親が詐欺未遂に遭った話
はぁ。
まさか自分の親が詐欺に遭いかけるなんて....
「え、それって完全にこの手口の詐欺じゃない?」
と、詐欺の事例が載った注意喚起のページを開いたスマートフォンを見せると、「んー、そうかぁ....詐欺なのかなあ?」と、少し落ち込んでいた。
自分が詐欺に遭い現金を振り込みかけたことがショックだったのだと思う。
だから、「金銭の要求は如何なる場合でもまず疑わなきゃだめでしょ!!!」と、詐欺に遭いかけたことを責める言葉は言えなかった。
そのショックを心に刻み、今後は怪しい金銭の要求に応じないでいてくれればよい。
まあ一度騙された人はまた騙されるって詐欺師が言ってたけど。
その日は父親と夕飯を外に食べに行く予定だった。
なるべく早く出てすぐ帰って来たいと提案するも、荷物が16時以降に届くらしいから、それが届いたら行こうと言われた。
しかし一向に荷物は来ず、「どこの配送業者?」と聞くと、「ZIKとかいう海外の配送業者。追跡はできなくて、送り主側は追跡できるらしいんだけど」と。
日本の配送の場合、私の知っている限り、一部の郵便を除く荷物は追跡番号があり、商品出荷時に受け取り側に知らされる。
そもそも受け取り側が荷物の所在を確認し、再配達をなるべく減らせるようにという意図もあるシステムなのだから、受け取り側が番号を知らないというのはおかしい。
また、「ZIK」という聞いたこともない配送業者を調べると、一応、ZIK global company という会社は出てきた。
「海外の配送業者ということは海外から荷物が届くということ?」と聞くと、そうだと言われた。
おかしい。
国際宅配便を手掛ける会社は国内外にいくつもあるだろが、海外からの荷物が日本に着いてからは、日本の輸送運送宅配会社がそれを受け取り各場所に配達するシステムだったはず。
だから海外の業者がそのまま直接日本の家まで運送してくることはない。
このZIKという会社は、HPはしっかり作られているし、イギリスの会社っぽいのだけど、国際宅配便のサービスを日本で展開はしていないっぽい。
もしかしたら、詐欺犯が適当にこの業者だよと送っただけなのかもしれないし、本当は見せかけの会社という可能性も。
結局19時まで待っても荷物は来ず、とりあえず夕飯に出かけ、食事の席でご飯が運ばれるのを待つ間詳しく話を聞いてみることに。
「届くものは食品?」
「いや、現金。」
「現金?」
「うん。米軍からイエメンに派遣された軍医さんで、先月任務を終えてイエメンから多額の報酬を貰ったから、盗まれないよう預かっててくれないかということになった。」
「(多額の報酬...(?)そんな大金が航空輸送できるのか?隠してできたとして税関で開けられるしその密輸を手伝ったとしたらこちら側も罪に問われるのでは?)
んー、そのイエメンの人とは知り合いなの?」
「知り合い。」
「昔からの知人?」
「いや、最近Facebookで出会った。これからアメリカに戻って、娘さんを連れて日本に来るらしい。仲間も亡くなった方が多く、自分も足を打たれて、荷物を運べる状況じゃないらしい。日本に来たらこのお金で病院を開くそう。
大金は赤十字経由で送ったと言っていた。
配送料だけは一旦こっちで払わないといけないらしく、今日振込に行ったんだけど、この口座には振り込めませんって言われてできなかったんだよね。」
「(???あー、詐欺っぽいなー。)
配送料だけ振込?どこの口座?」
振込先には
個人名が書かれたソニー銀行の口座番号が書かれていた。
「配送料の振込み先が個人名なことある?」
「んー。変ではあるよね。」
「配送料いくらなの?」
「80万」
「高くない?いくら国際宅配でもそんなにするはずないと思う。」
「んー、桁が一つ違うかなとは思ったんだけど。」
配送業者の件や振込金額とその口座名、Facebookで知り合ったという情報から、とりあえず口座名の人物で検索したが検索結果はなし。そして「イエメン 詐欺」で検索すると、イエメンの日本大使館のサイトに、全く同じ手口の詐欺事例が載っていた。
https://www.ye.emb-japan.go.jp/itprtop_ja/index.html
口座に振り込めなかったのはどこかから摘発されたのか不正がバレたのか、何らかの原因で口座が凍結などしていたからなのだと思う。
父は最近中東情勢のニュースをよく観ていたので、軍医と名乗る得体の知れない人物の情報を鵜呑みにしてしまったのだと思う。
自分も被害に遭ってるだの、仲間もやられてるだの、幼き娘を連れて逃げるだの、日本で病院を建てるだの、感情を揺さぶり、「助けなければ」と思わせるんだろうな。
顔も見知った昔からの知人がそういうのならば耳を傾けてしまいそうだが、Facebookでたまたま出会った人間に、ネット上だけのやり取りで金銭を要求されたらさすがに怪しいと気づかないものなのだろうか。
父には結構頻繁に怪しいリンク付きのメールが来ていて(色んなところに色んな登録でもしてるんだろうな)、よく「これは怪しいよね?」と聞いてくるのだが、なぜ今回はここまで信じてしまったのか。
ある程度メッセージを重ね実在を錯覚したことが原因か、それとも80万を小遣い感覚でポンっと出せてしまうくらいお金に余裕があるのか、そもそも歳で注意力が落ちたのか。
私がしっかりしなきゃとは思うも、私だって完璧じゃないのだからと思う。
こういう時に周りに誰かがいる方がいいなとも思う、それもできれば3、4人。
そしてそれが適度にコミュニケーションを取り合える距離であればいい。
一人は怖い。
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