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「未経験なんですが大丈夫ですか?」

ライターや編集者として仕事をしていると「こんなクリエイターさん、いないかな?」と知り合いから紹介を頼まれることがあります。バイネームでご紹介したい人が思いつくこともあれば、そうでないこともあり、後者の場合はSNSで呼びかけてみようか、なんて話になることが少々。

わたしのSNSは同じ業界の方がフォローしてくれていたりもするので、そういった投稿をすると、思いのほか多くの人が連絡をくれます。いつも助けてくれてありがとうございます。

その中で、一定数あるのが「未経験なんですが大丈夫ですか?」というDMです。クライアントさんや仕事内容が変わっても、必ずそういった連絡ってあるんですね。連絡しようと思ってくださったその気持ち自体はとてもありがたいのですが、どうもザラッとするのです。


ザラッとするポイントはいくつかあるんですが、まず「大丈夫ですか?」と尋ねられること。募集要項みたいな話での「未経験可かどうか」を尋ねられているのかなとは思ってますが、前提としてプロとして対価を得る仕事なので「大丈夫です」とは言えません。

「仕事としては請けたことがないがブログなんかを書いているくらいの未経験は可か?」という話であれば、そう書いてください。そうして書いたものを送ってください。記事を見るなりすれば、こういう仕事をしている人間たちはある程度ジャッジメントができます。

未経験というものを何で定義するのかはとても難しい問題です。趣味の範ちゅうでよくブログを書いている人もいれば、勤めている会社でたまたま文章を書いている人もいます。これだけSNSが発達しているので、プロとアマチュアの垣根もほとんど無いと言えるように思います。

ただ、一つ言えることは未経験であろうがそうでなかろうが、仕事として引き受けるなら戦う土俵は同じ。プロがひしめく場所です。その環境でプロとしての仕事を全うできるかどうか=大丈夫かどうかに繋がっています。

未経験、経験者を問わず、大丈夫だと言えるからこそ手を挙げる。そういう姿勢がプロとして仕事をするなら大切なのではないかなと思うのです。

「未経験なんですが大丈夫ですか?」という質問をもらったとき、わたしは「未経験がNGという決まりはないですが、きちんとした質でお仕事ができることを教えてください」とお返事しています。冷たく感じる人もいるかもしれませんし、実際、これを送ると途絶える返信もあるので申し訳なく思いつつ……。


それから「未経験」という状態についても少し触れておこうと思います。「未経験なんですが大丈夫ですか?」という質問からは、未経験であることをディスアドバンテージだと認識しているような印象を受けます。もちろん人によって状況は異なるので、違う人がいたらごめんなさい。

もしも書いたような状況なのだとしたら、その解決方法は単純で、経験者になることです。仕事として対価をもらったという意味合いの経験でも良いですが、しっかりとした質の記事を書いたという経験を求められていることも多いと思います。

たとえば、とある旅行メディアでライターを探していたとします。一人の応募者から連絡があり、その人が書いているというブログを読んでみると、旅先での宿泊地、飲食店、観光地、アクセスなどが詳細にかつ読みやすくわかりやすく書かれた記事が何十本も掲載されていました。けれど、応募者はライターとして対価をもらったことはないそうです。

状況次第ですが、もしもわたしがこのメディアの編集者だとしたら、この応募者と一緒に仕事をしたいです。読者のためになる記事を一緒に作れるだろうと思うから。

ようするに、未経験ってどんな形であれ解消できるものなんです。本人の意思次第で。「未経験なんですが大丈夫ですか?」という質問からは、その未経験さをどういう形で乗り越えようとしているのか、あんまり見えてきません。

「仕事としては未経験なんですが、〇〇な仕事をしたくてブログを書いていますがどうでしょうか?」とかなら、同じ未経験でも受ける印象は随分と違います。

余談ですが、わたしの友人は人物取材ができるライターになりたいという気持ちから、身近な人を取材した記事をnoteで定期的に更新していました。今となってはそれが仕事になって生き生きと働いています。そういう乗り越え方を選んだ人もいます。


クリエイターってなんの資格がなくてもなれちゃう仕事です。極端な話、今この瞬間に「ライターです」なんて名乗っちゃえば、形式上はライターになれるわけです。けれど、クリエイターとして仕事ができるのかどうかはまた別の話。

結局のところ、未経験かどうかという事実に対して良いとか悪いとか思うことはそう多くありません。未経験であろうがなかろうが、良いものを創る人は必要とされる環境があります。それより大切なのは、未経験であることをどのように捉えて、行動しているのかです。

もし未経験でありながらもクリエイターとして活動したいのなら、その未経験さとどう向き合うのかを考えてみてはどうでしょう。クリエイティブを仕事にしたいと思っているのなら、自分の行く末を設計するのも一つの仕事です。誰かがなんとかしてくれるほど甘い世界ではありません。

わたしなら「大丈夫ですか?」と人に回答を求めるよりも、「大丈夫だ」と自信を持って堂々としていられるクリエイターになりたいものです。そのためにできる手立てや方法を考えて、少しずつ実行する。そうして、これまでクリエイターとして生きさせてもらいました。


さて、柄にもなく耳の痛めな記事を書きました。どう読まれるのだろうかとヒヤヒヤしています。普段はあんまり選ばないであろう強い言葉も選んでしまいました。傷ついた人がいたらごめんなさい。

毎年、お正月を過ぎるとどうしてかこの手の相談をもらうことが増えます。年末年始に人生について考える人が多いのかもしれません。

たかが26歳の小娘の言い分なので、適当に流していただいても結構です。この考え方がすべて正しいと鵜呑みにはしないでくださいね。

ただ、わたしがこうして書くことが悩んでいる人が動き出すきっかけになったり、思案する参考になるなら悪くないかと思って記事に残す決断をしました。汲んでいただけたら幸いです。それでは。

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