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【イラスト講座の闇2】

前回noteに書いたイラスト講座の記事に引き続き物申したい事があり筆を取りました。

イラストレーターになりたい人、駆け出しの人に向けてお伝えしたく、体験談とともにお話をします。


皆さん、イラストレーターってどうしたらなれると思いますか?

資格のない職業なので
有償で絵の依頼をいただいた。その時点でイラストレーターと名乗ってもいいのかもしれません。
「いやいや、安価な1件くらいでは名乗れませんよ。」
と謙虚に思うのは当然でもあります。

ここ近年SNS上において
“イラストを教えます”
“イラストレーターのなり方教えます”
と謳っているアカウントを散見するようになりました。
ご存知でしたでしょうか。

最初にそれを知ったのは2年近く前。
調べごとがあってSNSでリサーチしてた時にそのようなアカウントに辿り着きました。
どんな内容を発信してるのか興味もあったのでこの方の公式LINEにも登録してみました。

しばらく何通かメッセージが届いた後に、
イラストで収益をあげるまでのロードマップ的なコンテンツ販売の案内が届きました。

まがりなりにもプロイラストレーターとしてやってきた自分ではありますが、
なにか仕事に繋がる新しい発見でもあればという思いもあって、
しばし悩みましたがその5万円くらいの教材を購入することにしてみました。
まぁまぁな金額です。

その方いわく、
「ビジネスの基本はマーケティング」
なのでそのマーケティングを勉強すればあなたのイラストを売ることが出来るようになります。
私がそのマーケティングを教えます。
とのことでした。

ふむふむ、そうなのかと。

マーケティングなんて特段意識してこなかったので、この教材で学べるんであればと思い付随する数々のワークをこなしてみます。

その中身に触れると、
その中の一つに、ペルソナ設定というものがあります。
ペルソナとは架空のお客さんのこと。
あなたの商品(イラスト)を届けたい人はどのような人物なのか、
住まい、家族構成、趣味などなどかなり細かい設問がありそれを設定していきます。

しょっぱなからここで引っ掛かります(笑)

僕が普段仕事してる取引き相手は企業です。
個人ではありません。
フリーイラストレーターとして仕事していくには個人との取引きはほとんどしません。
いかに多くの企業と繋がって案件をいただいていくか。これが王道です。
でなければイラストレーターとしては食べていけない現実があります。

なので架空の個人を細かく設定することにどんな意味があるのか?
この時点で疑問符が付きました。

しかしそうしろというのでとりあえず進めます。

色々考えました。
例えば、デザイン会社に勤めるデザイナーさん個人を細かくイメージしたらよいのか?
などとむりやり考えながらペルソナ設定をワークにしたがって頑張ってやってみます。

しかし、当然ながらこう思います。
「いやいや、その架空のデザイナーさんの家族構成や趣味や休日の過ごし方なんぞイメージしても、そんなの仕事の受注にまったく関係なくない?!」
「自分はそのデザイン会社から仕事が欲しいんであって、一社員個人の細かいパーソナリティなんて関係ないって!」
イラスト業の実態と照らし合わせるとこのペルソナ設定とやらに合理性を見出せません。

それと、まずイラストを“売る”という表現がとても違和感です。
売るっていう感覚がないのはイラスト本職の人はわかってくれると思います。

この教材で語られてるペルソナや集客相手に
やたらとブロガーさんを例え話として出してきます。

どうやらブロガーさんにイラストアイコンを提供するまでのノウハウは書かれてるようです。

それ以上はありません。

わかりました。
この教材で学ぶことによってブロガーという個人にイラストを提供することは可能かもしれない。

しかし、それ以上はないです。

それだけ?!
まじ?!?!

3度見くらいしました。

SNS戦略やココナラの攻略法などもありましたが
そこで得られるのは頑張っても個人客です。

マーケティングはビジネスにおいて基本かつ有効なのはその通りでしょう。

振り返れば、自分もマーケティングをしてきて仕事を取っていたんだな、という気づきはありました。
それをマーケティングだと意識してなかっただけで。

しかしこの教材で語られてるのは
イラスト業の実態とは乖離しています。
実態を知らないんではないかというほどに。

当然ですが、
ブロガーに限らず、個人相手だけの商売ではイラストレーターという職業は成り立ちません。

月に数千〜数万円くらいの売り上げだったら可能かもしれないけど、それでは当然食べていけないし、
個人客を何年、何十年と永遠に探し続けることは不可能だとも思います。
よっぽと特殊なやり方、特殊な絵柄でない限り。

副業だとしてもこの手法だと小遣い程度が限度な気がします。


ここで色々気づきます。

この人はイラストでどのくらいの実績があるのだろうか?
イラストの受注だけで食べて行けるだけの収益を得られてるのだろうか?

しかしどうやらそんなものは無かったようです。

その人は、
ブロガーさんなどにとりあえず個人に自分のイラストを販売した経験がある。

少なくともイラストでお金を貰ったことがある。食べていけるほどではないが。

しかし、世の中にはイラストでお金を貰ったことのない人は山ほどいる。

その人達よりは私の方が先に進んだ実績が出来た。

なのでこの経験を「商品」にし、そんな初心者たちを相手にこの「ノウハウを教える商売」をしよう。

そんな構造である。

この人は、バックエンド商品としてコンサルも提供しているようです。
何ヶ月かの期間コンサルフィーをいただきノウハウを教えイラストレーターとして育てるという内容。

コンサルの中身を知りたかったので問い合わせしてみたら、本気の人しか教えられないと断られました。
たぶん何十万円です。中身わからず購入する人がいるのでしょうか。
または、僕が長年プロでやってるイラストレーターだと伝えたから避けられたのかもしれない。


そんなことがあったその後、
他にも似たような発信をされてる人がTwitter上で散見されるようになりました。
ついでにその人達の公式LINEにも登録しました。

その発信内容、
はっきりいってやってることが全員同じです。

フリーランスは素晴らしい。
時間も場所も自由だ。
人間関係のストレスもない。
好きなことだけで生きていける。
こんなダメだった私でもできた。
それを実現できたのはマーケティングを学んだからだ!
だから皆私から学んでイラストレーターになろう!
幸せなフリーランスになろう!
私がそれを教えるよ!

そんなキャッチコピーです。

同様にその人達もイラストだけで食べれてる実績は持っていません。
聞いたので確かです。

え?
それでなんでイラスト教えられるの??
イラストレーターになるってそんな簡単じゃないよ?
当然そう思います。

しかし、その方達の教材やコンサルはどうやら売れてるようです。

この実態は、
この人達が、自分の商品を売るためのマーケティング戦略をしてるにすぎない、とも言えます。
この人達のペルソナがイラストレーターになりたいという夢を持ってる人ということ。


そんなお話です。
どう思いますか?
その人達は自分の商品を売るために、心理学に基づき見込み客の感情を揺らせ、
巧みな販売動線によってセールスをかけてきます。




カラクリを言います。

今は個人での起業ブームです。
ビジネスを教える講座やスクールが数多くあります。

その中でよく語られてるのは、

どんなことでもいいので
「自分が過去に乗り越えて達成したこと」
これを搾り出して、
それを商品にし、
同様の事で悩んでる人に提供する
「教える系ビジネス」
をする。

超簡単にざっくり言うとこういうことを提唱しています。
それであればどんな人でも商品を作りビジネスができると。
コンテンツビジネスというものです。

以前何冊か個人起業法の本を読みましたが、
揃って皆このやり方を提唱していました。
もはやこれしかないのかというほどに。

たしかに間違ってはいないでしょう。
この方法論で成功をおさめてる人も多く存在するようです。

しかしです。
僕が思うのは、
「お金をいただいて人に教える」のであれば、
その購入者には必ず満足を得られる結果を与えなければなりません。
その責任が伴うと思うのです。
お金貰ってますから。
ましてやコンサルを受けるとなると大金です。

さらに言えば、
大金を貰って人に教えるのであれば、
マーケティング理論で集客する以前に、その人のその分野での実力がどのくらい伴ってるのかも大きな問題なのだと思います。
ジャンルにもよるかとは思いますが、クリエイティブ業であれば重要事項です。


ここ近年散見されるようになった
「イラストレーターのなり方教えます講座」
をされてる人達はきっとこのようなビジネススクールで勉強されたのだと推測します。
ここで商品作りと集客をみっちり勉強されたのでしょう。
心理学に基づいたマーケティング理論も学んだのでしょう。
なので発信内容や販売同線が皆同じなのです。

上に書いたよう、そのようなスクールで学び起業に成功された人は多くいるんだと思います。
その方達の提供物で購入者が幸せを得ているのならばそれは素晴らしいコンテンツです。
全てを否定してる訳ではありません。

僕が言いたいのは、
イラストレーションの世界を上記に当てはめてビジネスするのははたして正しいことなのか、という疑問です。

何度も言うけど、イラストで食べて行くって並大抵のことではありません。
「私に教われば確実にイラストレーターにしてあげますよ」なんて実績数多のプロでもそうやすやすと言えないと思います。

ましてや、実績が乏しく素人に毛が生えたくらいの人間にどうしてそれが言えてお金をとれるのか、そのメンタリティは逆に尊敬します。

はたして、その人達の受講生はどれだけ成果をあげられたのでしょうか?
立派なイラストレーターを育成できたのでしょうか?
皆独立してフリーランスになれたのでしょうか?
めっちゃ聞いてみたい。


以前とあるきっかけで、先述の教材を販売するイラスト先生と同じビジネススクールで学んでいたという人と話をする機会がありました。
せっかくだったので聞いてみたのですが、
そのイラスト先生のコンサル生でフリーランスイラストレーターになれた人は残念ながらいない、と本人が語っていたそうです。

これが現実です。

言い方悪いですが、こういう情弱ビジネスやめてもらえませんかね。
見ててすごく思います。
本人達も必死の商売かもしれないけど、純粋な夢やあこがれを持ってイラストを描いてる人を養分にしてるようにしか見えないのです。

少なくともビジネスとしてイラストを人に教えるのであれば、
ゆるぎないプロとしての実績を何年も積んでからにして欲しいと思うのです。
そこまで積み重ねてようやくその資格があるとは言えないでしょうか。

例えて言えば、
野球経験はあまりなかったけど大人になって草野球をするようになった。
そこそこ出来るようになった。
よし、そんな私から野球を教わればプロ野球選手になれるよ。半年30万円ね。
そんな話です。
そんな投資できますか?



さて、
なぜ僕が今回このような話を事細かに書いたのか。

それはそういうビジネス講座の中に入った経験からでした。
なのでその人達がどうやって商売をしているか、それがよくわかったのです。

僕自身もイラストコンサルをすることを勧められました。
悩みながらもそのような活動も少ししてみました。
しかし、そのような商売をしたいという感情よりも、
自分はもっとさらに絵のクオリティを上げたい。
イラストレーターとしてもっと高みを目指したい。
そのような願望の方が全然強いと再認識したので自分の絵と向き合う選択しました。

ただ、イラストに関して相談したいという人がいれば何でも答えるスタンスは取ってます。
無償です(笑)
お酒の席でもご一緒できればより饒舌に答えます。
そんな席も何回か経験しました。
熱心な人にはなんでも答えてあげたくなるってものです。



長くなりましたが、
情報は玉石混交です。
イラストを生業にしてる者として、このような発信者には惑わされないで欲しいと思い記事にさせてもらいました。

恨まれますかね?笑


イラストを学ぶのなら専門学校以外にも、
青山塾やMJやパレットクラブなど著名なイラストレーターが講師やられてるまっとうなイラスト塾は昔からあります。
僕自身もHB塾で学ばさせていただきました。
そのような選択肢があることも知ってください。


イラストレーターは素晴らしい職業です。
世界に彩りを与えます。
見た人の感情を揺さぶります。
努力に裏打ちされた素晴らしい技術とセンスに感動します。
僕はそんな全てのイラストレーター達を尊敬しています。

お読みいただきありがとうございました。


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