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2022年のハンバーガー振り返り

東日本ハンバーガー協会会長 イノウエシンゴです。気づいたら全然noteを書かなかった2022年。反省も込めて、全体的な振り返りを。

飲食店の動向

飲食店が大きな打撃を受けた新型コロナウイルス。感染者は増減を繰り返してきたが、2022年は飲食店がなんとか復活し始めてきた兆しを感じることができた。全国の飲食店数は1年間で約3.5%増加(81.6万店舗→84.4万店舗)し、売上も通年で前年比を上回る状況が続いた
(店舗数は食べログ、売上は日本フードサービス協会のデータを参照)

ハンバーガー屋さんの動向

全国の店舗数

一方でハンバーガー屋さんである。全国のハンバーガー屋さんは初めて9,000店舗を超え(9,099店舗)、その増加率は+5.7%となかなかの数値である。この調子で伸び続ければ、ピザ屋(9,373店舗)やフレンチ(11,029店舗)を超える未来も遠くなさそうだ。(店舗数は全て食べログ参照、2023年1月1日現在)

ただ、この9,099店舗にはチェーン店も含まれていることを忘れてはいけない。マクドナルドが2,956店、モスバーガーが1,263店(いずれも公式サイト参照)。この4,219店舗を除くと4,880店舗。やはりまだまだチェーン店が多く、大手チェーンを除くとハンバーガー屋さんは4,000店舗程度と推定される。ちょうど2年前に同じようなデータを出していたので比べてみると、当時は3,000店舗だったので、2年で1,000店舗増えている。この増加は喜ばしいことだ。

東京の店舗

東京都内で2022年にオープンしたのは61店舗(大手チェーンを除く)。これは、2020年の72店舗、2021年の81店舗から比べると少ないが、着実にオープンしていることを考えるとポジティブな数字と言えるだろう。オープンした場所に注目すると、やはり渋谷区、港区、世田谷区などが強く、まだまだハンバーガーも西高東低の図が崩れていない感じがしている。
(すべてデータは食べログを参考に集計)

百名店

2022年も無事に食べログからハンバーガー百名店が発表された。選定ロジックはさておき、きっちりと毎年発表されることで、ハンバーガーが注目を浴びることが大事である。これが当たり前になり、ラーメンや焼肉のように「TOKYO」「EAST」「WEST」が発表されるようになれば、もう食文化として根付いたと言えるかもしれない。

2022年に起こったこと

原価の高騰

2022年はハンバーガー屋さんにとって非常に厳しい1年だった。要因は原価の高騰。特に牛肉の価格がバク上がりした。和牛を使用しているハンバーガー屋さんも少なくはないが、アメリカ産やオージービーフを使っているハンバーガー屋さんも多い。輸送価格と円安により、輸入牛肉の価格はかなり上がった。

kgあたりの牛肉の価格を為替も加味した形で表したグラフが以下である。(出典:世界経済のネタ帳、価格部分のみ加筆)

2012年〜2020年は500円前後だったのが、2022年には750円を超える価格に。ハンバーガーのメインの素材がビーフパティであり、その原価が1.5倍以上高騰しているのだ。もちろん、小麦の価格、乳製品の価格もこの2年でかなり上がっていることは飲食に携わる方であれば実感しているだろう。

やむを得ない値上げ

そういった原価の高騰を店舗努力でなんとか吸収してきたが、2022年はやむなく価格改定をするハンバーガー屋さんが多かった印象である。若干高い食べ物に思われるかもしれないが、そのぶん丹精を込めてハンバーガーを作っているので理解してもらえると嬉しい。

2022年はマクドナルドも2度の価格改定を実施。(2022年3月2022年9月)。2023年に入って本日(2023年1月6日)、再び1月16日以降価格改定をするニュースが発表された。原材料費、輸送コスト、為替の影響は大手チェーンでもカバーできないレベルになってきている。

よくマクドナルドの価格を引き合いに、グルメバーガーの価格が高いという意見を見ることが多いが、そもそもパティの大きさが全く違う(マクドナルドは35グラム前後、グルメバーガーは100〜120グラム)のと、収益手段が異なるので比較にはならない。

進化し続けるハンバーガー屋さん

そういった状況の中でも、進化をし続けるのがハンバーガー屋さんの素晴らしいところだ。使う部位を変えたり、メニューを追加したり、パティの成形方法を変えたり。

ここ数年で増えてきたスマッシュスタイルに挑戦するハンバーガー屋さんの増えた。スマッシュとはパティの作り方で、ミンチ状態の肉を球体にしてグリドル(鉄板)の上に置き、上から押しつぶして焼く方法。基本はミンチ肉を使うことになり、コツを掴まないと綺麗に丸くならないが、うまく仕上げると、ジューシーでありながら、端がカリカリの食感も楽しめるパティが完成する。

数年前にハンバーガーのエキスパートであるGeorge Motz(ジョージ・モッツ)が来日した際に目の前で作っているのを拝見したが、適当にやっているように見えて(失礼!)めちゃくちゃ美味かったのをよく覚えている。

George MotzのSmash Style Cheese Burger

都内では、もともと神田のミッケラーカンダや、代官山のヘンリーズバーガー新宿のショーグンバーガーなどで提供されていたので、食べたことがあるという人も多いかもしれない。

左からミッケラーカンダ、ヘンリーズバーガー、ショーグンバーガー

近年だと、2022年8月にオープンした原宿のジェニファーセブン。今年ではないが2021年10月にリニューアルオープンした上野のANDRA。期間限定だが、蔵前のマクレーンでもスマッシュパティを使ったハンバーガーを2022年12月に提供していた。

左からジェニファーセブン、ANDRA、マクレーン

驚いたのは京都北山の「The Hamburger」である。2022年、思い切ってパティをハンドチョップからスマッシュに変更。スマッシュパティといっても色々あるが、The Hamburgerは玉ねぎを加えつつスマッシュする「フライドオニオンスマッシュ」と言われるオクラホマスタイル(George Motzと同じ)だ。玉ねぎの甘味も加わって最高の状態に仕上がる。

左がTHE American、右がオクラホマオニオン(どちらもThe Hamburger)

まだ話を聞いているだけだが、バンズを自店舗で作ろうと動き出しているお店もいくつかあるようだ。こうなってくるとアレンジの幅も広がるし、楽しみでしか無い。

なんとなく、2022年は原点回帰というか、原材料価格が高騰したこともあり、ハンバーガー屋さんが改めてハンバーガーと向き合い、よりシンプルなハンバーガーを見つめ直した1年だった気がする。

2023年はどんなハンバーガーが流行るだろうか。まだまだ注目ですよ!


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