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BOOKS─書籍紹介

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建築・都市・まちづくりにまつわる書籍の新刊・近刊を紹介していきます(本記事は雑誌連載コーナー「BOOKS」の転載記事となります).週2回更新予定.また,本アカウント以外の紹介記事… もっと読む
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#新建築社

歴史の建設 アメリカ近代建築論壇とラスキン受容【東京大学出版会】

江本弘 著 A5判/400頁/6,000円+税 19世紀から20世紀前半のアメリカ建築界がみせた「ジョン・ラスキン」という問題への異常な執着とは何か.アメリカ建築の出自と伝統を問う熾烈な派闘争のなか,ラスキンの思想がどのように参照され,批判され,忘却され,評価されたのかを綿密に追跡することを通して,近代建築史成立の根幹を描き出した画期的論考. 『建築の七燈』や『ヴェネツィアの石』などを著した建築理論家ジョン・ラスキン.本書はラスキン自体ではなく,19世紀から20世紀前

非統一的な個人主義が生み出した都市─日本の醜さについて 都市とエゴイズム【幻冬舎】

井上章一 著 新書判/235頁/800円+税 個人主義で自己主張の強い欧米人とくらべ、日本人は集団主義的で協調性があり、「和をもって貴し」とする民族だと言われてきた。しかし、ひとたび街に目をむければ、それはまちがいだと気づく。 利権まみれで雑多な東京。くいだおれ太郎やかに道楽など人形だらけで幼稚な大阪。“千年の都”と称されながらスクラップ・アンド・ビルドをくりかえす京都。 ローマと東京、ヴェネツィアと大阪、フィレンツェと京都――街並をくらべるかぎり、近代化に成功し、本

理論と現実,建築と都市─プロジェクト・アウトノミア 戦後期イタリアに交錯した政治性と建築【鹿島出版会】

ピエール・ヴィットーリオ・アウレーリ 著 北川佳子 訳 四六判/220頁/3,200円+税 アウトノミアとは戦後期イタリアで興った自律運動である。そこに身を投じたミリタント(闘士)たちは政治的な考え方によるイタリア建築理論を繰り広げた。そしてA.ロッシ、アルキズームを建築史の中に位置付ける。 アウトノミアは,1970年代のイタリアで労働者運動の後に訪れた知識人階級の政治運動.戦後資本社会に立脚し,権力からの自律を求めた態度は建築思潮にも影響を与えた. 著者は,当時の

地形から見る団地─団地図解 地形・造成・ランドスケープ・住棟・間取りから読み解く設計思考【学芸出版社】

篠沢健太 吉永健一 著 B5変型判/140頁/3,600円+税 団地はどれも同じ…だなんて大間違い。地形を生かしたランドスケープ、コミュニティに配慮しつつ変化に富む住棟配置、快適さを求め考案された間取りの数々。目を凝らせば、造成から植木一本まで連続した設計思考が行き届き、長い年月をかけ育まれた豊かな住空間に気づくはず。あなたも知らない団地の読み解き方、教えます。 建築やランドスケープの設計者である筆者が地形に着目して団地を解説した本書. 多くの団地が建設された高度

アイリーン・グレイ 建築家・デザイナー【みすず書房】

ピーター・アダム 著/小池一子 訳 A5判/320頁/5,400円+税 「家は住むための機械ではない。人間にとっての殻であり、延長であり、解放であり、精神的な発散である。外見上調和がとれているというだけではなく、全体としての構成、個々の作業がひとつにあわさって、もっとも深い意味でその建物を人間的にするのである」(アイリーン・グレイ) 「あなたの家で過ごした二日の間に、その家の内外のすべての構造に指令を出している、類い稀な魂を称賛する機会をもつことができてとてもしあわせで

中山英之 1/1000000000【LIXIL出版】

中山英之 著 A5判/ 160頁/1,800円+税 中山英之は2006年のデビューから現在まで、「世界」とは何かを問うてきました。彼は作品を通して建物の建つ「土地」やあたりまえの「生活」に対する人々の認識を超えて、これまでの世界をつくりかえる新たな空間を提示しています。 本書では、図面上にあらゆる世界を描くことができる「スケール(縮尺)」の考え方を軸に、小さな石から住宅、都市、地球とさまざまな大きさを行き来し、建築が世界を変えうる可能性について説いています。 《円と弧

T_ADS TEXTS 02 もがく建築家,理論を考える【東京大学出版会】

東京大学建築学専攻 Advanced Design Studies 編 新書判/304頁/1,500円+税 ふたつの東京オリンピックのはざまで,時代の大きなうねりのなか形作られた現代日本建築の多様性を「理論」「技術」「都市」「人間」という四相から見直すシリーズの第1弾,「理論編」.日本を代表する建築家自身による作品解説とインタビューによる現代日本建築入門. 本書では6名の建築家(磯崎新,香山壽夫,藤森照信,大野秀敏,妹島和世,隈研吾)の代表作に訪れて行なわれたインタビ

モクチンメソッド 都市を変える木賃アパート改修戦略【学芸出版社】

モクチン企画/連勇太朗・川瀨英嗣 著 A5判/ 192頁/2,200円+税 木造賃貸アパート(モクチン)は戦後大量に建てられたが、今老朽化と空き家化が著しい。建築系スタートアップ・モクチン企画はその再生をミッションに、シンプルな改修アイデア・モクチンレシピを家主や不動産業者に提供する。街から孤立した無数のモクチンを変えることで豊かな生活環境、都市と人のつながりをとり戻す試み。 都内を拠点に木造賃貸アパート(モクチン)の改修・再生を行うNPO法人モクチン企画による本書.

建築の条件 「建築」なきあとの建築【LIXIL出版 】

坂牛卓 著 A5判/288頁/2,300円+税 建築はいつの時代も「建築家」と「クライアント」と「社会」の関係のうえに成り立ちますが、21世紀の建築は特に「社会」の比重が大きいと言われます。建築は社会がつくる。 建築は、応答せざるをえない他者からの直接的な要求だけではなく、間接的あるいは無意識的なレベルの条件に規定されていると坂牛は考え、現在に至る歴史を、 人間に内在する問題系──「男女性」「視覚性」「主体性」「倫理性」──と、 人間に外在する問題系──「消費性」「階

未来を拓くキャンパスのデザイン【彰国社】

日建設計/岩﨑克也 編著 B5判/152頁/3,000円+税 キャンパスの最新動向を分析し、キャンパスデザインを企画提案する、 大学施設担当者・建築設計者・関連メーカーの相互横断的な勉強会の成果をまとめた1冊。 これからの大学におけるキャンパスデザインのポイントを「地域に開く」「能動的な学修環境」「産学地連携」の3つに絞って考察している。 国内外のキャンパス事例を時間軸から読み取り,最新動向を分析することで,これからの大学に求められる学習環境,大学の枠組みを超えたオー

生命の讃歌 建築家 梵寿綱+羽深隆雄【美術出版社】

梵寿綱 羽深隆雄 著 A4変型判/260頁/5,800円+税 早稲田大学そばにある奇怪な建物「和世陀」を1983年に設計した建築家・梵寿綱(ぼん・じゅこう)と、旅館「仙寿庵」、鮨屋「銀座久兵衛・別館」などを手がけた建築家・羽深隆雄の2名を紹介する異色の建築作品集。 「和世陀」(『住宅特集』1987年6月号掲載)などの作品で知られ,経済性に支配されない表現的な建築を模索する梵寿綱と,「仙寿庵」(『新建築』1997年8月号掲載)など,多くの和モダン建築を手がける羽深隆雄の

ウォークス 歩くことの精神史【左右社】

レベッカ・ソルニット 著 東辻賢治郎 訳 四六判/520頁/4,500円+税 歴史上の出来事に、科学や文学などの文化に、なによりもわたしたち自身の自己認識に、歩くことがどのように影を落しているのか、自在な語り口でソルニットは語る。人類学、宗教、哲学、文学、芸術、政治、社会、レジャー、エコロジー、フェミニズム、アメリカ、都市へ。歩くことがもたらしたものを語った歴史的傑作。 歩くこと,それは呼吸をすることと同じくらい人間にとって当たり前のこと. だからこそ,歩くことは人間

ユートピア都市の書法 クロード=ニコラ・ルドゥの建築思想【法政大学出版局】

小澤京子 著 A5判/286頁/4,000円+税 ルドゥの建築と都市をめぐる構想は、「文字」と「言語」、「語り」についての方法論の模索でもあった。 幻視的や奇矯といった形容とともに《呪われた建築家》とされてきた従来の像を刷新し、その特異性の本質を明らかにする。建築の起源としての幾何学性志向、都市構想と性愛、性的建築と身体管理、書物の構造が出来させる仮構的な都市空間──。 新たな言語創造者による「都市の書法」の追究とともに、時代の認識と欲望のあり方を炙り出す。 フランス

近代造園史【建築資料研究社】

粟野隆 著 B5判/120頁/2,300円+税 あらゆるものは、「歴史化」することを宿命とする。過去を蓄積することで、現在、そして未来へとつながっていくからである。それは「造園」においても同様であり、過去の造園を学ぶことで、未来の造園を開拓することこそ、「歴史方法論」としての造園史学の存在意義である。 本書は、明治維新後の文明開化により西欧の造園思潮を受容し、公園というあらたな造園空間を生み出し、また職能としての造園家、学問としての造園学が成立した「近代」に絞り、重要な