【エアバスA220機来日記念】ラトビア国営LCCのエア・バルティック(後編)
ラトビア国営LCCのエア・バルティックは、2010年代に飛躍的な発展を遂げました。その成長は2020年以降も続く予定でしたが―
筆者はフィンランドの大学院での博士論文執筆のために欧州各地へ出張し、公文書館などで史料調査を行っていましたが、その際に最も利用したのがエア・バルティックでした。
地元のトゥルク空港からリガ空港を経由しての欧州各地への接続が絶妙で、リガでの待機時間は長くても2時間程度かつ、ウェブでの航空券予約時には「航空券変更可能オプション」を比較的安価で付ける事も出来(リガ到着後も空港内の専用カウンターで有料にて変更可)、航空券自体も往復100ユーロ前後(約1万3,000円ほど)と決して高くはありませんでした。
日本では「安かろう悪かろう」というイメージがありますが、エア・バルティックに関しては定時運航率で世界の航空会社の中で第一位になった事もあり、乗務員の練度やサービス、安全意識についても高い水準にあります。
例を挙げると、2018年秋のある日、ロンドン発リガ経由でのトゥルクへの帰路、ロンドンからのエア・バルティック機の到着がやや遅れ、トゥルクへの最終便(午後11時45分頃の離陸)にギリギリ間に合うか間に合わないかくらいの時間になりました。
恐らく間に合わないと思い、実費で翌日発の便への振り替えを覚悟していたのですが、リガに着陸すると「急いで乗り継ぎしてください」と言われ、他の乗り継ぎ客らと共にスーツケースを片手にリガ空港内を疾走。マラソンのように、空港内各所には空港職員さん達とエア・バルティック社員さん達が配置され、ルートを間違わないように配慮されていました。
最終的に飛行機には間に合い、定時から3分遅れほどで全乗客が搭乗を終えてトゥルクに向けて離陸する事が出来ました。
機内サービスについてはLCC(格安航空会社)なので、ほぼ全てのサービスが有料です。食事についてはビジネスクラスの乗客は無料ですが、エコノミークラスは10ユーロ(約1,800円)程度かかり、残念ながら食事の質は日本人の感覚のそれ相応では無いと感じました。
2019年頃、エア・バルティックは新型機材エアバスA220の導入を以て、アラブ首長国連邦(UAE)のアブダビまで路線を拡大し、この便はリガーアブダビ間で5-6時間ほどかかるようですが、無料での食事のサービスはありません。
2020年3月以降、コロナ禍によってリガ空港はしばらくの間閉鎖され、エア・バルティックの運航は中止されました。運航再開が発表されたのは夏頃だったと記憶していますが、それでも各国の入国制限によって運航できた便は僅かだったようです。
筆者は2020年秋と2021年秋にリガ経由でロンドンへ行ったのですが、当時のコロナ対策についても書こうと思います。
ラトビアの法改正によって機内でのマスク着用が義務化(フェイスシールドではダメ)されるようになり、違反者には高額の罰金(数百ユーロ)が科されるようになりました。
ただ、機内への搭乗の際、マスク1枚や消毒シートが入ったキットが無料配布されており、そもそも搭乗地の空港もほとんどが構内でのマスク義務化が為されているのでマスクを全く着けずに旅行する事は無理強いしない限り、不可能でした。
正直、欧州のコロナ対策には従わない人々が多く、現地人の多くはマスクについても忌避感が強い側面があったので(自分はコロナ禍始まって以来ずっと平然とマスクをしていたが)、エア・バルティックのコロナ対策はどうなのかと不安な面がありましたが、
2020年秋、ロンドンからリガへの帰路、フェイスシールドのみでエア・バルティック機に登場した老齢の乗客に対して、乗務員さんや周りの乗客が再三のマスク着用警告を発し、最終的に文字通りの「レッドカード」を掲示されて一切のサービス拒否を通知されていました。
リガへの着陸後、この乗客は警察に身柄を引き渡され、ラトビアの法律に従って高額の罰金が科されたと思われます。
一歩間違えば、機内で安全上の措置が講じられてもおかしくないほどの怒鳴りあいでしたが、エア・バルティックの乗務員さん(女性)はプロ意識高く、どんなに当該乗客から怒鳴られても動揺せずに説得を続け、最終的にサービス中止の判断を出したのが凄かったと正直に思います。
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