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伊豆天城山でハイキング-05

11月3日、旅行当日。
たぁは電車に乗り遅れないように朝のミーティング開始時間を早めてもらい、5時に起床。昨夜はお互い翌朝のことを思って深く寝られなかった。
私も仕事に追われ気味なので、彼と一緒に起きてまずはシャワーを浴びに行く。

旅行準備はほとんど昨日のうちに終わらせていた。
数日前に安売りでつい買い過ぎたジャガイモはささに半分もらってもらおう。山に持っていくお菓子は既に購入済だ。私は暇な時間に仕事をとパソコンを、そしてたぁはいつでも楽しめるようにとミニギターを持っていく。また三泊四日の旅中、ずっとハイキングシューズでは疲れるのでこれらは持参して履き慣れたスニーカーで出かけることにしている。
二つの中型ハイキングリュックと小さなスーツケースにすべての荷物が入っている。

お互いシャワーを浴び終わると時間通りとばかり彼のミーティングが始まり、私はパソコンに向かう。
たぁの予定を知っている仲間たちは淡々と話を進め、早めに終わらせてくれた。ありがとう。

余った時間、家で時間潰しをするのもなんだから予定より早く家を出ることにしよう。

お家さん、行ってきます。留守の間も安全、平和に過ごしていてね。


ちょうどラッシュアワータイム。コロナ渦の時は信じられないほど空いていた電車にも人が戻ってきているはずだ。
重たい荷物持って混みあう電車に乗り込む恐怖よ。
乗り慣れていないだけに心構えが必要。

今日は木曜日、だけどラッキー祝日なのね。
だから車内にはそれなりのスペースがあって、なんなく新宿に到着できた。

バンザイ、文化の日。

久々に降り立った新宿駅西口、そういえば工事をしていた記憶があるような、ないような。
ちょっと様変わりしていて小さい頃から使い慣れている場所なのに少し迷ってしまった。

「窓口が混みあっている場合は券売機をご利用ください」

一番早く開くという窓口に行くと外国人の団体さんが一つの受付を利用していたけどもう一つが空いていた。名前を言うと予約番号を伝えることなく、スッとチケットを発券してもらえた。
うまく行き過ぎるとちょっと拍子抜け。でも無事、チケットゲット出来てよかった。

まだ8時ちょい前、20分ほど時間つぶしする必要がある。
とりあえずホームへと向かうと一本前の小田急ロマンスカーが停車していた。乗り込む人や到着した人、私たちのように乗る電車を待つ人でカオスなエナジーに気が乱れる。

「コーヒー飲む?」

「いらない」

混雑が苦手なたぁに気を紛らわすアイテムを差し出そうとしたけど断られてしまった。幸い、ロマンスカーが多くの人を吸い上げてくれたところだったのでベンチが一つ空いている。そそくさとそちらに移動して憩いの場所ゲット。
たぁはイヤフォンを耳に付けすぐに現実逃避。私はトイレに行った後、スマホで本を読む。

一ページ、一ページめくっては、残りの厚みが減っていくことに嬉しさと寂しさを味わえる紙の本が好きだったけど、荷物軽減を謳われスマホ、kindleアプリで読むようになってからその手軽さにはまってしまい、もう戻れない。

ネットでチケットを予約した時は満席と言われたけど案内板の表示では残り僅かとなっている。

もしかしてギリギリで申し込めば二人並んで座れたのかな。

いやっ、ギャンブルした時こそ負けるものだ。前後ろの席でも予約が取れたことを良しとしよう。

出発まで5分前、そろそろ列に並ぼうか。
席を確保できた車両は二号車。入り口近くのホームに「2」と書かれた列に並んでいたけど到着したロマンスカーには片瀬江ノ島行きと表示されている。

えっ、どういうこと?

改めて案内板を確認してみると私たちが乗り込む電車ははこね号とえのしま号の併合運行で相模大野駅で切り離しが行われるようで、私たちが並んでいた列はえのしま号の二号車だった。

私たちはえのしま号二号車の指定席券もっていないし、えのしま号は目的地である小田原には行かない。それに連結車両だから車内ではこね号へと移動出来ないよ。

危ない、危ない。

ウロチョロしていたら前車両が箱根湯元行きだとわかり小走りでそちらへと向かう。

無事、はこね号の二号車に乗り込み、私が前に座りたぁが後ろに座る。
彼はハイキングでも自転車に乗っている時でも私を視界に収めていることが安心に繋がるらしい。席に座れば移動することはなくともここでも同じフォーメーションでいこうではないか。

共に窓側に座る乗客は女性。

「すいません」

小さく声をかけて座るもののその後は全く会話を交わさない。なんとも日本人らしい。私は話しかけられ過ぎて自分の時間を持てないよりも互いのプライベートを大切にするこっちのほうが好きだ。もし何か問題が起きれば互いに助け合う。そのくらいが丁度良い。

電車は乗り込んですぐに発車した。
風景を見たりたまにスマホをいじくったりしていると後ろから中国語が結構なボリュームで聞こえてくる。

たぁが話してる?

そう思って後ろを振り返るも彼はイヤフォンに耳を傾けている。だけど静かな車内、その声は度々耳に入ってくる。

私の隣の女性が秦野駅で降りた。
電車が発車しても隣に人が来なかったので、たぁに「おいで」と合図するも彼は首を横に振る。
まぁ次の駅が小田原だから面倒と思う気持ちもわからなくもない。
ならば独占窓から外の風景を楽しもう。

それから15分ほど電車に揺られ、小田原駅に到着。

「隣の女性が中国人で後ろの男性とずっと話していた」

「何それ」

「多分、二人とも窓側席に座りたかったんじゃないかな」

隣にではなく後ろに話しかけるから声量が大きくなる。それは彼のオーディオブックタイムを妨げ、私の耳にも届いた。
前後で話すくらいなら隣同士に座ればいいのに。そうしたら私たちも隣同士に座れたのに。

叶わぬ「タラレバ」に過去を夢見る。

ロマンスカーに乗ってすぐささに連絡した時は「ナビの到着予定時間は予定通り9時半です」と言っていたけど、時間が経つにつれその予定は崩れ「10時10分到着予定」になっていた。

「小田原城でも見てくれば」

それが彼女からのアドバイスだったけど朝からバナナしか食べていない身。これからささと合流して車移動。万が一渋滞にはまればランチがいつになるかわからないからちょっと何か食べておきたいな。

改札を出るといろいろなお店が目に飛び込んできた。この土地ならではの食べ物をいただきたいけど、ザ・日本食が苦手なたぁには無理な話。小田原駅直結のショッピングセンター、ラスカ小田原にドトールを見つけた。

「ここにする?」

「うん」


お話の登場人物:
私-のん、夫-たぁ、
姉-ささ、姉の夫-れん
姪っ子-らら、甥っ子-ぼう


これまでのお話


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