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エームサービスさんの給食事業で「虫の目」と「鳥の目」の重大さに気づいた/マーケティングトレース

今回のマーケティングトレースは株式会社エームサービスさん。

社員食堂を始めとする給食事業を展開している会社です。

もちろんただ食事を社食として安く提供しているだけではありません。
一言でいうなら、「食を通して働く人の生活までをデザインする会社」です。

1. 概要

ということで、まずがその概要から。

◆概要
・創業は1970年代で社員食堂のリーディングカンパニー
・強みは徹底した現場力
・3900の施設を担当しており、各顧客の要望に沿った食事を提供している

◆特徴
・各顧客の要望に応える
 例:バンダイナムコでは「遊び心がある食事の提供」
 例:JTでは毎日利用する社員を飽きさせない工夫
 ※他にはマグロの解体ショーや郷土料理など、顧客の要望に応えている
・新入社員600人で内8割以上が栄養士の資格を取得しているプロ集団
 ※全体で約5500人の栄養士がいて各現場をサポート

2. 4P分析

さらに事業内容を洗い出すために4P分析して事業を紐解いていきます。

Prodact:商品
・社内のデザイナー、スーパーバイザー、栄養士、調理師が協力して顧客の要望を実現
・各現場で顧客の要望を確実に実現するための判断と現場力
・「食」だけではなく、「食を通して得られるそのもの」を提供
 例:顧客が地方で地産地消を求めるなら地元の農家を地道に開拓して最高の素材を手に入れる

Place:流通
・要望があれば全国どこへでも向かう
・企業、学校、病院、介護施設、野球場、刑務所まで給食事業を展開
・各現場で採算が取れるように権限移譲して現場に判断を任せる

Price:価格
・社員にとっては会社の福利厚生として利用できるので格安
・賃料と光熱費は企業側で負担するので食事代が安くても採算が合う

Promotion:広告
・営業部隊が会社の移転や工場新設の情報については常にアンテナを張っている
・コーヒーや給茶から顧客を開拓し、徐々に信頼を獲得して本丸の社員食堂を攻める
・積み上げた実績と顧客の要望に確実に答えていく現場力をウリにしている

3. 社食以外の魅力ある事業

社員食堂以外にも提供しているサービスが魅力的で、色々と経営のヒントになりそうなものが多かったので紹介します。

◆広島カープ本拠地:マツダZoom-Zoomスタジアム
・非日常を味わえる夢のエンターテインメント空間を実現
・バーベキュー、寝転びながらの観戦が可能
・親子三世代になって楽しめる空間づくり
・フードコーナーはエームサービス1社の運営のため料理の重なりを防止

特に広島カープはファンが急増しているのは近年の好調ぶりだけではなく、これまでの野球ファン層のターゲティングを再設計した点が素晴らしい。
他球団で有名なところは横浜DeNAがプロ野球ファン獲得に革命を起こしたことで知られています。
この辺りはまた別の機会でたっぷりとトレースをしていきます。

◆スポーツ栄養士によるアスリートのサポート
・スポーツ栄養士がアスリートを支えている
・選手たちに最高のパフォーマンスを残すためにはどこを鍛えるかをサポート
・身体測定を定期的に実施して体の変化やトレーニングする場所をサポート

※例えば、ラグビー選手だと、皮下脂肪の状態など合計で7箇所を調査して、どこを鍛えて、どのような食事をすれば最高のパフォーマンスが発揮できるかをサポートしているそうです。

◆刑務所
・受刑者の調理の手伝いと調理師になるための指導
・2年間の調理実習で調理師試験の受験資格を取得可能
 ※合格率は100%(8年で48人が受刑)
・包丁は保管を厳重にして先がとがっていない特注のものを使用している
・味見は指導員と刑務官のみ
 ※味見でも多く食べられると妬みを買うことがあるため
・「自分でもまだまだできる」と受刑者に希望を与えている

食を通して受刑者の人生をサポートしている点、非常に感銘を受けました。
自分たちができる範囲をこれまでの実績だけに囚われず、「鳥の目」から見た時にどのくらい可能性を広げることができるか。
この点について、自分の会社や他社の事業を見た時、自分たちの強みをいかに広げていけるかということで非常に参考になりました。
「実績がない」からではなくて、「ここまでやっているから、あそこまで可能性を広げることができる」といったように。

4. 事業の過去の実績とこれからの可能性の広げ方

時代の流れが加速する昨今、最も求められる視点ではないかと思います。
企業だけではなく、個人としてもです。
今までの経験を客観視した時、もっと他に広げて活かすことができないか。
常に自問自答しておりましたが、この問いは正しかったのだと認識できました。
これからも常に自分と逃げずに、これまでの経験をどこに活かせるかを自問自答して答えを導き続けたいです。

様々なお客様がいて要望が違う中で、その要望に合った専門性を磨かなければなりません。
エームサービスさんの場合、いま世界的にも「健康寿命」という言葉が生まれるように食事をサポートする人のニーズが増えてきています。
そんな中でエムサービスさんみたく、これまでやってきた会社としての強みをどう広げればより認知が広がり、価値を提供できるのか。
多くの企業が本当に時間を費やして考える課題はそこであるかもしれません。

目に見えている顕在化された課題ばかり壁打ちで解決しても、本質的な課題が残ったままでは同じような課題がまた生まれて、それを壁打ちしていくことであたかも新しいことをやっている錯覚に陥るリスクがあります。

例えば、健康食品の通販事業者の顧客が伸び悩んでいた時、「新たなWebマーケティングツールを提案してPDCAを回していき顧客獲得を狙う」だけではなく、そもそも企業が再定義するものは以下3つだと考えました。

・世の中に対して解決したい課題は何なのか
・いま求めらているものは何なのか
・これまでの自社の実績を元に最大限解決できる要素はどの程度あるのか

これら3つを解決することによって、新たな事業を展開して成功する確率が向上するのではないかという結論にいたりました。
今日の学びは非常に良かったです。
学びも学び続ければ徐々にではありますが、質が上がるものですね。
自分で言うのも恥ずかしい話ですが。
最初から質を求めず、「量から質を生む」ということ。
これは、常に意識はしておりますが、再認識できました。

ありがとうございました。
エームサービスさんの今後も期待しております。
ステキな会社。

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