「集まって住む」とは何か─『新建築』2018年2月号月評

「月評」は『新建築』の掲載プロジェクト・論文(時には編集のあり方)をさまざまな評者がさまざまな視点から批評する名物企画です.「月評出張版」では,本誌記事をnoteをご覧の皆様にお届けします!(本記事の写真は特記なき場合は「新建築社写真部」によるものです)


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評者:連勇太朗×Eureka(稲垣淳哉,佐野哲史,永井拓生)
目次
●「集まって住む」とは何か─「HYPERMIX 超混在都市単位」から
●自然環境要素を享受するシェア
●木造,集団的な創作と「からまりしろ」の相性
●資源を共有する際の根拠を何に置くか
●次の「集まる」ためのキーワード


「集まって住む」とは何か─「HYPERMIX 超混在都市単位」から

  2月号は,図面や写真だけでなく,プロジェクトの置かれている社会背景や関係する制度まで読み取らないと,本質が掴めないプロジェクトばかりでした.「集合住宅」特集ですが,いわゆるビルディングタイプとしての集合住宅ではなく,もっと根本的な水準で「集まって住む」ことの意味を考えさせられる内容でした.

私たちは地球にある有限の資源を他者と共有しながら生きているわけですが,どのように集まって住むかという問いは,そうした資源の共有のあり方と密接に関係するわけです.光や風などの自然環境をはじめ,空間や知識などの資源をどのように他者と共有するのか,住まいの形式そのものから捉え直す思考や作品が,改めて求められているのだと思います.
今回は,そういった多角的な視点を取り入れたく,集団設計に取り組むEurekaのみなさんに対談をお願いしました.

さて,北山さんの論考は市場原理が取りこぼしてきた共有の場や仕組みを,建築や都市に取り戻していくことがテーマになっています.超混在都市単位は,論考で「表現は重要としていないので写真に撮ってもパッとしない当たり前の建物」と言及されていて,汎用性への指向に対するラディカルな立場に興奮しました.

HYPERMIX 超混在都市単位|北山恒+工藤徹 / architecture WORKSHOP

稲垣  「TOKYO METABOLIZING」(本誌1010)でも提案されたように,ヴォイドの新陳代謝を繰り返し,フィジカルなものが残りづらかった東京の都市において,それを超えて今,何を建築するのか.
その時に土木インフラのような基盤,受け皿としての建築に辿り着かれたことに説得力を感じます.周囲にバルコニーを回し長期的なメンテナンスを容易するなど,都市居住インフラを目指す姿勢が貫かれていますね.

連  オフィスと住戸が見たこともない接し方をしていて(60〜61頁),興味深く拝読しました.
プログラムをミックスさせることによって,建物そのものの都市性の獲得しようという挑戦ですが,あの洗練された空間を,住人やテナントの方がコモンズとしてどのように使いこなすことができるのか,興味があります.

稲垣  ここで住民は,ルームの戸を開けると,フルハイトのガラス窓に囲まれたオフィス風景に直面します.
ベタに考えると,パジャマ姿で身繕いせずシェアキッチンに向かうことを試されているかのようで超現実主義にも感じます.一方で,バス待合いの軒下空間や敷地内通路の屋台空間など,小さなふるまいを迎えるローカルな空間も共存されているので,それがこれからどのように作用するのかが重要なのでしょう.

佐野  北山さんは,何十年という長期的なスパンを射程にされて,そのスパンにおいて,資本主義における交換価値ではなく,使用価値としての建築をどのようにつくるのかという話を展開されています.
ポスト資本主義社会における,人が使うための建築,使われることで持続的に醸成される価値を生み出す建築,そして都市を目指されていると思いました.


自然環境要素を享受するシェア

五本木の集合住宅|仲俊治・宇野悠里/仲建築設計スタジオ

  北山さんが論じている建築類型という観点から考えると,五本木の集合住宅はもはや住宅とは呼べない新しいタイポロジーを発明しているように思いました.仕事場や住居のあり方そのものを,暮らしという側面から再構築しているかのようです.

稲垣  スタジオアクセスの図式を,住宅とスタジオなどのさまざまな境界のデザインによって和らげ,住みこなしの手がかりを物理的に実現していると思いました.
集まって共有する対象が,食堂付きアパート(本誌1408)の立体路地のような分かりやすい空間ではなく,エコロジカルな循環にある.

これをEurekaのメンバーである堀英祐(環境計画)が興味深いと言っています.雨をわざわざ折れ屋根によって分解し,それを個々に受けて植栽に与え,自然環境要素を享受するシェアが起きています.「シェア」は,集団でひとつのモノや場所を共有するイメージをまず想像させがちですが,環境的アプローチは細分化による共有を,軽々と実現してしまいます.

  集まって住む時に何を共有資源とするかという点で,エコロジカルな視点が導入されていることが新鮮でした.
それに加えてもうひとつ驚いたのは,オーナー住居において家族の成員の数だけ個室が,最小の単位として計画されているということです.
一見,民家や町家のようでありながら,個室が単位として組み込まれていることで,それらとはまったく異なる集合形式を獲得しています.
その点で,まさしく現代的な住まいでもあるわけです.

佐野  72〜73頁の写真が印象的ですよね.個室群住居と仕事場が掛け合わされることで,住宅らしさが漂白されているように感じます.それは,核家族などのいわゆる近代家族によらない住まい方を想像させます.
ここで働く人たちが,構成員として住んでも成立しそうなところが面白いですね.


木造,集団的な創作と「からまりしろ」の相性

新建築社 北大路ハウス|京都大学平田晃久研究室+平田晃久建築設計事務所

  他にも,集合のあり方としては,新建築社 北大路ハウスを興味深く思いました.公共的なスペースと個室が,木造の冗長性によってズルズルと一体化した空間になっています.平田さんが展開してきた「からまりしろ」は木造や集団的な創作と相性がいいというのはひとつの発見でした.

永井  凹凸のある皮膜で空間を大きく仕切ってその内外を移動する,という感じは平田さんが担当されていたゲントのコンペ案に通じるものを感じました.
もともとの2階はほとんど吹き抜けになっているので,耐震的には外周を補強すれば十分なのでしょう.


資源を共有する際の根拠を何に置くか

シェアプレイス調布多摩川+グローバルハウス調布
|企画・統括設計 リビタ+tono 
設計 南條設計室

  左近山みんなのにわシェアプレイス調布多摩川+グローバルハウス調布は,資源の共有という意味ではいわゆる「コモンスペース」を扱っているプロジェクトです.

前者はアクティビティを誘発するサインや素材,団地と街を繋げる地面の微妙な寸法の操作が,住民自身の自発性や熱気と合わさり,効果的に作用しているように見えます.一方で後者は,ウッドデッキやビッグテーブルのような設えは,いかにも「共有スペース」らしい設えをしており,場や空間を共有することの根拠が誌面からは見えてきません.

佐野  屋外のファニチャーと室内を繋ぐ半屋外空間のようなものが,もう少しあるとよいのかもしれません.

稲垣  団地は歩車分離など安全性を優先して境界がはっきり決められてきたと思いますが,それを解きほぐしていく方法としてランドスケープが重要なのだと思いました.

連  このふたつのプロジェクトの違いを考えた時,資源を共有する際の根拠を何に置くかということを計画者側が的確に捉えないと,共有することそのものに「切実さ」がなくなってしまうのだと思います.


次の「集まる」ためのキーワード

パッシブタウン第3期街区|キーアーキテクツ

佐野  シェアという言葉は近年言われ続けていていますが,それをリテラルに変換しようとするとどうしても難しい.その変換には限界も見えてきている現在において,次の集まるためのキーワードが必要なのかもしれません.
たとえばパッシブタウン第3期街区の環境性能を上げると同時にそれが多様な場所をつくり出すことや,TIMBERED TERRACEのCLTを軸組と併用することで木質空間を提供することなど,建築がものを通して提案できることがまだまだあるように思います.

  他にもたくさん触れたかったのですが,残念ながら誌面が尽きてしまいました.
エネルギーの問題を扱ったプロジェクトがいくつかありましたが,「集まって住む」ことを「何を資源として共有するか」という問いに変換した時,空間,素材,構造,エネルギーなど当たり前だった事象がまったく違ったかたちでみえてきます.そうした資源の共有において建築が果たすことのできる役割は非常に大きいと思います.
(2018年2月19日,青山ハウスにて 文責:本誌編集部)



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