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車間距離とバッファ

運転では車間距離を充分とることが大切であると頻繁に強調されます。

車間距離がとれていなければ、前の車が急停止、急発進、横転などイレギュラーな動きをした際に巻き込まれてしまいます。相手だけではありません、自分がイレギュラーな動きをした場合の保険にもなります。

さて、車間距離をとることに反対する人、疑問を投げかける人はいないでしょう。バッファ(余裕)の大切さをみんな理解しているということです。

ところが、仕事のスケジュールとなると途端にバッファに対して懐疑的な意見が飛び出してきます。

「もっと早くできないの?」
「このバッファ、本当にいるの?」
「バッファをなくせば◯◯日でできるじゃん」

スケジュールを提出した担当者もそんな空気感の中で

「まぁ、いらないか、バッファ」

とバッファを本当に削ってしまったりします。

これが、車の運転だと考えるとどれだけ危険なことを要求しているのかがよくわかります。例えば、タクシーに乗ったとき。運転手さんに

「もっと早くできないの?」
「この車間距離、本当にいるの?」
「車間距離をなくせば◯◯分で着けるじゃん」

って言いますか?言いませんよね。

運転手さんも、

「まぁ、いらないか、車間距離」

って屈しないですよね。

バッファを削ったスケジュールを立てておいて、「遅延が発生した〜!!」と騒いでいるプロジェクト。たくさんありますね。でも、それが車間距離ゼロで無事故で目的地に到着しようとしていることと同義であることに気づけば、高い確率でうまくいかないことは最初からわかるはずです

仕事で成果を出す人は「できることを確実にやる」のだそうです。決して「できそうもない計画をぶち上げて頑張る」ではないそうです。

趣味なら、不可能にみえる目標に向かって努力するのも良いでしょう。失敗したって自分が困るだけですみますし。しかし、仕事では、そんなことで周りを巻き込むのは本当に迷惑といえます。

「できることを確実にやる」ことがとても軽視されているように思います。みんな「すごいこと」をやろうとするし、周りもそれを要求する傾向が強いように思います。でも、「すごいこと」って「できることを確実にやる」ことの積み重ねの果てにあるものだと思います。一足飛びにできることじゃないです(だから「すごいこと」なのです。簡単にできる「すごいこと」は語義矛盾です)。イノベーションばかりが強調されて、日々の改善が軽視されているように思います。

バッファをとるというのは、種々ある「できること」の内で比較的簡単に導入できることです。基本といってもいいと思います。基本ができなければ難しいことができないのは当たり前です。プロジェクトが失敗するのは難しいことができていないからではないと思います。簡単なこと、基本的なことができていないからです。

バッファ、とれてますか?

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