【薬剤師稲田伸一の薬物乱用防止教室(小学校6年生対象)タネ明かし編】

『どんな感じの授業にするのが生徒さんに伝わりますか?』


今年の7月に小学校の保健室の先生と打ち合わせをした。


『パターンは2つあると思います。
体育館や視聴覚室でドンッと講義をするパターンと
各教室を回らせてもらって授業をするパターンです。
教えるプロの先生方の経験としてはどちらが生徒さんの記憶に残りますか?』


この提案をした時、僕はある程度答えを想像していた。


当然、後者を選ぶだろうと。


あー、わざわざ大変なこと提案しちゃったなぁ…


通常業務の合間にできる仕事ではない。
薬局が休みの木曜日の午前中しか確実に約束できる時間がなかった。


ただ、僕としてもせっかくやらせてもらう授業。


生徒さんの記憶に残る授業にしたいと思ったので、
損得勘定抜きで本気でやらせてもらう気でいた。


同業者によると、薬物乱用防止教室がハマった(ウケた)経験はほとんどないとのこと。


「体育館で既成のDVDを流すのが一番楽でいいですよ」
なんて言われたりもした。

ありえねぇ…お辞めになったらどうかしら?

その頃、ちょうど薬学生さんとのトークセッションの期間限定Facebookコミュニティがあったので、

「そこでみんなで意見を出し合って何とかすればいいわ」

と軽い気持ちでいたら、あっという間に時間切れ。


何とかして多くの人の意見を聞いた上で、
授業を設計しないと僕にとっても生徒さんにとっても無駄な時間になってしまう。


そこで僕はSHOWROOMという生配信のアプリを使って
薬局から配信してより多くの人の意見を聞いてみることにした。


『今度小学校で薬物乱用防止の授業するけど、どんな話が響くと思いますか?』


生配信ではこんな感じで問い掛け続けた。


生配信は2回行い、
その中で今回の事前学習の5つの質問を決定した。

「アルコールとタバコ、覚醒剤をごちゃ混ぜにするとわからなくなる」

といったご意見や、

「子供たちからすれば所詮他人事だから、いかに自分事に落としこめるかが大切」

などなど、本当に勉強になるご意見があった。
(見てくださった皆さん、ありがとうございました!)


ドアップで全国へ生配信なので、
恥ずかしさはあったが、そこはSHOWROOMの美肌機能で何とか乗り切った。

僕は「違法薬物の売り方がわかれば、回避方法も見えてくるはず」という仮説を立てた。

SNS(Twitter)で、

『「あなたが違法薬物の売人だったら、どうやって売りますか?」という問題は小学校の授業で適切か?』

というアンケートを取った。

アンケート結果は
75%賛成!
10%非常識だ!
15%その他

といった感じで、想定内の結果。


PTAからのクレームが出る可能性もあったため、
質問に入れるかの判断は学校の先生に委ねた。
(結果的に5つの質問からもれることになった)

『薬物乱用防止教室の目的は違法薬物に関する知識をつけることでなく、
違法薬物から回避する方法を身に付けること』

このゴールに着地できるように授業を設計すればいい。


「アルコール、タバコを含む薬物を合法か違法かで話すと、
医療用麻薬や大麻の話で辻褄が合わなくなる」


この点も注意して、授業を組み立てた。


6年前はクイズを盛り込んだスライド(40枚くらい)で臨んだ授業が
今回は自己紹介を入れても7枚の目次程度。


事前学習プリントは自由記述式のため、
難しく感じる生徒さんがいるかもしれない。


身近に感じられず、眠くなるかもしれない。


…最近は何かと参加型が流行らしい。


授業に参加してもらおう。


ということで、教室の後ろに貼ってある掲示物の名前を見ながら、
ランダムに生徒さんをあてていった。


これも生徒さんの緊張感を維持できた理由の1つだと思う。


最近の子供はゲームばかりで集中力が保たないとか、
絵がないと理解できないとか、
いろいろ言われる。


でも僕らオッサンの時代にはなかったスマホやタブレットを使いこなせる。


僕らにできないこともたくさんできる。


絶対に優秀なはずだ。


響くポイントもあるはずだ。


そう思って、授業をやらせてもらった。


授業をするたびに学校の先生からフィードバックをもらって次に活かせるようにした。


痛いところを突かれたり、
お褒めの言葉をいただくこともあった。


何より生徒さんが最初から最後まで集中力を切らさずに聞いてくれたことが嬉しかった。

薬物乱用防止教室は薬剤師業界ではトレンドで、
学校薬剤師の研修会でも積極的にやるように言われる。


学校によっては薬剤師ではなく、
警察や麻取がきて授業をするところもある。


芸能人の薬物による逮捕も相次いでいるので、この手の授業はこれからも増えていくだろう。


ただ、僕ら大人はこの授業をノルマ的にこなしてはいけない。


『目的は何か?』


『どこに着地させるか?』

特に専門的知識を有する人間が間違えてはいけないのが
細かな知識の習得は薬物乱用防止授業の目的ではないということ。


ゴールを間違えてしまうと一方的で生徒さんにとって退屈な時間に変わってしまう。


これからの時代を担ってくれる子供たちにダサい背中は見せられない。


『生徒が授業を理解できないのは教える側の問題』


やり方次第で、伝わる授業は作れる。

今回僕が大切にしたのは、

①Twitter
②動画配信アプリ(SHOWROOM)
③学校の先生とのコミュニケーション

この3つだ。

どれも顧客(ユーザー)との距離を縮めることを可能にする。


オンライン(SNS)で薬物乱用防止教室の市場調査を行って、
最終的にオフラインに落とし込んだ。


僕より知識のある人も上手に授業をする人もたくさんいると思う。


それを理解した上で自分にできることは何か?


薬物の知識はあっても、教え方はアマチュア以下。


それを下手に隠そうとすると、知識に逃げる。

逃げたことで守られるのは教える側のプライド(面子)だけで、
生徒さんが違法薬物から逃げる大切なきっかけを奪ったことになる。

自分が担当した学校から違法薬物に巻き込まれる人が出ないことを願っています。

以上、【薬剤師稲田伸一の薬物乱用防止教室(小学校6年生対象)タネ明かし編】でした。


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