しんかい37(山川賢一)

しんかい37(山川賢一)

最近の記事

経済学者が、コロナ感染拡大抑止をとても重視していた件

日本がコロナウイルス流行の第一波を、西浦博先生の必殺技「接触八割削減」でいったん抑えたのはご存知でしょう。この対策は感染を抑止する代わり、日本経済に大きなダメージを与えるものでもあります。そのため第一波が一時的におさまると、西浦先生は感染症対策ばかり重視して経済をぼろぼろにしてしまったと批判する、恩知らずな人々が現れました。 こういわれると、西浦先生を敬愛する人々もカチンときますよね。そこで西浦ファンは、しばしばこう反論します。「西浦先生は、感染症の専門家だろ。経済について

    • Withコロナは、なぜ不況への道なのか。

      いま日本政府が行っている、コロナとの共存を前提とした経済振興策は、かえって不況をもたらしかねません。理由を説明しましょう。 ヨーロッパの中では比較的コロナ被害が軽微だった北欧で、スウェーデンだけがけた外れの犠牲者を出してしまいました。人口当たりで、他の北欧諸国の5倍から10倍からの人が亡くなってしまったのです。スウェーデンはいわゆるロックダウンをせず、人々の自発的な感染対策(つまり、日本でも最近やたら政治家たちが唱えている、自衛!)にまかせていたからです。 Sweden'

      • 河村市長そりゃないぜ―愛知の新型コロナ対策と、大村知事リコール騒動①

        愛知在住の著名な外科医、高須克弥氏が、あいちトリエンナーレ絡みの件で大村愛知県知事をリコールする運動をはじめたそうです。 高須院長 大村愛知県知事のリコール目指す会設立「県民として支持できない」 これに、以前から高須氏とは仲が良く、大村知事とは犬猿の仲だった、河村名古屋市長も賛同の意を表明しました。 私は、心底がっかりしました。 河村市長はこれまで、コロナウイルスの対策に積極的にとりくんできました。3月に名古屋を襲った二つの巨大クラスター感染をようやく制圧したころ、市

        • 河村市長そりゃないぜ―愛知・名古屋の新型コロナ対策と、大村知事リコール騒動②

          大村知事のコロナ対策大村愛知県知事は、この状況を打破するため、検査能力の拡充と病床・療養施設の確保、検査技師や医療従事者の増員に動きました。3月11日には、検査増強の方針を公表しています。 新型コロナ「検査態勢を強化」愛知の感染者99人で大村知事 ところが、当時国内では、検査を増やすとかえってよくない、という議論がひろまっていました。そのため、検査増強を発表した大村知事も、インターネットでバッシングを受けてしまったのです。 大村知事を批判した人々は、おもに病床不足を避け

        経済学者が、コロナ感染拡大抑止をとても重視していた件

          柄谷行人がおかしくなったのは最近のことなのか――ポストモダンと代替医療

           近代医学を「プロパガンダ」扱い 批評家の柄谷行人が毎日新聞のインタビューで行った発言に、ウェブ上で批判が殺到している。 憲法9条の存在意義 ルーツは「徳川の平和」 思想家・柄谷行人  発言内容は、@C4Dbeginnerさんのツイートによくまとめられているので、紹介させていただく。  ようはむちゃくちゃな内容だ。精神分析的主張といい歴史的認識といい、どこから突っ込んでいいかわからない。さすがに擁護する人も少ないようだ。  しかしこの件について、柄谷も老いておかしくな

          柄谷行人がおかしくなったのは最近のことなのか――ポストモダンと代替医療

          棄権してほしいのは“今回の”選挙だけ?――東浩紀の反選挙思想

          10年前にも「選挙はお祭り」 批評家の東浩紀が、「積極的棄権の声を集める」という署名活動をはじめた。「人々に棄権を薦めるような言動をするなんて、とんでもない!」と批判の声があがるいっぽう、現時点で東のもとには5000人の署名が集まってもいる。 2017年秋の総選挙は民主主義を破壊している。「積極的棄権」の声を集め、民主主義を問い直したい。  東は、自分の意図をこう説明している。今回の選挙は実施するに値しない。そう考えているのは自分だけではないはずだ。よって「積極的棄権」の

          棄権してほしいのは“今回の”選挙だけ?――東浩紀の反選挙思想

          仲正昌樹教授は、連載ブログでなにを語っているのか――番外:ジャック・デリダ『哲学の余白』 をめぐる捏造

          そのⅠ そのⅡ  今回はポストモダンを論じている論者ではなく、ポストモダニストの代表格であるジャック・デリダその人を扱います。「仲正昌樹教授は、連載ブログでなにを語っているのか そのⅠ」の続編にあたる内容なので、未読の方はまずそちらをお読みください。 今回取り上げる仲正先生の記事は「日本的な反ポモ集団は、読解力の低さによって“結束”しているのか?―山川ブラザーズの甘えの構造」です。 http://meigetu.net/?p=5996 魚拓はこちら http://arch

          仲正昌樹教授は、連載ブログでなにを語っているのか――番外:ジャック・デリダ『哲学の余白』 をめぐる捏造

          仲正昌樹教授は、連載ブログでなにを語っているのか――五分でわかるまとめ・そのⅡ

          そのⅠはこちら パターン②の例アラン・ソーカル、ジャン・ブリクモン著『知の欺瞞』ジェームズ・ロバート・ブラウン著『なぜ科学を語ってすれ違うのか』をめぐる捏造 パターン②の捏造とは、以下のようなものです。 山川「Bという本はとても参考になったよ!」 仲正先生「Bという本には△△という欠陥がある。そんなこともわからずにBをありがたがる山川には、なにもわかっていない」 この△△が捏造、というパターン。  ぼくはツイッターで、なんどかアラン・ソーカルとジャン・ブリクモンの『知の

          仲正昌樹教授は、連載ブログでなにを語っているのか――五分でわかるまとめ・そのⅡ

          仲正昌樹教授は、連載ブログでなにを語っているのか――五分でわかるまとめ・そのⅠ

           哲学研究者として著名な仲正昌樹先生が、「月刊極北」のウェブ連載でぼく(山川賢一)を批判しつづけています。 自分の脳内陣取りゲームを現実と思い込み、「お前は追いつめられている! 俺がそう思うんだから間違いない!」、と絶叫するソーカル病患者たちの末期症状 http://meigetu.net/?p=5361 ポストモダンをめぐる大陰謀論 http://meigetu.net/?p=5417 偏狭な「敵/味方」思考で退化が進み、棲息域が狭まる反ポモ人たち http://me

          仲正昌樹教授は、連載ブログでなにを語っているのか――五分でわかるまとめ・そのⅠ

          仲正昌樹のソーカル事件をめぐる記事について

           仲正昌樹さんが「月刊極北」の連載で、ソーカル事件にたいして意味はないという話を以前からしている。 訳が分かっていないのに、「ポモはダメ!」と言いたがる残念な人達 http://meigetu.net/?p=2781 ソーカル教にすがりついてしまう廃人たち http://meigetu.net/?p=3065 哲学や文学研究はカンタンだと思っている連中の大言壮語 http://meigetu.net/?p=3142 ○×脳の恐怖 http://meigetu.

          仲正昌樹のソーカル事件をめぐる記事について

          けものフレンズ8話で、なぜかばんちゃんは活躍しないのか

           けもフレ8話「ぺぱぷらいぶ」、ぼくは初見のとき「今回はいまいちだな……」と感じた。ペパプのペンギンたちはあまりに人間的すぎるようにみえるし、かばんもたいして活躍しない。けものフレンズ本来の面白さをみうしなってるんじゃないの?なんて考えていたのだ。ところが見直しているうちに完全に感想が変わった。この回はすごい。どうすごいかを説明しよう。  8話の最重要ポイントは、「プリンセスはなぜ、自分が先代・先々代のペンギンアイドルにはいなかったロイヤルペンギンであることを気にかけている

          けものフレンズ8話で、なぜかばんちゃんは活躍しないのか

          シン・ゴジラ解読――「この国」日本と「かの国」アメリカ

          はじめに  この文章は、シン・ゴジラとはどのような物語だったのか、をテーマとしたものです。ネタバレ全開なので注意してください。  執筆のためイムログさん(ツイッターアカウント:@Imrogfada)と長時間にわたるディスカッションを行い、多大なヒントをいただいた結果、実質的には二人の合作というべき内容になっています。そのほか、ツイッター上で多くの方々からいただいた助言も参考になりました。記憶に頼って書いているのでセリフまちがいなどはあるでしょうが、大筋はこれで正しいはずで

          シン・ゴジラ解読――「この国」日本と「かの国」アメリカ

          知の欺瞞への反論によくある論法について

           そもそも知の欺瞞のポモ批判は合わせ技なんだよね。ポモは「A文章が極端に難しい」「B書いてあることにまちがいが多い」。AとBの二つが合わさって最強の威力を発揮する。  まずはAについて。ある本が難しい文章で書かれている理由としては、次のようなものが考えられる。 ①そのようにしかかけない、そもそも難しいことを書いている ②書き方が下手 ③読者を煙に巻いている  で、知の欺瞞以前はポモについて、擁護派は①、批判派は③だと思っていることが多かったわけ。  ソーカルらがや

          知の欺瞞への反論によくある論法について

          雑記:ライアン「監視社会」についての思いつき

           ヒース『ルールに従う』をちょっとながめていた。難解で知られる本だし、なんとなくわかるところを読んでいただけだけれど。動物の利他行動と人間社会の関係がどう論じられてきたかを整理した第6章が面白い。  これを読んでいてふと、デヴィッドライアンの『監視社会』は、進化論やゲーム理論の観点を意識して書いたほうが明晰になったのでは、と思った。あの本はソーカル事件の少しあとに出ているので、ライアンはポストモダンと自分の議論はちがうと主張しているけれど、なんだかんだいってもポストモダンの

          雑記:ライアン「監視社会」についての思いつき

          雑記:フィクションと願望充足

           ハッピーエンドの物語は、現実の欲求不満を埋め合わせるためにある、と考えているらしい人をしばしばみかける。主人公がさいごヒロインと結ばれて幸せになる話を、「主人公と自己を同一視して、恋人がほしいという願望を充足しているんだろう」と評するような人だ。  この意見が100パーセント間違っているとは思わない。ボヴァリー夫人の例もあるし。でも、登場人物を自己と同一視することから得られる喜びは、フィクションが与えてくれるもののひとつにすぎない。主人公の恋愛が成就する話でいえば、主人公

          雑記:フィクションと願望充足

          雑記 10月3日~

          10月3日  ずっとずっと、ずーっと苦労してきた、RFIDに触れたくだりをようやく書き終わる。誰も書いていないようだし、ちょっと掘り下げてみようと思ったことからこんな地獄が始まるとは夢にも思わなかった。  長い文章を書くのに苦労する理由が突然わかった。わかりやすく書くには、各段落は結論がさき、続く文はそれの補足、という形にすべきだが、文章全体は、前提・問題提起から結論に向かう。つまり、真逆の二つの方向に思考を働かさなければならないのだ。  ちまちました分析とか読解とかを

          雑記 10月3日~