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AIでなんでも画像が作れる時代に、あえて真夜中に虹を撮るためにニュージーランドで30時間挑戦した話

こんにちは、私は人知れず密かに存在している美を探して、写真を撮ることに情熱をかけているフォトグラファーの丸山と申します。

みなさん、真夜中にも虹が見られることを知っていますか?
太陽光だけでなく月の光によっても虹が出現するんです。

私はこの事実を知り、ニュージーランドの滝にかかる「月光虹」を撮影するプロジェクトを思いつきました。
みんなが寝ている間にも、山の中にひっそりと美が存在しているなんて、なんかいいですよね。
ニュージーランドには数多くの滝があり、それらを巡るだけでも楽しめるプロジェクトです。

そんな魅力を皆さんと共有出来たらと思います。

Light Sculpture #31 Wishbone Falls, 2020
月光による虹 

これはニュージーランド南島のワナカ湖近くに位置するWishbone滝です。

昼間に撮影した虹と比べても、大きな違いはないのですが、長時間露光の影響もあってか、月光による虹は幻想的で魅力的な雰囲気が漂います。
月光の虹を肉眼で見える人はいるのでしょうか。
目をこらしても私にはまだ見えたことがありません。現場で見ることができたら感動すると思うのですが、残念です。

肉眼で見えないこともあって、撮影自体は、難易度が高いですね。ニュージーランド全土をロードトリップしてロケハンして、満月のころ再度撮影に行きますが、まだ気に入った写真は2枚しか撮ることができていません。

労力の割に成功率が低いので撮影をサボりがちです。

今までは、かなり偶然をあてにして撮影をしていました。滝の向いている方角、撮影場所の地形、月の位置、なんかをもっと科学的に分析して、撮影の成功確率をあげてから、再開しようと思います。

これはWishbone Fallsの虹の位置を探すための広角レンズによる写真

Wishbone falls in New Zealand

撮影は本番用のカメラと虹を探すためのカメラを複数使っています。

虹を探すカメラと本番用のカメラを使用

実際の制作の過程を紹介します。

まず、Google マップをみて、太陽光が直接当たりそうな滝を探します。
ニュージーランドは南半球なので西、北、東を向いている滝に虹がでます。
例えば ”Marokopa Falls”は、西に滝が向いているので夕方、虹が見られそうです。

引用 : www.google.com/maps
引用 : www.google.com/maps

次に、その滝で虹が写っている写真がネット上にあるか調べます。有名な滝は比較的簡単に見つけることができますが、マイナーな滝は実際にその場所に行って確認しないと分かりませんね。

現場に着いたら、アプリを使用して、太陽や月がいつどこに出るのかを確認します。
私がよく使うのはこのアプリです。
このアプリを使用することで、虹が見られる時間帯や、山肌に太陽や月が隠れてしまわないかどうか、季節を変えた方がよいかどうかなどが分かります。

例えばこれ。
8月のArthur's Pass National Parkの滝でのロケハン時の画面です。
この時太陽は木々に隠れてしまっていますが、1月9日なら太陽が出ていると予想できます。
ニュージーランドの8月は冬なので、1月の夏の時期は太陽の位置が高くなります。


また、こちらのアプリを使うとその時に虹の出現するはずの位置が分かります。
私は月の虹用のアプリが欲しいと思っていますが、開発者からは技術的には作成できるが需要がないため、作る価値がないと言われてしまいました。確かに、需要が全くないかもしれませんが、もし誰かがこのアプリを開発してくれたら、私の撮影は非常に効率的になりそうです。

アプリの画面はこんな感じ。
もしも雨が降ったりしていて虹の出る条件だったら、この時この位置に虹が現れることを示しています。

滝の近くに行くのが困難な場合はドローンを使って虹が現れるか調べることもあります。しかし多くの滝は国立公園内にあるので、ドローンを飛ばせることは少ないです。
地図で滝のあたりをつけて、歩いて往復4時間かけて滝を見に行っても、虹を撮影できない状況だったと言うことはよくあります。ドローンを使った確認は、15分くらいでしょうか。

ニュージーランドでドローンを飛ばせる場所は、このアプリでチェックできます。
手続きが煩雑でコストもかかるのですが、国立公園内でも許可を取れば撮影できます。

これは、私が2021年にロードトリップした際に夕方に撮影した”Marokopa Falls”写真です。
この滝は素晴らしく、私のお気に入りの滝のひとつです。

Marokopa Falls

昼間の撮影で、虹が美しく出そうな位置や撮影可能な場所を探します。
水滴が多く舞っていて、背景が暗い場所で虹が美しく出る傾向があります。また、アプリを使用して、いつ頃の満月の時に撮影できそうかを予想します。

そんな具合に、ロケハンを兼ねて昼間の虹も撮影します。

ロケハンの最中にスタッフと撮影した南島の風景

昼間の撮影。水しぶきと風との戦い。この映像は音がでます。


そして、今年の2月の満月の日に、Marokopa Fallsでの月光による虹の撮影に挑戦しました。
ウェリントンから車で6時間のドライブをして、滝まで歩きましたが、なんと登山道が崩れていて予定していた撮影場所まで降りることができませんでした。そのため、高台から夜中に5時間かけて月の移動を確認しながら撮影を試みましたが、結局虹を撮影することができずに帰ってきました。家を出てから30時間の行程でした。

今回はひとりでの撮影でしたが、ニュージーランドには蛇や危険な動物(熊とか)がいないため、夜中に森の中にいても比較的安全です。しかし、滝の水しぶきで地面がぬかるんでおり、機材や私自身が濡れながらの長時間撮影は過酷です。
撮影中はiPadで虹が写っているか確認しながら撮影します。
月とカメラと滝の位置が42°になっているところに虹がでます。
この角度を探すのは何度やっても難しいです。コツはあるのですが、アプリで探せるようになったらいいですね。

どうして虹が42°の角度で見えるのか、その撮影方法は、数年研究していますので、こちらの記事をご覧ください。

撮影機材は使い慣れたこの組み合わせ。
Mamiya RZ67 + Phase One IQ100

Mamiya RZ67 + 250mm + Phase one IQ100

未だにこのカメラの組み合わせがベストだと思うプロジェクトは多いのですが、この滝のプロジェクトは、トータルのクオリティーを考えると今後は変えた方が良さそうです。
虹ってどの距離から角度から見ても、同じ大きさと同じパースでしか見えません。実は虹自体をよく見せることも難易度が高いです。

  • 滝に対しての虹の大きさの関係で、望遠レンズを使用するが、撮影場所が限定されることが多く、適切な焦点距離で撮影することができない。

  • RZと複数の望遠レンズは重い。

  • 暗闇でのピント合わせが難しい。

  • ブレやすい

  • 水に弱い

今回はソニーカメラTamron 150-500mm F/5.6-6.7も試してみました。
フジやHasselbladの中判ミラーレスカメラもいいかもしれません。
プロジェクトごとに最適な撮影機材を考えるのも楽しいですね。

撮影できず、打ちひしがれて帰ってきましたが、自宅でデータをチェックしていたら、虹を探すカメラの方に虹が写っていました。

満月の光によって現れた "Marokopa Falls" にかかる虹
夜中の2時頃

どちらにしても今回は撮影場所が限定されていたので、希望したアングルでは虹を撮影できなかったでしょう。また次回挑戦します。

他の作品のビハインドシーンも少し投稿しています。
こちらもフォローよろしくお願いします。
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まだプロジェクトの途中ですが、5月から東京で始まる写真展で月光の虹の一部を発表します。是非お立ち寄りください。

Shinichi Maruyama "Photographs 2006-2021"
May 11 - July 30, 2023
Gallery Blitz

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