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【祝紅白出場!】欅坂46/櫻坂46のマーケティングがマジですごい件

こんにちは!私は普段大手Webサービス会社の新規事業の責任者をしています。

仕事の合間に櫻坂46の動画を見るのがちょっとした楽しみなライトなファンなのですが、知れば知るほど欅坂46/櫻坂46のマーケティング/事業としての仕組みが半端なく凄いと感じるので、仕事の合間に記事を書いてみました。

ちなみに、私は新センターの森田ひかるさんを推しています。

紅白の件もサービス設計の面から分析してみました。
よかったらご覧ください。

端的に、欅坂46/櫻坂46の何がすごいか?⇒Webマーケをアイドルに転用した

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「Webマーケを転用して再現性が極めて高い成功をしている(した)」がその凄さと思います。

そのクールな曲調から「アイドルの常識を打ち破った」と言われることが多いグループですが、実はマーケティングや事業の組み立て方も常識を打ち破っています

如何に多くの人から支持されるか?が大事なアイドル業ではTVへの露出や広告宣伝の巧みさなどマスマーケティングが長らく主流でしたが、欅坂46のマーケティング戦略はABテストによるターゲット選定&LTV(ライフタイムバリュー)の最大化を主眼に置いているように見えます。

凄さを分解すると、

・視聴者がどんな楽曲を求めているかテストをしながら修正していった

・欅坂46を認知した人がファンになって収益につながるまでの仕組みを丁寧に作り上げた

・ファンへの価値提供を単品売り切りからサブスクリプションに変化させることで、一度捕まえたファンが簡単に離れない構造を作った

・結果、極めて再現性の高い形でアイドルグループを作ることができた

の4点になります。以下で、それぞれ説明していきますね。

凄さ①:ABテストでグループのコンセプトを決める

欅坂48は2015年8月に結成し、2016年4月にファーストアルバム「サイレントマジョリティー」を発表しました。その後、「世界には愛しかない」「二人セゾン」を発表した後、2017年4月にグループの代表曲となる「不協和音」のリリースへと続きます。

この間、楽曲を披露しては修正し、また楽曲を披露して反応を見るという、明らかなテストを繰り返しているんです。

・ファーストシングルの前に8か月ものテスト期間を設けた
・最初の3シングルでエンゲージメント指標を検証した

この2点が、まさにWebマーケです。
Web界隈では、コンテンツを出し別けて反応を見て修正し、より精度を高めていくABテストという手法があるのですが、まさにそれです。
作り込んだものを一か八か世に出すのでなく、小出しにテストを繰り返して正解に近づけていくスタイルがイノベーションと感じました。

まず、ファーストシングルの前に4つの大舞台と冠番組を経験しています。
その中で、先輩のAKB48グループや乃木坂46の毛色の異なる楽曲を用いて
・今のメンバーにフィットする楽曲のイメージ
・パフォーマンス時のファンの反応
・コンテンツごとの視聴率の反応
のデータをとり、ファーストシングルに最適な領域を選定していきます。

その結果、
・いわゆるアイドルオタクではなく、女子中高生をターゲットに
・ホワイトスペースだった「カッコいいアイドル」にフォーカス
という正解を発見したのだと推察されます。

検証の結果辿り着いたのが、ファーストシングル「サイレントマジョリティー」でした。

しかし、ここでテストは終わりません。

「サイレントマジョリティー」の成功を横目に、ターゲットはずらさずに
・アイドル色の強い「世界には愛しかない」
・少し乃木坂46に寄せた「二人セゾン」
の2シングルで何が正解か?を徹底的に検証していきます。

しかも、この検証の仕方がWebマーケです。
売上では判断しません。

当時、中高生へのスマホ普及が急速に進み「売上」まではいかない楽曲への熱量が計測できるようになりました。それが、YoutubeやWebメディアへのエンゲージメント(再生数・再生時間・視聴時間)です。

ここで「売上」でコンセプトを判断していたら、欅坂46のヒットは無かったでしょう。
売上げは
「サイレントマジョリティー」(約37万7000枚)
「世界には愛しかない」(約39万3000枚)
「二人セゾン」(約46万8000枚)
という結果でしたが、
一例としてYoutube再生数はどうだったかと言えば
「サイレントマジョリティー」(1億5,000万回)
「世界には愛しかない」(3,200万回)
「二人セゾン」(6,000万回)
と全く違う結果となっています。

サイレントマジョリティーへの圧倒的なエンゲージメントを確認できことで、「不協和音」に代表される欅坂46が完成されたと言えます。

つまり、欅坂46のヒットは徹底的なテストとWeb計測による賜物と言えます。

凄さ②:ライトファン収益化の凄い仕組み

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認知やファン数が拡大しただけでは、アイドル「業」としては成功とは言えませんよね。欅坂46は、獲得した認知やライトなファンを、しっかりと収益につなげていく仕組みも極めて優れています。そして何より、Web的な発想です。

まずは何といっても、思い切ってターゲットを絞っていることです。

これは、欅坂46/櫻坂46の楽曲を聞いていただければわかると思います。
いわゆるアイドルオタクが大好きになるような曲では無く、あまり陽の当たらない生活を送っている中高生にフォーカスしています。

ターゲットを絞ることで、楽曲本数勝負にならず、1曲1曲のクオリティを高めて、ターゲットに本当に刺さる作品を作りあげることができています。
かつ、マス向けのバラエティへの露出ではなく、中高生が読む雑誌やメディアでの露出で効果的にターゲットをキャッチすることができました。

そして、キャッチした後のファン化はYoutubeプラットフォームをハックして行います。

ファンになると分かるのですが、欅坂48の表題曲は1つのストーリーになっています。平手友梨奈さんが演じる「僕」が藻掻きながらも成長していく一連のストーリが欅坂46の楽曲なのです。したがって、どれか1つの表題曲でキャッチできるとハマっていきやすいコンテンツ構造です。

更に、MVの作り方にも工夫があります。どこまで狙っていたかはわからないのですが、
・純粋にMVのクオリティが高い(金をかけている)
・メンバーの顔が写る箇所(リップシーン)がMVの最初から最後までちりばめられている
・楽曲終わりに映像だけの1演技がある
ことで、視聴完了率や視聴時間は、様々なアーティストのMVのなかでも高い水準を保っていることが推測されます。
これらの数値が高いと、Youtubeで他の動画を見ている時に関連動画やレコメンドされる動画のなかでも上位に来やすいので、1回でも欅坂46に興味を持った人のYoutubeアカウントには表示されやすい環境となります。

つまり、ハマりやすいコンテンツ構造とレコメンドされやすい仕組みで接触頻度を高めることで、Youtubeプラットフォームを活用してファン化の仕組みを上手く作っていると言えるのではないでしょうか。

そして、この仕組みの最後に位置しているのがメッセージアプリによる収益のサブスク化です。これが何といっても秀逸です!

凄さ③:凄すぎるメッセージアプリでアイドル業をサブスク化

FireShot Capture 1529 - メッセージアプリとは - 欅坂46 - www.keyakizaka46.com

一見すると、よくあるアイドルからのメッセージや画像を見ることができるサービスですが、全然次元が違います

このアプリで何ができるかというと
・月額課金(1メンバー300円/月)で、LINEライクな画面でメッセーが届く
・1通150円でメッセージへの返信っぽくファンレターを送れる
・無料開放されているブログの更新を通知する
の3つが主なUXになります。

「メッセージ」アプリなので、着信した時には「○○からメッセージが届きました」というプッシュ通知が来ます。この体験がLINEとほぼ同じなのです。

LINEは皆様使っていると思いますが、DLしているユーザーのアクティブ率70%を誇る異次元のアプリです。使わない日は無いのではないでしょうか。

このLINEを模倣することで、従前のWebブラウザを介してのファンとアイドルの接触頻度とは比較にならない異次元の接触頻度を生み出しています。
その異次元の接触頻度を生むアプリで、別メンバーがブログを更新したらその通知もされる、、、。

これは単純に見えてアイドル業をガラッと変える仕組みです

もはや、CDや楽曲を作らずとも、ブログを書いて通知を送れば、勝手に別メンバーの購読も進むから、1ファンからの収益単価は時間と共に上がっていくのです。
しかも、アプリを介して接触頻度は継続的に高く維持できるので、コンサートや物販への送客も極めて高効率で行えます。

まさにスマホ普及をてこにファン化を進める仕組みを作った欅坂46の最高傑作がこのメッセージアプリでしょう。

もうCDに投票券をつけることで無理やり客単価を吊り上げる必要はないのです。活動が停滞しても・CDを出さなくても定期的に収益が入り、しかもアイドル活動をしていれば自然に課金単価が上がっていく仕組み。。。

これこそが欅坂46がもたらした最大の「常識を打ち破るアイドル」の姿ではないでしょうか。
純粋にファンとのふれあいが増えれば、それだけ収益も上がる。すごく本質的な姿だと思います。

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ちなみに、日向坂46は冠番組「日向坂で会いましょう」の間にメッセージアプリのCMを結構な量流していますが、これはまだファネルの最後までファンを誘導し切れていないことを示唆しています。

色々な事情からコンテンツに連続性が無く、「ファン化」の部分に正解を持てていないため、バラエティ番組や雑誌で露出が増えても、キャッチしたボリュームにしては、なかなか収益化まで至る数が低いのではないでしょうか。

凄さ④:日向坂46/櫻坂46に見る再現性の高さ

非常に強い仕組みを持った欅坂46でしたが、メンバーの相次ぐ卒業・脱退に耐えきれず、櫻坂46としてリブランドするという決断をくだしました。(卒業・脱退が何で発生しやすかったのかは次のセクションで考察します)

ただ、櫻坂46は高い確率で成功すると断言できます。
欅坂46を成功させた手法をなぞっていけばよいから
です。

欅坂46デビュー時とはアイドル界も変わっていると思います。
韓流アイドルが過去AKBグループが抑えていた市場を取っているように感じますし、何よりも中高生にウケるコンテンツも大きく変化しているでしょう。

ただ、改名決定から櫻坂46のデビューまでのテストの仕方や、表題曲「Nobody's fault」のMVへのエンゲージメント、そしてシングルに同封される全くテイストの違う「なぜ恋をして来なかったんだろう?」など、欅坂46での成功の型を着実に実行している姿を見ると、ほぼ間違いなく欅坂級には成功しそうだなと思います。

かつ、日向坂46でも再現性の高さがうかがえます。
元々は「ひらがなけやき」という欅坂46のアンダーグループだった日向坂46でしたが、テスト⇒コンセプト修正⇒テストを繰り返すことで、AKBと乃木坂46の中間のような立ち位置として日向坂46へリブランドしました。
リブランド後は、紅白出場を果たし多くのバラエティ番組への出演もして、メッセージアプリの課金数も欅坂46に迫る勢いで成功しているように見えます。

「ひらがなけやき」のメンバーが頑張ったからファンがついて改名を果たした、というストーリーで語られることが多いですが、そのコンセプトを探る手法と収益の立て方は、欅坂46あってのものでしょう。

とは言え、仕組みとして弱い点もある

さて、最強の仕組みとノウハウを持つ櫻坂46ですが全く安泰かと言えば、当然そんなことは無いでしょう。

最大の懸念は、最強の仕組み故に持つ構造的な炎上のしやすさです。

ファン化を促進する仕組みとファンからの課金期間の極大化は、(言葉は悪いですが)粘着質なファンを多く生みます
かつてのAKBグループであれば週刊誌でスキャンダルを暴かれたとしても割と復帰できていますが、欅坂46でスキャンダルを報じられたメンバー(志田愛佳さんや織田奈那さん、長沢菜々香さん、石森虹花さんなど)は全員卒業となりました。つまり、ちょっとした事柄でもすぐ炎上するし、しかも鎮火しにくいという構造になっています。

ファンの声がダイレクトに届く分、そのプレッシャーは半端ない物でしょう。平手友梨奈さんの卒業曲「角を曲がる」は、そんな心情を吐露している様にも見えます。

また、次のステップを見出しづらいというのも構造的な弱さです。

ターゲットを思い切って絞るのは良いのですが、ファン層を広げていこうとすると、絞ったが故の広げにくさが生じます。
そこそこの規模で高収益体質を維持するという方向性はありですが、それではメンバーのモチベーションは続かないでしょう。
新たな方向性に進みたい場合や、将来を考えて別の見られ方もしたいメンバーにとって、卒業が唯一の選択肢になってしまいます。佐藤詩織さんや鈴本美愉さんの卒業も、この辺りに原因があったのではないでしょうか。

頑張れ、櫻坂46!!

でもまあ、いろいろ書きましたけど、1ファンとして本当に応援してます。
欅坂46の曲には、つらい時に本当に支えられています。

この記事をきっかけに、櫻坂46を好きになってくれる人が1人でも多くいますように。

では、仕事します(笑)

紅白の件もサービス設計の面から分析してみました。
よかったらご覧ください。



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