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国際宇宙ステーションを救え!- 第4回Kibo-RPC開催

 先日月軌道に到達した日本のベンチャー iSpaceHAKUTO-R Mission 1 をはじめ、JAXA の新しい宇宙飛行士 2名も発表されるなど、日本の企業・団体による宇宙ミッションが活発になってきていてワクワク感上昇中です!
そして今年第 4回となる JAXA が主催する「きぼう」ロボットプログラミング競技会 (Kibo-RPC) が NASA の協力のもと今年も開催されます。2月に参加チーム募集の発表が行われ、5月14日(日、JST) に参加申し込みが締め切られます。すでにシミュレーション環境は公開されており、ソフトウェアの開発を進めることができ、6月から 7月にかけて参加国・地域で開催される予選大会を勝ち抜いた代表チームが 9月頃に決勝大会に挑みます。
 Kibo-RPC は国際宇宙ステーション (ISS) において宇宙飛行士をサポートするために開発された「きぼう」船内のドローン ロボット「Astrobee」をプログラミングして様々な課題を解決し、将来の技術者を育成する国際競技会です。参加者は Kibo-RPC に参加することにより、科学技術、工学、数学のスキルを磨くことができると共に、世界各国からの参加者同士で国を超えた交流を行うことで、グローバル人材としての能力を身につけることも期待されています。
参加できるのは Kibo-ABC 加盟国/地域のうち、Kibo-RPC 参加国/地域の大学院までの学生で、現在のKibo-RPC 参加国・地域は、オーストラリア (ASA/OGL)、バングラデシュ (NMST/STEMX365)、日本 (JAXA)、マレーシア (MYSA)、ネパール (NESARC)、シンガポール (Space Faculty)、台湾 (TASA)、タイ (NSTDA)、アラブ首長国連邦 (MBRSC)、米国 (NASA) 、チームは 3 人以上のメンバーで構成される必要があります。

競技内容は次の通りです:

前回のスペースデブリの衝突によるエアリークは、優秀な学生プログラマーの手によって修復され、ISS にも平和が戻った。
しかし、2023年、きぼうの制御装置から、船外制御システムの冷媒として使用されるアンモニアが船内に漏入したことが疑われるデータが確認された。
リーク箇所は冷却水配管内の圧力上昇により経時的にランダムに増えていった。
Astrobee のレーザー照射によりリーク箇所を修復せよ!
※この物語はフィクションです。

Kibo Robot Programming Challenge

競技ルールの概要は次のようになっています:

  • ゲーム開始時に、きぼう船内に複数設置されたターゲットの内のいくつかが有効になる。

  • 有効になっているターゲットの前に Astrobee を移動し、レーザを照射する。

  • 別の有効になっているターゲットの前に Astrobee を移動し、レーザを照射する。

  • 有効なターゲットのすべてにレーザを照射すると、有効なターゲットが切り替わる。また、すべてにレーザを照射しなくとも、一定時間経過することで自動で有効なターゲットは切り替わる。

  • 新たに有効になったターゲットの前に Astrobee を移動し、レーザを照射する。

  • 制限時間以内に Astrobee をゴールに移動させ、クルーにミッション完了を報告する。スコアはターゲットへのレーザ照射と、残り時間によって計算される。

競技ルール概要。Source: jaxa.krpc.jp

 競技に使われる Astrobee はシリコンバレーの NASA Ames Research Center Intelligent Systems Group が開発・運用する Free-Flying Robots (浮遊型ロボット) で、現在 ISS には "Honey" (イエロー)、"Queen" (グリーン)、"Bumble" (ブルー) と呼ばれる 3機の Astrobee があり、JAXA も第2世代となる Free-Flying Robot の JEM自立移動型船内カメラ「Int-Ball2」の開発を進めています。

 昨年開催された第3回「きぼう」ロボットプログラミング競技会 (3rd Kibo-RPC) では 12の国・地域(オーストラリア、バングラデシュ、インドネシア、日本、マレーシア、ネパール、ニュージーランド、シンガポール、台湾、タイ、アメリカ合衆国、ベトナム)から 351チーム、1,431人の学生が参加しました。2022年9月に決勝進出チームのプログラムを ISS のドローン ロボット Astrobee に実際にアップロードし、各参加チームのプログラムが実行されました。参加者は自分たちが作成したプログラムによって ISS「きぼう」内を移動し各タスクを実行するドローン ロボットの様子を手に汗握りながら見守りました。1位は最終ターゲットに 30.2mm の精度で到達した台湾代表の台湾とチュニジアの合同チーム 「KIBO la na tsu bu KIBO and Robology Awesome Aliens」にインドネシア代表のインドネシアとチュニジアの合同チーム 「Bondowoso 3/Prime」が続き、そして第 3位に日本代表チーム 「Space Lark」が入賞しました。

競技を終えた参加学生にメッセージを送る若田宇宙飛行士。Source: NASA/JAXA, humans-in-pace.jaxa.jp

チーム戦略に特色が出たのは飛行経路の選択で、飛行経路の途中にある侵入禁止エリア (KOZ: Keep Out Zone) の上下どちらを通るか、また、KOZ の近くを通過する際に KOZ に当たらないギリギリの飛行経路を通るかで競技時間短縮を狙うなど、各チームの工夫が印象的でした。第3回 Kibo-RPCでは競技時間よりもレーザー照射精度を重視した採点方法であったため、より中心にレーザが当たったタイミングで画像を記録する工夫も注目でした。結果として競技時間とレーザー照射精度のバランスを考えて戦略を立てたチームがより高い得点を得ていました。

今年の Kibo-RPC ではどのようなドラマが生まれるのか、そして将来宇宙ビジネスに携わるかも知れないチャレンジャーたちの活躍が楽しみです。

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