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【2019年】フリーライターが選択すべきライフスタイル

 フリーライターの二極化が進んでいる––。最近、コンテンツマーケティングやコンテンツ制作に関わる人たちの間で、こうしたことが頻繁に語られています。どういうことかといえば、文章力があるライターと、そうでないライターとの差が、大きく広がっているのです。これらはそのまま原稿単価にも反映されており、収入格差が広がっています。

 ここ数年、オウンドメディアが爆発的に増加していることもあり、ライターのニーズは高まる一方です。しかし、予算がないオウンドメディアは、文字単価が1円を切るようなギャラで、発注します。それに、自由を求めて会社員からフリーライターへと転身した人が、飛びつく。一応は需要と供給のバランスが保たれているようには見えますが、そうとは言えません。フリーライターが「搾取」されているだけなのです。

 「手っ取り早く稼げる」「自由に自分らしく生きることができる」など、聞こえのいい言説がSNSやオンラインサロンに蔓延していますが、ライターの稼業はそんなに甘くありません。気軽に始めたところで、必ず苦しむことになります。自由な時間はあるかもしれませんが、精神的な自由を獲得することはできません。

 本当の意味で「自由」になるためには、時間だけなく、収入もある程度確保する必要があります。いくら時間があっても、生活が困窮していては、辛いですよね。しかし、「フリーライター」という職業を選択した時点では、そうしたリスクが伴ってしまうのが、今の日本の現実です。

 私は、文章が社会や企業にとっての、あらゆる課題解決に寄与すると考えていますし、そうした意味で、書き手が増えることは世の中のためになると信じています。こうした使命感から、昨年クマベイス社では、主催セミナー「ライターとして食べていく〜元全国紙記者のライティング講座」を企画しました。熊本と渋谷で開催したところ、おかげさまでいずれも満席となり、ニーズの高さを実感した次第です。

 本稿は、セミナーの中で最も反響のあったトピック「ライターのライフスタイル」を、セミナー資料をベースに、書き下ろしたものです。自己管理が必要なフリーライターという立場。生活リズムが狂いがちな環境ともいえますが、本稿では、私が考えうる中で最も質の高いアウトプットができるライフスタイルについて、まとめました。フリーライターとして食べていく覚悟をお持ちのすべての方にとって、ご参考となれば幸いです。それではご覧ください。

(1)朝は執筆のゴールデンタイム

 ライターは、なぜか夜型の人が多いようです。しかし、私はライターこそ朝型になるべきだと考えています。

 縄文時代を考えてみましょう。私たちの祖先は、どういった生活を送っていたのでしょうか。朝日とともに起床し、日中は外で活動する。そして日が沈んで程なくして就寝していたはずです。つまり、私が考えるに本来、人類には「朝型」「夜型」など存在しない。「夜型」の生活というものは、現代人が作った不自然なものなのです。

 私がライターの方におすすめしているのが、早起きして2〜3時間執筆するスタイルです。朝は、一切のノイズがない時間帯です。早朝からSNSや電話で連絡を取ってくる人は、少ないでしょう。この時間こそ、ライティングの「ゴールデンタイム」なのです。

 私はよく、脳をコンピューターになぞらえてます。パソコンをイメージしてください。ハードディスクの容量が残り少なくなり、かつさまざまなアプリケーションを使用した状態でメモリを使っていれば、動作が遅くなりますよね。一方ハードディスクの容量が十分にあり、メモリもほとんど使用していない状態であれば、パソコンはサクサク動きます。脳でもこれと同じことが起きると、私は考えます。

 朝は、脳をまだ使用していません。ハードディスクの容量がフルで、メモリも使用していない状態です。したがって、処理速度はパソコン出荷時の状態です。一方の夜は、情報を丸一日たっぷり摂取し、ハードディスクはパンク寸前。メモリに至っても、日中摂取した情報に関連して無意識に考えてしまうトピックが多く、フル稼働の状態です。したがって、生産性は著しく低下します。

 朝、原稿を書いた後におすすめしたいのが、軽い運動と熱めのシャワーです。私の場合、週3回程度、朝に30分程度の軽いランニングを取り入れています。ストレッチも兼ねて準備運動は少ししっかり目に。ワイヤレスイヤホン(アップル社製品)とスマホを使用し、好きな音楽を聴きながら、ゆっくり走っています。

 走り終えたら、軽くストレッチして、すぐにシャワールームへ。熱めのお湯を浴びて、身支度をしたら、軽く朝食を摂って出社する。シャワーが脳を切り替えるスイッチの役割を果たし、通常業務にスムーズに入れるというわけです。ランニングとシャワーの副次的な効果としては、アイデアが浮かびやすいということが挙げられます。私がアイデアを思いつくのは、基本的にこのどちらかの時間です。

 ある実験では、「ひらめく瞬間」と「ぼーっとしている時間」とは、脳の使用している部分がかなり似通っていたそうです。一方、一生懸命アイデアを出そうと考えている時間は、脳の使われ方が大きく異なっていたとのこと。何らかの手段で「マインドフル」な状態を作り上げる。これが、アイデアを出す秘訣なのでしょう。そう考えると、ランニングやシャワーの時間も、マインドフルな状態であり、アイデアが出やすいのもうなずけます。

 時々、朝起きてすぐランニングするという人がいますが、私はあまりおすすめしません。なぜなら、最も原稿が進む時間を使っているのと同時に、起床後1時間は心疾患のリスクが高まるとされるからです。

 これらの時間を考えれば、少なくとも午前6時には起きる必要があるかと思います。最初は慣れないかもしれませんが、1週間もすれば自然とできるようになります。そして、あなたは気付くはずです。夜、早く寝る必要があると。個人差はあるかと思いますが、私が考える執筆に必要な睡眠時間は、最低7時間。ということは、午後11時には寝る必要があるということです。ちなみに、私はオフィスがある熊本にいる時は、午後10時に寝て午前5時に起床しています。

 朝を逃すと、物事が頭でまとまらなくなります。分かりやすい、かつ読者に響く原稿を書くためにも、ぜひ朝一の執筆を心がけましょう。

(2)情報収集は朝、時間・ツール・媒体を決めて

 朝やるべきもう一つのことをご紹介します。それは、情報収集です。多くの人は、日中、スマホやパソコンで情報収集を続けます。脳を切り替えることなく、だらだらと続ける。これは、極めて非効率です。

 情報収集は、朝、時間を決めてやるべきです。朝とは、朝一の執筆直後、ランニングの前がおすすめ。もしくはオフィスに出社後すぐでもよいでしょう。

 かける時間は、15分間、もしくは30分間など、自分で厳しく管理する。そのためにも、専門メディア、新聞、雑誌、ニューズピックスなど、チェックする媒体を決めておくことが重要です。じっくり読み込むのは、よほど興味をそそられた記事だけ。それ以外は見出しをパッパッと見て消化しましょう。

 効率的な情報収集になくてはならないのが、グーグルアラートの活用です。このツールは無料で利用でき、キーワードを登録しておけば、前日に投稿されたそのキーワードを含む記事の一覧が、メールで届くというすぐれもの。自分の専門領域のキーワードを登録しておけば、短時間で効率よくチェックできます。

 一方、あまりおすすめしないのが、SNSによる情報収集です。特にツイッターは「沼」にハマりやすく、気がつけば1時間経っていた…なんてことも珍しくありません。ただし、貴重な情報が落ちていることがあるのも、また事実。フォローする人を厳選する、見る時間を15分間と決める、といった対策を必ず施した上で利用しましょう。

(3)フリーランスは家の外で執筆を

 特にフリーランスの場合、自宅で作業するか、外で作業するか、悩ましいところです。本書の読者の方は、フリーランスの方、もしくはフリーランスを目指す方も多くいらっしゃることと思いますので、私の見解を述べておきたいと思います。

 結論としては、朝は自宅、日中は外がおすすめです。

 早朝は空いている場所が少なく、かつ集中力が高いため、自宅で問題ありません。一方、自宅は誘惑が多く存在します。したがって、集中力が落ちてくる日中は外で作業すべきです。

 「外」とシンプルに表現しましたが、どういった場所が想定されるのでしょうか。カフェ、もしくはコワーキングスペースという方が一般的かと思いますが、コワーキングスペースに籍を置きつつ、気分転換に時折カフェで作業するという組み合わせがベストだと考えます。

 フリーランスにとっては、自己管理が最も難しいところです。強制的に仕事をする環境をつくる意味でも、お金を払ってコワーキングスペースに入ることは、必要な投資です。周囲で真剣に仕事をする人がいれば、良い意味での焦りも生まれ、仕事に集中できます。

 ちなみに、私の経験上、純粋な執筆作業は1日4時間が限界です。日中のこれを超える時間については、別の作業にあてることを強くおすすめします。これは、原稿の質を保つ意味でも、極めて重要な部分ですのでお忘れなく。

(4)昼休みも執筆のゴールデンタイム

 あまり知られていませんが、朝だけでなく昼休みの時間帯も、執筆のゴールデンタイム。多くの企業は午後0〜1時に昼休みを取るため、この時間帯は連絡が少なくなります。また、1時間と決まっているため、集中力を保った状態で執筆作業を進めることができます。

 先述したように、執筆作業は1日4時間が限界です。例えば朝3時間、昼1時間と考えれば、もうこれで1日の執筆時間は終わりです。この時間内で集中して、書かなければいけない原稿に取り組む。それでいいのです。

 世間で昼休みが終わる午後1時。その瞬間、オフィスなどでお弁当やサンドイッチを食べましょう。もしくは午後1〜2時で、気分転換のため外に出て、ゆっくりランチをとる。このように、周囲と少し異なる時間軸で動くということは、これからの時代大切なことであると感じます。周囲に迷惑をかけない形で、自分の時間を過ごす。この余裕こそ、良い原稿に直結するのです。

 昼休みがゴールデンタイム、というのは、私の尊敬するマーケターであるアンディー・クレストディナ氏が、米国ラスベガスで開かれたカンファレンスにてプレゼンしていたものです。クレストディナ氏は、米国人らしく合理主義者で、SNSの個人アカウント運用や、プレゼン資料作成も、アウトソーシングしているほど。そんな彼が「昼休みは執筆時間にあてろ!」と言うものですから私も帰国して試してみたところ、原稿がはかどるはかどる。以来、現在に至るまで、続けている次第です。

(5)夕方以降は早く家に帰ろう

 ここ数年、アートに積極的に触れようとするビジネスマンが増えているそうです。米国の世界に名だたるIT企業が、アート鑑賞を研修に取り入れる事例もあるほど。アートが、先行き不透明な時代を生き抜くために必要だと考えられる時代となったのです。

 これまでの時代は、先のことがある程度予測できました。前例踏襲で物事を進めていれば、なんとかなっていたのです。しかしながら、今の時代、1年先のことは誰にも分からないという、まさにカオス状態となってしまいました。こうした時代に求められるのが、柔軟な思考なのです。

 アートは、0から1を生み出すものです。この作業にしっかりとした方程式は存在しません。さまざまなものに触れ、脳のクリエイティビティーを保つ必要があります。そして、そのためには、常に感性を豊かな状態に自らを保たなければなりません。

 私は、ライターもクリエイターやアーティストと似たポジションにいると考えています。つまり、ライターにもクリエイティビティーが必要であると思うのです。その意味では、ライターの皆さんこそ、積極的に美術館や映画館に足を運ぶべきです。お芝居やコンサートを鑑賞すべきです。

 この本の内容を実践してくださるのであれば、早朝から仕事をすることになります。であれば、午後4時もしくは5時には仕事を終えて、街へ繰り出しましょう。東京であれ、地方であれ、美術館や映画館、文化施設は必ず存在します。そこでアートや文化に触れるのです。

 私の尊敬するライターや作家の方々は、日常的にこうした施設に足を運んでいます。私も煮詰まった時や、国内外の出張時に、積極的に美術館へ行くようにしているのですが、心が洗われ、翌日からしばらくの間、原稿がスラスラ書けるようになるから不思議です。

 皆さんも、ぜひ日常にアートや芸術を取り入れてみてください。

(6)SNSを整理するとともに夜はスマホと距離を置け

 SNSは、ライターの大敵です。これは決してオーバーな表現ではなく、「SNS中毒」になって伸び悩むライターは、皆さんが想像する以上に多いのです。

他人の行動ばかり気になり、自分と比較する。自分に向けられたものでないにしろ、罵詈雑言を目にし、なんだか落ち込む。そして気がつけば1時間ほどの「時間泥棒」にあう––。

 もちろん、SNS自体が悪いわけではありません。しかし、距離感や使い方を誤れば、これほど仕事の足を引っ張り、精神にダメージを与えるものはないのです。

 では、SNSとはどのように付き合うべきなのか。私がおすすめしているのが、「宣伝ツール」「仕事ツール」と割り切るというものです。宣伝チャネルはさまざまなものがあります。SNSも、あくまでその一つ。そう考えるだけで、SNSが敵どころか強力な味方となります。

 具体的には、自分が書いた記事やブログのお知らせ、グーグルアラートで得た情報のキュレーション。こういった使い方をすべきです。つまり、あなたが「情報をもらう側」から「情報を与える側」へとポジションチェンジをすればよいのです。

 そのためには、SNSからの情報をコントロールする工夫も必要です。投稿を見てなんだか嫌な気分になるアカウントは、思い切ってフォローを外す。もしくは、設定を変えて投稿が目に入らないようにする。これだけでも、大いに効果があります。

 今だから白状しますが、私は一時期フェイスブック中毒になり、一日何時間もフェイスブックを眺めていました。しかしある時、これではいけないと感じ、思い切ってほとんどの「友達」のフォローを外しました。そうすると、自分のニュースフィードには、友達の投稿が上がってきません。しかし、フォローを外したことは、相手には伝わらず、もちろん「友達」のままです。「友達」のことが気になったり、リアルな場で直接会う際は、「友達」のアカウントをチェックすれば、近況が分かります。ただし、仕事に関する重要な情報を「与えてくれる」人はフォローしたままにしておきます。また、朝の情報収集でフェイスブックを活用している場合は、ニュースサイトのアカウントもフォローしたままにします。極めて簡単なことですが、これだけで、自分の時間と正常な精神状態を取り戻すことができるのです。

 ライターとして食べて行く覚悟を決めたあなたの優先事項は、コンテンツを生み出すことです。あなたはプロのライターです。与える側なのです。このことをくれぐれもお忘れなく。

 SNSと同時に、スマートフォンとの付き合い方も考えなければなりません。夜、ベッドの中でスマホのブルーライトを浴びていませんか? 私の経験則では、ブルーライトを浴びると翌朝の寝起きが悪くなります。そして何より、スマホを見る間、貴重な睡眠時間が削られます。夜は読みたい本を読んで、早く寝ましょう。お酒の量も翌朝に響くので、控えめに。できれば週末以外は飲まない方がベターです。

(まとめ)2019年からは朝型の生活を

最後に、この原稿の中で特に実践していただきたいことを、もう一度まとめたいと思います。とにかく朝型の生活を送る。朝に軽い運動をする。執筆時間は一日4時間。感性の豊かさを保つ。SNSに縛られない。2019年、生活、いや人生を変えたいと考えているすべてのフリーライターの方は、ぜひこれらを意識し、実践してみてください。本当に人生が変わります。

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