スライド1

「顧客の期待に応え続けることはこういうことさ」と言われているようでチロルチョコ。

今回は無意識の間に手を伸ばしてしまう商品の話です。

たとえば、「いつの間にかレジ袋の中に入り込んでいるランキング」が発表されれば、ほぼ間違いなく第一位であろうお菓子。
その名も " チロルチョコ " 

僕らの親世代でも「昔からあった」と言っていた超ロングセラー商品が、" いつ " " どこで " " なに " を経て今に至るのかを知ることは、今後マーケティングを生業にするにあたって非常に重要なことが詰まりに詰まっているはず。
そう感じて、マーケティングトレースすることにしました。

まず、チロルチョコを調べ終えて、一言でいうなら、" 本気で考える面白いことを生み出し続けることで獲得できたファン作りアーティスティック経営 " と解釈しました。

先に結論から言うと今回、チロルチョコを知るにあたって気づいところは以下3点。

■気づいた点

 ・商品立案からブランド構築までのヒントが詰まりに詰まっている
 ・面白い感覚を持ち続けるアーティスティック経営
 ・子供からお年寄りまで愛される理由を明確に実現している会社

さて、そんなチロルチョコの魅力が詰まっている理由を紐解いていきます。
まずは会社概要から。

■企業概要

 ・1903年創業の松尾製菓が当時高級品だったチョコレートを子供が気軽に手に取れるようにと1962年にチロルチョコを販売
 ・人材確保や他社との企画のスピード感を加速させるために2004年にチロルチョコ株式会社として東京に設立した
 ・アーティスチックな文化を社内に根付かせて、企画を立案しやすい雰囲気を構築させた

本社は福岡県田川市の松尾製菓さんになるんですね。
地方から日本中に知られる超ロングセラー商品を開発してブランディングし続けられるヒントが詰まっていそうです。

次にチロルチョコの商品としての概要をまとめました。

■チロルチョコ概要

 ・1962年に元祖となる三つ折りのチョコレートを販売開始
 ・チョコレートを製造する際に訪れたオーストリアの「チロル」という地名から名付けられた
 ・当時は高級品だったチョコレートを子供たちでも購入できる値段で販売することを考えて、完成する前から10円で販売することが考えられていた
 ・オイルショックの影響により1974年に20円、1976年には30円に値上げした
 ・1979年に三つ折りから1つ山に変更して価格を10円に戻した
 ・1990年台初頭にはコンビニやスーパーに販路を拡大することに成功した
 ・10円の小さいサイズではバーコードが読取れないため20円サイズのチロルチョコを販売開始した

最初は当時高級品だったチョコレートを子供が手軽に購入できるようにと、戦後という時代背景から「子供たちへ」という情熱が感じられます。
誰に届けたいかの真意を突いてそれを実現させる。
一点を突き進む覚悟、これが今日にあたるチロルチョコを形成しているのだと思います。

そして、より会社を知るために3C分析4P分析を行いました。

■3C分析

 Customer【顧客】
  ・子供からお年寄りまで全世代を対象
  ・記念品など特別な時に利用したい人
  ・仕事などでちょっとしたお礼をしたい人
 Competitor【競合】
  ・格安の海外商品
  ・国内菓子メーカーの商品
  ・コンビニ各社のPB商品
 Company【自社】
  ・子供からお年寄りまで親しみのある商品を開発した
  ・ブランド力により大手菓子メーカー、地方菓子メーカー、コンビニ各社とコラボレーションできる
  ・遊び心を持った企画の立案から実行までのスピード感と圧倒的アイディアの数

■4P分析

 Product【製品・商品】
  ・親子3代で愛される超ロングセラー商品
  ・コラボレーションによるついつい試したくなるフレーバーの数々
  ・記念品など世界に1つしかないオリジナル製品をオーダーで提供
 Price【価格】
  ・子供でも気軽に買える料金体系
 Promotion【プロモー ション】
  ・様々な企業とのコラボレーション、顧客の目を引く企画商品の開発
 Place【流通】
  ・駄菓子屋からコンビニやスーパーに販売経路を拡大することに成功

これまでのチロルチョコを成長フェーズを大きく3つに分けると以下3点です。

■チロルチョコの成長フェーズ

 ①高級品だったチョコレートを子供に対して安価で提供することに成功
 ②コンビニやスーパーへの販路拡大に成功
 ③コラボレーションやオリジナル商品が顧客の目を引くことに成功

それぞれのフェーズに細かい戦略があり、勝つべき戦を確実に勝っていった戦歴がありました。
しかし、絶対にぶれなかったことは今も昔も変わらずお客さんを楽しませることです。
多くの企業は危機的状況、もしくは売上拡大フェーズに入ると、どうしてもブレが生じます。そして、新たに打ち出した戦略が仇となり、存続危機に直面してしまう。
こちら、帝国データバンクが記した書籍にもいくつか事例が掲載されていました。


そこをブレずに貫き通したのがチロルチョコ。
知れば知るほど偉大な組織だなぁと、一気に会社のファンになってしまいました。

続いて、今後の市場を把握するために、PEST分析を行いました。

■PEST分析

 Political【政治】
  ・増税により消費者購買心理が低下
  ・輸入規制が発生した場合の原料高騰の脅威
 Economical【経済】
  ・2017年度の国内菓子メーカーの総売上高は前年度比 1.5%増となり、売上高は拡大傾向となっている
  ・中でもチョコレートは高カカオの健康志向、アイスクリームは高級やブランド品によって販売効果が出ている
 Social【社会】
  ・健康志向による食事制限などにより間食をしない人が増えつつある
  ・間食をするにしてもオーガニック食品、高カカオなどの健康志向の製菓が広がっている
 Technological【技術】
  ・コンビニ各社はPB商品開発やコラボレーションで差別化を図る施策を展開
  ・工場全自動などIT化による生産コストの見直しが加速している

気になるところは、近年の健康ブーム。
間食をやる人が減ったり、糖質制限による高カカオ製品が大ヒットしたことです。
これまでの顧客は減る可能性が高いと考えられます。
減った顧客や減る可能性が高い顧客に対してどのような価値を与えることができるか。
さらなる顧客インサイトを開拓していく必要がありそうです。

今後の戦略をイメージするために5Forces分析を行いました。

■Forces戦略

やはり商品の入れ替わりが激しい菓子市場。
いくらブランディングが形成されたチロルチョコといえど、競合はその座を虎視眈々と狙っている状況。
この状況の理解を少しでも見誤り、横綱相撲を行った瞬間に一気にその座を覆される。
社外の変動から社内が崩れないための体制が整えられているか、そこが疑問ですね。
もし、「××になった場合は△△する」といったリスクヘッジは意外と大きな組織でも考えられていない状況が多いです。
そして、危機的状況になって、判断を誤った瞬間に「それは気づける危機だった」と言いながら崩れれていく。
起こってからではなく、起こる前までに何ができるかが重要ですね。

もし、自分がCMOだったら。

・海外旅行者がお土産で買いたいと思うような " 外国人でも面白いと思う商品 " を開発し続ける
・イベントに乗っかる形で相乗効果を生む施策を展開(お正月、卒業や入学式、ハロウィンなど)
・チロルチョコ本体としてイベントの開催など文化を形成することで価値を創造していく

商品自体をオーガニックに寄せることは考えませんでした。
そこは小手先だけでは通用せずに、顧客に与える価値としてブレてしまうと考えたからです。
あくまでチロルチョコの価値を守りつつ、ブランディングし続けられるか。

今後の戦略が楽しみです。
ありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?