Be different

あれこれとセミナーやワークショップに参加するのが好きです。
すこし前まで京都大学周辺に生息していたので、京大関係研究者等が講師の無料セミナーや講義にちょろちょろ参加していました。

あるとき、学術情報メディアセンターの土佐尚子教授の弟子が流す情報をキャッチして(たしかいまはなき「おもしろ講座」に参加してメアドを登録したひとに撒かれたと思います)、英国の映画プロデューサー、Nik Powellの講義に参加してみました。

メモ魔なので、セミナー・講義に参加するときは必ずノートを取っているので、探してみたのですが見つからず。かわりに、ウェブに書いてた自分の日記をみつけました。2016年10月26日のことだったようです。


「すっごくよかった!

行ってよかった~!

バージン・レコードをリチャード・ブランソンと共同で立ち上げて
そのあと映画界にシフトして
いまでは映画監督、プロデューサー、
ロンドンの映画学校の校長をしている
映画監督の、クローズドの講演会に行ってきました。

英語もすごくわかりやすかったし
経験による含蓄深い言葉の数々
たいへん勉強になりました。

バージン・レコードではセックス・ピストルズもだしてたんで
シド・ビシャスとロンドンからストックホルムに行ったこともあるんですって!

昔のひとの言葉の引用や、
自分の言葉などで
いろいろな「レッスン」がありましたが、

心に残ったのは標題の言葉と、

「成功するには、ちょこっと運があることが必要。
そして運を得る努力も必要」

ということをお伝えして

今日はもう寝ます~
おやすみなさい。」

なにやら、興奮していたようです。

そう、ヴァージン・レコードをリチャード・ブランソンと立ち上げたひとなんだそうです。

そして、David Bowieの映画「ビギナーズ」のプロデューサーでもあるとか。講義のあと、教壇に行って
「あの映画、観にいきました!」
と言ったら、
「あれは、ちょっとお金かかりすぎたなあ(苦笑)」
と言ってはりました。

日記を眺めながら手さぐりで当日の様子を思い出します。
中くらいの講義室で、まばらに座るのはおもに学生。日本人からみると大柄なNikさんは講義に使用する機器のセッティングのあと、座っている学生に気軽に声をかけて「なにを専攻しているの?」と訊いていき、わたしもきかれたので少々うしろめたく感じながら「社会人です」と答えました。

講義はたしか、30人ばかりのヒッピーの集合写真からはじまりました。
「ヒッピーって知ってる?
ヒッピー?ヒッピー?ヒッピー?」
とNikさんは壇上から左、前、右の聴衆を指して「ヒッピー」を知っているかきき、みながうんうんとうなずくと満足そうに「OK」と話を続けました。

リチャード・ブランソンとともにたくさんのヒッピーを雇い、実際にいろんなお店でやってるギグ(生演奏)をききにいかせて、彼らの主観的な情報を収集してレコーディングするミュージシャンを決めたそうです。セックス・ピストルズもそのひとつ。

さてブランソンが世界各国に営業に行くようになり、日本にもやってきました。彼は連日Sonyなどの大企業をまわったのですが、興奮してNikに電話してきたそうです。
「きょうはここでも『はい』って言われたよ!あそこでも『はい』と言われたよ!」
日本について、少々勉強していたNikさんは冷静にいったそうです。
「あのね、リチャード。日本語の『はい』はyesという意味じゃなくて、『あなたのおっしゃることは理解しました』って意味なんだよ」
それでもヴァージン・レコードは成功して、のちにレーベルは売り、グループに発展していったのは多くの方がご存知のとおり。

その後の話はブランソンが女装して客室乗務員になった話と写真(仕事はたのしく、遊びもからめてしよう)、Nikさんがバージンを離れて映画業界にシフトしてからプロデュースした映画界の話、経営している映画学校がどういうところか、どんな生徒がいるか、どういう点でこの学校が映画業界を目指す人にとってよいか、卒業生の活躍…といったお話でしたが、日記にもあるように、「唯一無二であれ、ひとと違うことをしよう」ということをことあるごとに言っておられました。

それをきいて、わたしは心底安心しました。

なんとなれば、こどもの頃から「ひとと違うのはいけないことだ」と教えられてきて、社会に出ても、「個性が大事」と言いながら、業種によりますが、日本では周囲に同調してやっていかなければなりません。そう言われたからといって、急に会社や社会で自由になることはできませんがそれでも、「ひとと違うことを考えよう」と自分に言い聞かせられるようになったのは、わたしにとって、おおきな助けでした。


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