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伊豆天城山でハイキング-22

道にボコボコと岩が登場することが多くなり、道も荒くなり始めた。

高低差マップによれば、万二郎岳ルートのほうが勾配がきついはずなのに、さほど急すぎる道ではない。

いつになったら、激しくなるのかな。

歩き進めてもそんな様子は一向に起きず、見晴らしがよい場所に出てきた。

雲が点々と浮かぶ青い空。遠くに海が見え、紅葉とのコラボがたまらない。天気に恵まれたことを改めて感謝する。


青空を前に岩ゴロ道を進んで行く。

全ての岩が安定していればただその上を歩くだけでいいけど、不安な箇所が多いから気を付けながら進んで行く必要がある。

空は木々に隠されることなくずっと見えているから、頂上もそう遠くないはず。

たくさんの色づいた葉が落ちた地面から苔を生やした石がボコボコと顔を出す。

なんて素敵な色使いなんだ。

人間だったらそう簡単に思いつかない情緒を自然はいとも簡単に作り上げ、惜しげもなく私たちに見せてくれる。

秋ってやっぱり素敵な季節。


今回のハイキングでささ家族が一番躊躇していたことはコース上にトイレがないこと。

「発着地点の駐車場以外、どこにもトレイがないのが心配なの」

なんだ、そんなことか。

大丈夫、とっておきの方法を教えてあげるよ。

「そんなの野ションでいいじゃん」

ハイキング好きでトイレが近い、私からしてみればどうしてそれが心配なのか疑問とばかりに答えを授けるも、何かとラグジュアリーがお好きなご家族、羞恥心がおありなのようで・・・・・・。

「ららは今までにしたことある?」

「あるけど、できればしたくない」

そう返答が返ってきた。

そっか。

生き方が違えば、「それはそうなんだろうけど、別の解決方法」を求めるんだろうな。
携帯トイレを持っていったとしても、それ専用の個室がなければ野で行うのと同じことだ。

だけど、ないものはない。

しないか、野ションかの二択しか私たちには与えられていない。


先には多くの人が集まり、そこが万二郎岳の山頂であることを示している。

私は結構前に人気のない場所でトイレを済ませていた。しかし、我慢を続けていたのかここになってささとれんがトイレを要求したので、ルートからちょっと離れた適度に隠れられそうな場所を彼らに伝え、私とたぁは前と後ろから人が来ないか確認する。

頂上からこちらに向かって歩いてくる人がいたけど状況を理解して、方向転換してくれた。
山仲間のお気遣い、ありがとうございます。


無事、用を済ませ、何事もなかったように11時15分、万二郎岳山頂に到着。
目安所要時間としては75分で来られるところを90分かかってしまった。

ここからの景色はすごい。雄大という言葉がぴったりだ。

色づきが見られる山脈、その先に太陽光を反射している海、遠くはほんのり霧がかり、まるで絵のようだ。

家族写真を撮っている人がいたので、撮影を買って出たら、私たち家族写真も撮ってもらえた。

Win-Win、お互い素敵な思い出が残せましたね。


山頂では多くの人が食事をとっている。

「私たちもここで軽めのランチ食べようか」

「ここは混んでいるから向こうで食べる」

たぁはそう言って少し離れた場所にある人気のない場所を指差す。

混み合った場所を嫌がるたぁ。二人だけならなんともないことだけど、こう他の人がいると面倒だ。
なぜならささ家族は広大な景色を見ながら既にお菓子をつまんでいる。

「たぁが向こうで食べるって言うからそっちにいるね」

そう伝えると、ららが一緒にやってきた。

遠くの景色は見えないけど、ちょっと開けた他に誰もいない場所。たぁは切り株に座ってパンを食べ始め、それを私にも分けてくれた。

しばらくするとささ夫婦も合流した。


「いやっ」

急にららが一人暴れ出す。彼女の周りを飛ぶ蜂を避けようとしている。

「動くと危ないよ」

そう言っても、彼女は逃げようと動き回る。

「止まって」

みんなに言われて、やっとじっとした。

その後も蜂が来るたびにららだけが怯える。

「彼らのテリトリーにお邪魔しているのは私たちの方なんだから、向こうの邪魔をしちゃだめだよ」

そう諭すと、れんがいつもように同意してくれる。

「そうだ」

20代前半、ちょっぴり怖いものに怯えて“かわいい”をアピールしたいお年頃なのに、旅をしている仲間は全員40代。そのアピールを誰も受け入れてくれないことがちょっぴり可哀そうな感じもしたけど、「毎回そんな仕草を相手しているのも面倒である」が言葉にしない全員一致の意見だったりもする。



主な登場人物:
私-のん、夫-たぁ、
姉-ささ、姉の夫-れん
姪っ子-らら、甥っ子-ぼう



これまでのお話



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