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夜 ~あしたがあるなら

闇にまぎれて横たわり
審判を待っている
ひとつのときが終息し
ようやくねむりにつけるらしい
疲れ、未練、あきらめ、そして安堵
短くもあり、長くもあった

準備はととのうはずはなく
足りるはずなどないのだった
そんなつもりじゃなくっても
地団駄を踏んでもやってくる
そういうものに違いなかった

受け入れれば、楽になる?
目を閉じる
闇が彼方へ続いている
見たことがないほど、美しい闇
いいえ、それは親しい闇
いつもそこにあった闇
認めようとしなかっただけで

どこにでも、いけたんだなあ
いつだって、いけたのになあ

闇には星がまたたいている
よく見ると、星ではない
ああ、結晶だ
たぶん、知っている
なつかしい、結晶

なした、なされた、さまざまのこと
おおもとの、もっとも簡潔な
心の核のかたち
あの結晶を降らせたい
わたしのなかに降らせたい
ためらうことなんか、ないのだから

口を開け、息を吸いこみ、泳ぎだす
呑みこもう、ひとつでもたくさん
魚をまねて胴をくねらせ
両腕をはばたかせ
体側に添わせたり、まっすぐ前に伸ばしたり

体は軽く、嘘みたいに自由
望むほうへ泳いでゆける
望むほうへどこまでもゆける
美しい闇を、どこまでもゆく
ひとつ、またひとつ、呑みこむと
結晶は、静かに積もり、とけていく
わたしもまた、とけてゆく
きっと、やがて結晶になる

あしたがあるなら
それはきのうと同じではない

ねむっているのか、さだかではなかった


◇連作の詩「夜と朝」の夜のほうです。朝のほうはこちら。


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