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春の訪れと冬の忘れ物「モテたい」

春の訪れが近いのか、少しずつ暖かくなってきた今日この頃。

どこかの歌手が「桜」という言葉は、どんなシチュエーションにも当てはめることが出来る最強のワードだということを聞いたことがある。

学生にとっては春は別れと出会いが多く、新たな一歩を踏み出す人も多いのではないかと思う。



ある男は高校卒業と同時に東京の大学に行くことになり、まさしく

「大学デビュー」

という言葉に相応しいほど、東京という街に染まった。

「モテたい、モテたい、モテたい!」

そんな言葉がある男の頭の中を埋め尽くした瞬間から、男は真剣に「モテる」を考えだした。

・相槌の表情やタイミングの練習。
・鏡で毎日笑顔の練習。
・毎月雑誌で特集されている”今月の一押しヘアースタイル”を購入し、その足で美容院に行って「このヘアースタイルにしてください」と頼み込む。
・夜中に本当にモテるのかどうか不安になり、女友達に「なぁ、俺ってモテるかなぁ。モテるってどんな感じかなぁ?」と聞いてリアルなデータを取ろうとするも失笑される。
・”モテる”に関連する書籍を1年間読み続ける。
・モテる為に流行のファッションを常に取り入れる。
・モテる体型を維持するためにランニングや筋トレもした。

そう、男は真剣に「モテる為にはどうしたらいいか」を考え抜いて調べつくした。


その結果、モテなかった。


なぜだ。。男はモテるためのあらゆる行動や発言、表情やファッションを取り入れたのに。

男はそれでも諦めなかった。モテたかった。

だから女性に素直に聞いた。

「俺の何がダメかな?」
「俺のファッションのどこがいけないの?」
「俺、なんでモテないかな?」

聞けば聞くほどわからなくなった。モテたい。モテたい…。なんでモテないんだよ。

街を見渡せば、なぜかチビでデブな男がモテているではないか。全然面白くなさそうなヒョロヒョロのもやし君が女性と腕を組んで歩いているではないか。。

なぜ俺はモテないんだ。疲れ果ててしまった男は、当てもなく電車で東京を離れてリフレッシュしようと決意した。

この1年…俺は何をしたんだろうか。桜が咲く並木道を横目に電車に揺られながら考えた。

海が見える駅で降り、海を見ながら男は考えていた。


「これだけ考えても行動してもモテないなら、もう切り替えて自分らしくいくしかない。流行は追わずに、自分の考えや自分が好きな服を着て生きよう。それでもモテないなら…」


男はその日から変わった。自分の着たい服を着て、自分の考えを伝え、自分が思うように行動した。


すると…モテた。


人が集まるようになった。連絡も沢山来るようになった。飲み会も沢山誘われるようになった。


不思議に思った。あれだけモテたいと思っていた時期はモテなかったのに、自分らしくいるだけでモテるようになるなんて。


それから10年。


男は「モテたい」と考えることは無くなった。いつかの冬に置いてきたからだ。でもきっと「モテたい」は誰かが手に取り同じことを繰り返すだろう。


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