見出し画像

AMRメーカー同士の差別化が激化する米国AMR市場 (ProMatDX)

 パンデミックの影響で様々な業種において自動化が急速に進んでいる米国ですが、最近去年とは異なった動きが出てきているように感じています。この数年、Amazonに刺激されて商品が翌日に届くのも珍しくなくなってきましたが、最近の消費者はさらに短時間で商品を手にすることを望んでいるようで、オンラインで注文し、在庫のある店舗に自分で受取にいくケースが増えてきているようです。米国では店頭に車で乗り付け商品を受け取ることを “Curbside Pickup”(Curbside: 路肩、縁石) と呼ばれていますが、小売店も営業再開が進む中、この Curbside Pickupを支える仕組みに注目が集まっています。
 4月はサプライチェーンや物流系の展示会が開催される時期で、米国最大規模の製造業及びサプライチェーン業界を対象にした展示会「PROMAT」が今年は “PROMATDX” という名称でオンラインで開催されました。PROMATは2年に一度シカゴで開催される展示会なのですが、新型コロナウイルスの影響で会場での展示はなく、オンラインでのバーチャル ブース展示とカンファレンスという構成で開催されました。
 今年の ProMatDXでは、今までの郊外に大型物流拠点を構える形から、都市部に小型の物流拠点を複数構える形へのシフトが感じられました。これは Micro Fulfillment と呼ばれ、小規模の物流拠点をより消費者に近い場所に設けることで、商品を届ける時間の短縮を狙っています。また昨今都市部のオフィス スペースに空きが目立つようになってきており、空いたスペースを運用したいというビルのオーナーの意向とも合致しているようで、都市部の限られたスペースに自動倉庫システム(ASRS: Auto Store/Retrieval System) を導入するケースが増えているようです。ASRSのソリューションを提供する Swislog Logistics社は米国でも現在とても勢いのある企業です。
 また都市部にすでに店舗を持っている生鮮食品を扱うスーパーも冒頭に紹介した Curbside Pickupに効率よく対応するために、買い物客を店舗内に入れない Curbside Pickup専用ないしデリバリー専門の店舗の運用も始まっています。このような店舗は Dark Storeと呼ばれ、店内は従業員ないし自動化された倉庫システムで運用することで、感染対策と物流の効率化を図っています。
 今回の ProMatDXでは、屋内自律移動ロボット(AMR) は Micro Fulfillmentに対する明確な対抗策を出せず、ある程度の広さが動作環境として要求されるAMRは Micro Fulfillmentの流れに乗れていない印象です。また AMRメーカー各社が提供する商品及びサービスも最近は似たものが多くなってきており、AMRメーカーは他メーカーとの差別化に苦労しているように感じました。AMRメーカーの大手 IAM Robotics社はコンベア メーカーと提携し、コンベアと AMRを組合せた独自ソリューションを展開していたのは印象的でした。
 米国では徐々に経済再開が見え始めており、ポスト・パンデミックの取り組みが活発になってきています。特にサプライチェーンや物流の仕組みはデジタル技術を取り入れてより効率が高く、短期間で投資が回収でき、かつパンデミックから学習した消費者を満足させるための取り組みの速さには驚かされます。今年後半にかけて米国市場がどのように変化していくのか非常に楽しみです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?