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伊豆天城山でハイキング-32

ほろ酔いでお腹もいっぱい。後は部屋でのんびりしてまたお風呂に行けばいいかな。

「私たちの部屋に来るでしょ」

おっと、予想外なお誘い。

ささはどうやら食後の夜会がお好きなようで。
誘われたらもちろん行きますよ。
だって明日の午後にはささ家族とはお別れだから。


彼らの部屋はリビングが狭い代わりに和室が付いている。

「私たちのリビングのほうが広いからこっちに来る?」

「いいよ」

そうなのね。わかりました。

その後ろには私たちの部屋同様、ベッドが二つ並んでいる。

「誰がベッドに寝るの?」

「パパとママに決まっているでしょ」

ららはそう言い、自身は和室に布団を敷いて寝るという。彼女曰く、自分の両親であっても夫婦の間に割って入るわけにはいかないらしい。

「別に2つのベッドなんだから大丈夫でしょ」

「そうだよ」

ささも賛同するけど、ららの意志は固い。

「いやっ、私は和室でいい」

その和室には荷物が置いてあるだけだ。

「後ですぐに寝られるように布団敷こうよ」

そういって、手伝いを買って出るとららはいつもの満面の笑みを見せてくれた。

その笑顔、プライスレスです。

布団は数組用意されている。

「敷き布団一枚だと畳の硬さを感じちゃうから、二枚重ねて敷いちゃえば」

「それ、いいね」

ららの快適な寝心地を思って、自分の経験を生かしてみる。


夜会があると聞いて、わたしたちはハイボールを買ってきていた。

プシュっ!

蓋を開けてカンパーイ。

ららは和室で何やらやっていて、ささもどっかに行ってしまったので、れんと三人で話しながら、私とたぁは互いに足を相手に向けてマッサージをしていた。

夕食後の足のマッサージは私たちの日課。今日を労い、明日を思い、互いに第二の心臓を労わる。

だけど何かと周りが気になってしまう性格の私。
二人だけマッサージし合わっているのは悪いと思い、パパの足をマッサージする。するとららがやってきて、ささがやってきて、なぜだか三人のマッサージをすることとなった。

ささは「足よりも肩を」を言われたので前に座ってもらうと彼女の猫背が気になる。疲れているし、リラックスしているから姿勢が崩れるのは仕方ないけど、それにしても丸い。多分これが彼女の肩こりの原因であって、またハイキング中に歩くのがしんどい理由でもあるんだと思う。
さりげなく彼女の背中の真ん中あたりを押して姿勢を正す。

「そうなんだよね」

彼女もそのことにちゃんと気づいている。私も姿勢が悪かった。そのせいで腰痛もちだったし、よく姿勢のことを他人から注意された。だけど自分から直そうと思わない限り、それが修正されることはない。幸い私は日々練習に励む合気道と出会えたおかげでその大切がわかるようになった。

三人のマッサージをしたけど、誰からも「お礼のマッサージを」と声がかかることはなかった。それに気づいたのは酔いがさめた翌日。
この家族はこういう家庭なんだと理解しよう。それに別にお礼をねだるためにマッサージをしたわけじゃないんだから。


お酒をさらに飲み、気持ちよさに拍車がかかった私は地方クーポンが余るのも嫌だと思い、ハイボールのお代わりとともに彼らにもご馳走することにした。車を出して運転してくれたお礼だ。

「お酒買ってきてくれたら、おつまみとジュースご馳走するよ」

するとれんとららが声を上げたので、スマホを渡す。

「たぁは日本のおつまみが好きじゃないから、彼でも食べられるものを買ってきてね」

そう言ったのに、なぜかホタテ焼きひもとカツオを薄く切ったものを購入してきた。

姉の家族といえども別の家族。気持ちが通じないこともある。

「えぇ、食べないかなぁ」

そう首をひねるらら。

食べないでしょ。だって日本のおつまみ代表みたない二品だから。

もちろんたぁが口にすることはなかった。残念。


「ららは飲まないの?」

酒豪だと豪語する彼女は夕食に一合の日本酒を飲んでからお酒を口にしていない。

「そんなに急いで飲めない」

うーん、よくわからん理由だ。
ただの二十代の呼称と流せばいいのに、流しきれない大人げない私も悩ましい存在だ。


10時後を過ぎたころ、静かなたぁがさらに静かになっていた。彼はソファの上で目を瞑っている。

「もうそろそろ、部屋に戻るね」

「ちょっと待って」

ささはワインやお酒やおつまみなど私たちがお金を多く出していることを気にしてか、昨日購入したゴマキャンディーと共に持参してきたナッツなどのおつまみを持たせてくれた。嬉しい気配りだ。

ありがとう、また明日ね。おやすみなさい。


部屋に戻るとたぁはすぐにソファに座ってぐったり。

何かと気を使い、疲れが溜まったことだろう。

(山では)隊長、今日はいろいろとありがとうね。


もう陽気な酔っぱだし、お風呂は明日にしよう。ささたちも行かないと言っていたし。

寝る準備をしたら早々にベッドに入る。
体が疲れていたせいかすぐに眠りについた。寒いと思ってつけっぱなしにしておいた暖房、夜中に暑くなって目が覚めてしまったのでスイッチオフにしたらさらに深く寝ることができた。



主な登場人物:
私-のん、夫-たぁ、
姉-ささ、姉の夫-れん
姪っ子-らら、甥っ子-ぼう



これまでのお話



【無空真実よりお知らせ】

いつもご覧いただき、ありがとうございます。

Amazon Kindleより二冊の電子書籍を出版いたしました。

長年にわたり心の深い場所に重たいしこりがあり、一時は「もう真から笑うことはできないんじゃないか」と思ったほど。
だけど日々の生活や旅行を通じ、一筋の光が現れてちょっとずつ自分を取り戻し続け、今回の旅は私に人生の節目を与えてくれた。

神話の土地から届くエネルギーを通して、私は一体、何を体験できて、何を知れるんだろう。

準備は整った、さぁ旅にでよう。

人生を模索しながら生きている二人の旅をどうぞお楽しみください。







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