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伊豆天城山でハイキング-41

地図を頼りに七福神巡りをしよう。

駅からまっすぐ上へと伸びる道を進む。思ったよりも傾斜があり太ももに負担を感じるので、周りの建物を見ながらゆっくりゆっくりリズムを崩さず進んでいく。
温泉街だけに宿やホテルが多く、表は立派に見えても裏側に回るとさびれて年季を感じるものもある。

うんっ、昔ながらの温泉街だ。


ささ家族と一緒の時は自分たちのリズムで行動するなんてことは無理で、たぁにストレスを与えてしまっていた。今は二人だけ、いつものペースで静かに話せる。平穏な雰囲気に安心したのか彼からも冗談が聞けるようになった。

ささ家族と一緒じゃないとできない旅がある。

そして

二人だからこそできる旅もある。

どっちがいいなんて比べられないけど、今はのんびりと時間が過ぎていくことが素敵だと思える。


道路脇にさらに上へと導く階段がある。幅は狭く木々が生い茂っているから、行くべきか悩むけど、地図はその道を進むように指示しているから行ってみよう。

急な階段の先にさらに急な坂が出てきたよ。

文句を思いつつ、口にしつつ、進んでいくと別荘のような立派な建物の先に地図で気になっていた「今半」というお店が見えた。

今半といえば牛肉だ。

だけど表看板には海鮮って書いてある小さなお店だから想像していたものとは異なるのだろう。

近くの広場にはグレープフルーツのような柑橘系の実をつけた木々が並ぶ広場がある。

贅沢な景色に、ホっ。

緑と青に恵まれた平穏な画が好きだ。

二人して言葉なくしばらく眺めていた。

車道に沿って下っていくと公園に(確か)福禄寿さんがおられたのでご挨拶をする。他の神様とは違い、端で存在感がちょいと薄め。そのくらいがいい。


公園を出て左へと曲がり道を下っていくと、一つの建物が目に入った。

廃れた感満載。

昔は何かを営んでいたんだろう、もしかしたら今もかもしれないな。

壁などがなくなり支柱だけになった建物を過ぎた後、立派なホテルを見つけた。だけど入り口にはチェーンがしてあり、使われている気配はない。

「こんなに立派な場所、(閉まって)もったいない」

たぁは呟いた。

コロナが原因で閉まってしまったのか、それともただの改修工事なのかわからない。とりあえず今でも十分使えそうな施設には違いない。
空っぽの駐車場には一台の軽トラが止まり、おじさんが一人何やら作業をしている。

改修工事であってほしい。

二人勝手に願うけどこの地に初めて訪れた観光客の思いなど、いらぬお世話だろう。

ただ今まで頑張ってきた宿がコロナの影響で潰れて、円安を利用して海外勢がどんどん買いまくっているという事実を思うと胸が痛い。

日本の国土を日本人のために守ってもらいたいけど、そういう法律って多分ないんだろうし、海外とズブズブの関係の政府はあえてそんな制度は作らないのかな。

悲しいなぁ。

ひゅぅぅぅ~。


海沿いは風が強い。

波返しブロックの上から海を見ると、一度はいなくなっていて釣り人が戻り、二匹の犬が浜辺を駆け回っている。波を聞きながら“生きている”を目にするのは幸せを覚える。

「海でギター弾いたら?」

宗像大島を訪れた時、宿の利用者は私たちだけだった。それをいいことに彼はベランダに腰かけてギターを弾いていた。

「ううん、いい」

「どうして?」

宿で弾くと他の利用者の迷惑になるかもしれないけど、ここなら波が音を飲み込んでくれる。

「風が吹いて寒いし、ギターは受付に預けちゃったから出してもらうのが面倒」

干支はウサギ、自分の庭ではよく跳ねるけど知らない芝生では静かな性格の彼らしい意見だ。まぁ、本人が嫌なら無理はさせずに散歩を続けよう。

道沿いには南国らしい低いヤシの木(だと思う)が植わっている。

表面に何かついている?

えぇぇぇ?

お塩だ。

強い風が波しぶきを運んできて、勝手に塩を生成しているんだ。

すごーいっ。

初めて見た。

好奇心で触って手を汚す私とは違い、たぁは見るだけで終わらせる。ちょっぴり大人だわ。


波は強くしぶきをあげながら岩にぶつかる。

「あっ、鳥だ」

「どこどこ?」

黒い岩場に黒い鳥。こういうのを見つけるのはだいたいたぁだ。

傍にもう一匹いて、二匹で動き回っている。強い風が吹いた時、二匹同時に空へと飛んで行った。



主な登場人物:
私-のん、夫-たぁ、
姉-ささ、姉の夫-れん
姪っ子-らら、甥っ子-ぼう



これまでのお話


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