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サンタがいないと知った日の話

クリスマスに向けて街が一気に加速し始めた。この時期のイタリアはキラキラして2割り増しくらい綺麗だけど、どこに行っても人が倍増する。1月10日くらいから冬物のセールが始めることは決まっているのに、どうしても今クリスマスプレゼントを買わなくてはいけないと強迫観念に囚われた人々が街をさまようのだ。靴下だとか石鹸だとか。プレゼントというかお歳暮のようなもの。

5歳以前のことなので詳細はもうすっかり忘れてしまったけれど、保育園でクリスマスパーティーが開かれた。その頃は今みたいにクリスマスとかサンタクロースとかのディテールははっきりしていなかったので、クリスマスっていうのはツリーを立てて、生クリームのケーキを食べて、サンタが来てお菓子がもらえるくらいのイベントだった。初期のちびまるこちゃんのクリスマスパーティーの話を参考にしてもらいたい。

「今日はみんなのところにサンタさんが来たよ!」とかそんな呼びかけだったんだろう。

そこにやって来た赤い服を着た人は祖父だった。つけひげを付けていても、赤い服を着ていても祖父だった。迎えに来た私と姉を自転車の前後に乗せて連れて帰る大雑把な祖父だった。(当時は今のような二人乗り自転車はなくって、一人は後ろの荷台に座って乗って、もう一人は前のカゴに入れられていた。よく後輪に足をからませて泣いた。)

祖父は地域行事に参加するのが好きだったから、保育園でも運動会だとか園庭の花壇とかそんなことを手伝っていた。その流れで祖父がサンタ役になったんだだろう。

その日、サンタさんはいないということを知った。サンタさんの中身はうちのおじいちゃんだから。5歳くらいの私はちょっとくらいがっかりしたのかもしれないけど、「おじいちゃんじゃろ!」って思ったこと以外はみんな忘れてしまった。

かなり高齢だから当然といえば当然なんだけど、祖父は年に1度の帰省の度にどんどん小さくなっている。1年後にまた会えるか分からないから、一緒にいる時は後悔しないように。と決めてから数年たつ。

そういえばおじいちゃんにクリスマスプレゼントをあげたことがなかった。もっと前に何かすればよかった。今あげても自己満足にすらならないから寂しい。

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