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ねえ、この世界はどうなっているの?日本史上最大の内戦と

歴史上日本最大の内戦が起きたのは熊本と長崎で起きた天草四郎率いる天草・島原の乱で、僕が子供のときに天草四郎なんていうと沢田研二主演の映画、魔界転生のイメージしかなかったんだけど、大人になって天草・島原の乱を調べると自分の生まれた故郷のすぐ近くでこんな歴史があったのかと深いため息をついたことがある。 

天草・島原の乱とは、年貢を納められない百姓や改宗をしないキリシタンに拷問や処刑をしていたことにくわえ、飢饉の被害が大きくなったことがきっかけで領民が起こした反乱である。宮本武蔵も参戦した徳川幕府軍の戦力は12万5800人、天草四郎率いるキリスト教軍が3万7000人。そして損害は徳川幕府群が死傷者8000人以上、天草四郎軍は全滅。

 そのあと日本のキリシタンにとって江戸時代は長い暗黒の時代になるわけだけど(その様子は遠藤周作の沈黙に詳しく書いてある)、僕が驚いたのは、天草に行くと今この現代でもそのころの風習の名残りがわずかながらあるということだ。 世界遺産にも登録された崎津教会の佇む漁村を歩いていると、正月でもないのに玄関にしめ縄を飾っている家がちらほらと現れる。どうしてかを友達に訊いたら、キリシタンということを隠すために一年中しめ縄を飾るということだった。夏の暑いときに玄関にしめ縄を飾った家が建ち並ぶ天草の町並みはなんとなく不思議で、同じ熊本なのに熊本市とはまったく違う歴史を歩んできたんだなと感慨深くなった。 

しかし一言で隠れキリシタンと呼んではいるものの、実は潜状キリシタンとカクレキリシタンは別々の意味を持っており、ふたつの使い方には少しばかりの違いがある。潜状キリシタンとはキリスト教徒ながら表状は仏教徒に改宗したと見せかけていた、偽装棄教をしていた信者のことで、一方カクレキリシタンとは250年ものあいだ隠れてキリスト教を伝承していたため本物のカトリックとは違う形となってしまい、明治に入って禁教令が解けても本家のカトリックには戻らなかった信者のことである。天草と長崎のキリスト教は江戸時代の長い年月を経てオリジナルの宗教になってしまったのだ。 

 最近マーヴィンゲイのWhat's Going OnというLPを買った。写真を見ても分かるとおり、ジャケットの上にはORGINAL MASTER RECORDINGと書いてある。この字が書いてあるジャケットは1970年から続くモービル フィデリティという高音質の復刻レーベルで、去年このレーベルのボブディランのLPを買ったときにあまりの音の良さに驚愕してしまったので今回マーヴィンゲイの名作を予約して購入した。 オリジナルのマスターテープを使っているということだからリマスタリングをしているわけではないと思うんだけど、オリジナルのLPに比べると異常に音がいい。これはレコードをプレスする技術が向上したためで、今までは4つの工程を経て作られていたレコードが途中のふたつの工程を省くことでよりオリジナルのマスターテープに忠実な音になったというわけだ。音はひとつひとつ立体的に重なり合い、ボーカルや楽器の位置がはっきり聞き分けられる。マーヴィンゲイのボーカルを軸に打ち上げ花火のように打ち上がったボイスパーカッションが聞くものを全方向から包み込み、ストリングスはまるで日本昔話のオープニングに出てくる龍のように自由奔放に飛びまわる。特に聴いた瞬間にこれはと感じたのは音の響きがこんなに響いていたのかということだ。今までは音の響きが他の音とかぶって謙虚な佇まいで隠れるように鳴っていたのが、今回は楽器の実音と主役を争うかのように前に出てきている。そしてもちろん回転数は45回転である。  

しかしいくらオリジナルのマスターテープに忠実とは言っても今まで聞こえなかった音が聞こえ、今まで感じなかった音を感じ取ると、何百回、何千回と昔のバージョンを聴いてきた身としては、違和感を感じざるを得ない。ちょうどカクレキリシタンが本物のカトリックを受け入れなかったのと同じように。同じWhat's Going Onでもまったくの別物なのだ。 ただ高音質版はずっと聞いてると慣れるのと、音楽は両方所有でき、その時々で好きなほうを選んで聴くことができるので、同じアルバムでもその違いを楽しもうかなと思います。 

ちなみにカトリックが入ってきて450年以上がたつ天草では、キリスト教と仏教と神道が、神父と僧侶と宮司が共同でイベントをやったりしています。僕はわりとこういう多様性が好きです。

 さて、来週はふたつイベントがあります。 http://shinchangsakamoto.strikingly.com 

よろしく道中

https://youtu.be/H-kA3UtBj4M

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