米Amazonは今月6月8日、自社スマートホーム製品向けネットワーク Amazon Sidewalk の運用を米国で開始しました。
　Amazon Sidewalk は周囲の他の利用者の同社製品を介して情報をやりとりする機能を提供する一種のメッシュ ネットワークで、不安定な通信環境においてもデバイスからの情報が確実に送られることを目的としています。Bluethooth LE 及び LoRa WAN (900MHz) をベースにしており km単位のレンジでカバーすることが可能で、これらの製品が接続されたブロードバンド ネットワークにもブリッジします。Amazon Echo 製品群や Ringドアベル製品群を介してスマートプラグやスマートライトなどのスマートホーム製品だけでなく、Sidewalk をサポートしたデバイスであればこのネットワーク経緯で情報のやり取りが可能です。この機能はデフォルトでオンに設定されているため、Sidewalk にプライバシーやセキュリティの懸念を持つ利用者はスマフォの Alexa アプリで意識してオフにする必要があります。
　Amazon Sidewalk 自体はその通信において3層におよぶ暗号化を行っており、運用している Amazon でさえそのデータを参照することができません。さらに通信を仲介するデバイスもデータを 24時間毎に削除し、さらに情報の発信者IDも常に変更されるため、第三者が意図的に情報をトレースしたりハッキングすることが極端に困難な設計になっています。それぞれのデバイスが仲介する一回の通信量は最大 80Kbps、ひと月 500MB以下に制限されており、各家庭のブロードバンド ネットワークへの負荷はおよそ 0.1%前後で影響はほぼ無視できるものと思われます。
　Amazon は現時点で Sidewalk の今後のロードマップを発表していないため、今後この技術が Amazon の製品以外にいつ提供されるのか等不明な点が多いですが、最近話題を集めている忘れ物を探すサービスを運用するためのネットワークやセンサー ネットワークとしてはとても魅力的だと思います。現時点での Sidewalk に関する懸念は、それぞれのデバイスの凡その位置情報もやり取りされていることや、Sidewalk の機能がデフォルトでオンになっている点などです。Sidewalk の普及を目指す Amazon としては所有者が自発的にこの機能をオンにするような設定では普及が進まないと考えたのだと思いますが、もう少し丁寧な説明が欲しいところです。