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【詩】レンタル

(はじめに)

 今回は、ほたかえりな さまのコメント欄で
のリクエストに応えまして、詩を載せたいと
思います。2009年に、詩人の金子みすゞさん
の出身地でもある山口県で開催されましたコ
ンテスト、『夏休み特別企画 金子みすゞの
詩の世界アート&ポエムコンテスト』で佳作
に選んでいただいた作品になります。
 私の好きな詩人であります金子みすゞさん
は、やわらかな言葉で問いかける「こだまで
しょうか」や「大漁」は有名な詩です。

 コンテストに応募した詩が生まれた背景を
少しだけ述べますと、2008年の年の瀬にリー
マンショック(世界金融危機)による派遣労
働者の方たちが雇い止めにあい、その多くが
製造業に従事し、派遣会社や雇い先が用意し
た寮を失職と共に出なければならなくなりま
した。住むところがなくなった方たちが集ま
ってできたのが「派遣村」でした。生きるこ
との保障を求めた社会運動として、東京の日
比谷公園にテントが設置されたのです。全国
から食料などが届けられました。当時の求人
誌には「寮完備」「給与25万以上」「正社員
登用有り」の文面が掲載されており、故郷に
残してきた親や子供に仕送りができる、まじ
めに過ごせば、いずれは正社員になれると期
待を胸に働き始めた方もいらっしゃったと思
います。メディアを通じてでしたが、この問
題に触れましたとき、なぜか、金子みすゞさ
んの「大漁」の詩が浮かんできました。

 朝焼小焼だ/大漁だ/大羽鰮の/大漁だ
 浜はまつりの/ようだけど/海のなかでは
 何万の/鰮のとむらい/するだろう

 浜辺の状況とは違う、海の中でのかなしみ
を、画面上に重ねて見ておりました。現在の
労働者派遣法がどのようになっているのか私
は専門ではないので解りませんが、雇う側も
雇われる側もなるべく幸福であって欲しいと
願ってやみません。


 それでは、どうぞ──────────


 レンタル

社会保障はありません
有給休暇などもってのほか
あくまで稼働したぶんだけ安心を
受け取ることが可能です
不具合があれば すぐにでも
新しいのに代えられます

今日もレンタルショップには
お客さまがやってきます
予算内にあった都合の上で
より良い製品をお求めに
テーブルを挟んでの交渉が
店内を満たします
製品たちは
自分の出番を待つあいだ
集中して話を聞いています
任務先になるであろう情報を
少しでも知っておくために
気を休める暇はありません
どうやら契約が成立しました
依頼人は真剣な面持ちで
お目当ての品を確認します

ラベルに記するは
「貸し出し使用期間は六十日間」
以後の継続は
お好きなように決められます
社会保障はありません
有給休暇などもってのほか
あくまで稼働したぶんだけ安心を
受け取ることが可能です


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      イラストお借りしました
      ありがとうございました

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(ちょっとだけ解説)

 古いなぁ、と感じます。時代背景もあるの
でしょうが、詩に関しても、強度がなく技術
面や精神面において、未熟さがみられます。
ひとつに、出だしの「社会保障はありません」
から「受け取ることが可能です」までの四行
を、終連にもう一度使用している安易さ。現
在では通用しないなと思ったりします。
 私も派遣会社を通して勤めていた頃、派遣
先の都合で契約解除になった経験があります。
私情が入りすぎているのかもしれません。


 お読みくださいまして、ありがとうござい
ました。

    「私、昨日、誕生日でした😆」




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