は何者?」と質問されていたことから、自分が各会派を回って説明やヒアリングを行うことを試みるべきでした(当時は単純にそれを考え付きませんでしたw)。

注意点:
・「請願」は左翼系、共産党系に都合よく使われてきた実態があるため、「請願」というだけで保守系議員に警戒されるとのこと。共産党系とは全く異なる動機を(タカりの類ではないと)各会派に説明し、先入観を取り払うべきです。

・このNoteの事例はあくまで品川区というローカルな場の一事例に過ぎない事に留意してください。他の自治体では全く異なる反応があるかもしれません。


最後に「請願はあなたにも出せる!」

実は今回の請願書の一部はChatGPT4でドラフトしました。恐らく日本初のAI作成請願です。日本初の採択されたAI請願の称号を狙っていたのですが、これは達成できませんでしたw。GPTを用いたのは請願の内容を理解できる人であれば、誰でも請願文書が作成できることを実証するためです。

Bingで無償提供(税金ではなく、MS社が料金を負担)されているChatGPT4を使うことで、ある程度はドラフトを作成することができます。

AIの役割はあくまでドラフトで、内容は自分が完全に理解している必要がありますし、請願者本人の責任で提出しなければならないのは当然です。AIには知る方法がないローカルな内容、最新情報は自分で付け加え、GPTが間違ったり足りなかったところは自分で書き直しましょう。Bing版GPTを推奨しているのは、情報の正確性が改善されたGPT4であることに加え、Bing版GPTは情報源や引用元を明示してくれるため、内容のチェックが容易だからです。

次に請願を出すのは、請願を出すのは難しそうだと思っているあなたです。

本記事の拡散、コメントを歓迎しますので、よろしくお願いします。

2024.01 品川区減税会 最新鋭ねこ(内藤)

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