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ゴールデンサークルにより広がる複業世界

ゴールデンサークル

Why > How > What の順番で考えることの大切さ。サイモン シネックさんのゴールデンサークル理論は、TEDのサイトで4,600万回以上も再生されており、リーダーシップやプロジェクト推進、プロダクトやサービスの説明など様々な場面で引用されています。

これは、自分のキャリアを考える上でも、とても有効な枠組みだと思います。

「好きなことを仕事に、というけれど、好きが見つからない」という相談を受けることが最近続きましたので、僕なりの考えをまとめてみようと思いました。先のゴールデンサークルに当てはめるなら、「好き」を「What」で探そうとすると視野が狭くなってしまうと思うのです。

ピボットの経験

僕自身の経験を少し。小学生の頃から漫画家になりたくて、中学生の頃に小学館少年サンデー編集部に持ち込みをしました。二十代前半まで真剣に目指し、小学館ビッグコミックスピリッツ編集部で担当編集者がつきました。しかし、デビューするには、構図のセンスがどうしても問題ということになりました。編集者からは、文章で書くプロットまでは面白いので、コマ割りして作画するのではなく、そのまま文章で勝負したらどうか、と言われました。小学生の頃からずっと突き進んで来た漫画家への道への挫折でもありました。

でも、まあ、それもありかと思って、文章に切り替えました。SFやファンタジーなどの空想と日常が混在する世界が好きでした。そういった世界を描ける文章の領域として、ゲーム業界がありました。当時、攻略本はまだ単純にクリアするためのノウハウをまとめたものでした。そこで、世界観を読み物として提供するスタイルを提案しました。運良く、そうした内容に賛同してくれる編集部と編集プロダクションの人と出会うことができ、ファミ通を中心に、40冊以上(累計130万部以上)を出すことができました。この頃、能楽(を普及するNPO活動)や、茶道、社交ダンス、乗馬など、長く続くエンターテインメントにも興味があり、挑戦しました。

1999年、オールアバウトというネットメディア立ち上げの話があり、ゲームに関する情報をとりまとめ書き手をたばねるプロデューサーの依頼がありました。インターネットは黎明期から遊んでいて、次のメディアとしての可能性を感じていたので、関わることにしました。その後、グルメの領域もプロデュースすることになりました。そして、2008年、iPhone発売を機にソフトバンクの子会社アプリヤのCOOとして、誰もがアプリをつくることのできるプラットフォームを構築しました。

その後、ホオバルという会社を妻とつくりました。閉塞感のない社会をつくりたいという想いから「今日できないことができる明日をつくる」ということを理念に、「誰かと手を組む(アライアンス)」「道具を活用する(テクノロジー)」「学び続ける(ラーニング)」の3つで未来を作ろうという動きを、食・健康・教育・育児などの領域の新規事業を立ち上げようとする企業などとコラボレーションしたりコンサルテーションしたりして、たくさんのサービスを生み出す動きをしました。また、カンブリアナイト というイベントも、日経BP ICTイノベーション研究所と共催で3年余り実施しています。

現在では、このホオバルを含め、名刺を7枚ほど持って活動しています。
・Holoeyes株式会社(取締役兼CSO):医療VRベンチャーの戦略構築とビジネス開発と営業
・Mistletoe(コンテクストデザイン):投資先を含めた各種事業を包含する世界観構築
・一般社団法人Explayground(カタリスト兼コンテクストデザイン):教育関連プロジェクト推進支援
・一般社団法人ライフロングウォーキング推進機構(理事):健康支援活動の世界観構築
・Empath(ファンタジスタ):音声感情解析ベンチャーの世界観構築支援
・東京学芸大こども未来研究所(フェロー):各種教育プロジェクト支援

Whyの一貫性

「漫画家」は、ゴールデンサークルで言うところの「What」にあたります。上記の様々な具体的な活動も、「What」です。

漫画家をあきらめライターとなったことは、Whatの切り替えでした。しかし、フィクションを描くということが共通していたことから、自分なりにピボットできたのだと思うのです。そして、今では、フィクションをノンフィクションにする、事業をつくるようになりました。漫画家 > ライター > 事業創出、というようにWhatは移り変わっていますが、軸として「今ないものを思い描く」ということが変わらずにあるのだと思います。今日の限界を超える明日を思い描くこと。僕にとっての「Why」が、ここにあります。漫画家になりたいと思った動機の根本と、今の活動は地続きであり、軸となる「好き」は同じなのだと思うのです。

「好きなこと」とは「Why」であって「What」ではない。
「好きが見つからない」ときには、具体的な職業や行動として「好き」を探すのではなく、自分がこの世界に存在していると感じられるのはどんな時かを探すことがよいと思うのです。ぐっとくるポイントやタイミング。「あー、この感じ好きだなー」という感覚は、どのような状態のときに得られるのか。そこに、その人なりの世界観のヒントがあるのだと思うのです。

Whatを軸に、副業するのではなく。
Whyを軸に、複業する。

たとえば、インタビューとライティングのスキル(What)を軸に、様々なクライアントから仕事を受ける。これは、副業かもしれません。しかし、中には、価値基準の違うクライアントもいるかもしれません。とはいえ、自分のスキルを軸に仕事の幅を広げるということは、そういった価値基準の多様性も受け入れていくことなのかもしれません。

僕は、「今日できないことができる明日をつくる」という価値基準(Why)を軸に、様々な仕事をしています。中には、自分のスキルでは心もとない場合もあります。しかし、自分が目指している世界をつくるために、新たなスキルを身に着けることは、大変ではあっても、ポジティブな成長感を持って楽しむことができます。これが、複業の持つメリットかもしれません。

複業貿易

僕がオススメするのは、後者の複業です。せっかくの複業です。意に沿わない仕事を、(スキルがあって)やれるからといってやらなくてよい。もっと、自分の価値観に沿った、のびのびとやれる仕事をやった方が、心の健全性が保たれると思うのです。お金にならないことでも、自分の成長につながることだってあります。それだって、複業としては素晴らしいものなのだと思います。そうした経験が、自分の価値を高め、その先により大きな対価を得る仕事に繋がっていく場合があります。

複業することの最大のメリットは、貿易ができるようになることです。ナレッジエコノミーという言葉がありますが、自ら身につけた様々な領域の様々な知識やスキルを、別の領域に輸出入することができるようになるのです。異なる世界の能力は、遠いものであるほど、大きな価値を生むことがあります。目指すべき世界観というWhyが一致していると、異なる世界のWhatが活用できる場合があります。これは、複業しなければ手に入りづらい、大きな武器なのだと思います。

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