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【マスタリング編】ステレオを知る

ステレオにミックスダウンした後は、どのような状態にあるのでしょうか。この「ステレオ2ch」の状態を詳しく理解しなければ、マスタリングに進むことはできません。ステレオの状態について解説します。

未だマルチトラックの状態である

マルチトラックと言っても、左右のチャンネルだけではありません。ステレオトラックで位相関係を持っている場合、どのようなものでも「Mid/Side」に分離することができます。例えばドラムトラックであれば、中心に位置するバスドラムやスネアが「Mid」の成分になり、ステレオから「Mid」を引いたものが「Side」の成分になります。これらを別々に処理することを「M/S処理」などと呼びます。

M/Sの作り方

「Mid」の作り方は簡単です。左右のチャンネルを足して、半分の音量(-6dB)にします。「Side」はステレオから「Mid」を引けばよいのですから、「Mid」の位相を反転させたものをステレオに足します。するとステレオに含まれるMidが相殺され、「Side」のみが残ります。

DAWでのルーティング

DAWでのM/Sルーティングの作り方は下記のとおりです。中級者以上を対象としているため、初心者の方には難解な部分もあるかと思いますがご了承ください。

1. ステレオトラックを配置し、ステレオバス「Mid」を作成します。ステレオトラックの送信先はMidバスに設定します。

2. Midバスにモノラル化するエフェクター(なんでも良い)をインサートします。これでMidチャンネルは完成です。Midの出力先はマスター(メイン出力)です。

3. Mid反転用のバスを作成します。便宜上「buffer」と呼称します。Midから100%(0dB)をbufferにセンドします。bufferバスに位相反転エフェクターをインサートし、反転させます。

4. ステレオバス「Side」を作成します。bufferの出力先をSideに設定します。元のステレオトラックから100%をSideにセンドします。これでSideチャンネルの完成です。Sideバスの出力先はマスター(メイン出力)です。

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Studio One 5 でのM/Sルーティング

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モノラル化

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位相反転

Sideの量でステレオ広過ぎ、狭過ぎが決まる

Midはモノラル化していますから、左右で反転関係にある音は相殺されて消されています。言わば左右の差分です。そこにSide成分が足されてステレオを構成します。Side成分が増えるほど、ステレオ感は強くなります。「広ければ良い」というものではなく、「完全」や「限界」という状態があります。限界を超えると、モノラルで再生された時に音量が下がります。また、イヤホンやヘッドホンで聞いた時に明らかな違和感があります。
【ミックスダウン編】ドラムでも解説させていただきました、位相メーターを活用し、限界を超えないステレオトラックを目指してください。一瞬でも0.5を下回ってはいけない訳ではなく、安定して「0.5を維持させること」が重要です。

流通音源でも失敗作は多数存在する

インディーズや、予算がなく制作された音源は、このような知識を持たずにエンジニアの耳だけで作られたものも多数存在します。もし「なんかこの音源はステレオ感が変だな」と思ったら、DAW上で位相メーターを確認したり、M/Sのバランスを取り直してみてください。Side成分を調整することで「正解」という状態が作り出せます。

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