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大塚たくまさんインタビュー:苦手は「武器のひとつ」

福岡を拠点に活動されるライター、大塚たくまさん。

Twitterで大塚さんの「誰かにインタビューされたい」とのつぶやきを幸運にも拾うことができたフリーランスライターしのむが、インタビューを敢行しました。

見るもの、感じるものすべてへの「愛」を感じる文章を指先から紡ぎ出す大塚たくまさんへのインタビュー。

今回は最終回となる第4回。第3回に引き続き「苦手」がテーマ。ライターにとって時に「苦手」は武器となる、というお話です。

たくまさんは梅干しと玉ねぎが苦手

――しのむ:たくまさんは、からいラーメンの記事とか、たくさん食べ物系の記事を書いていらっしゃいますけれども、苦手な食べ物はありますか?

――たくまさん:梅干しと、「メインに躍り出た玉ねぎ」ですね(笑)!

――しのむ:え!? 玉ねぎ! 食べられないのは生ですか? 煮たものですか? 料理の仕方で結構、食感が変わると思うんですが。

――たくまさん:うーん……。料理の脇役としての玉ねぎは、むしろあった方が美味しいと思うんです。

たとえばハンバーグの玉ねぎは、入れれば入れるほど美味しいんですけど、オニオンフライ、オニオンリングのフライとか、玉ねぎの天ぷらとか、玉ねぎだけのサラダとか、玉ねぎがメインに出てくると食べられなくなるんです(笑)。 だから食感なんですかね。なんか玉ねぎが全体に出てくると食感とか匂いとか、気になっちゃうんですよ。

――しのむ:オニオングラタンスープは、どうですか?

――たくまさん:それ、よく聞かれます(笑)! オニオングラタンスープは食べられるんですよ。なんでなんでしょう(笑)? 

トマトでもたまに似たような人いますよね。生のトマトは食べられないけど、ケチャップは食べられるとか、生のトマトは食べられるけど、加熱したピザにのったトマトのスライスは食べられない、とか。

その感覚に似ているかもしれません。

――しのむ:うちの姉がその「生トマトはダメだけど、ケチャップはイケる」派です(笑)。

――たくまさん:ただ梅干しは食べなくても意外と困らないし、玉ねぎもだいたい脇役なので、食べられなくて困った! という経験はありません。

それに梅干しや玉ねぎに関する仕事は、今のところ出会うこともなくやってますね。

梅干しや玉ねぎの仕事は「むしろチャンス」

――しのむ:今後もし、梅干し製造会社からお仕事の依頼があったらどうしますか?

――たくまさん:そしたら僕が梅干しが苦手であることを活かして、記事を作るしかないですね。

うん、むしろチャンスじゃないですか。 

「教えられる」みたいな。「梅干しが苦手」っていう自分の個性をうまく活かして「苦手なんですけど」って会社の人には伝えて、開発担当の人からの「じゃあこんな梅干しだったらいけるんじゃないですかね」みたいな展開があるといいですね。

「梅干しが苦手な人って、昔の梅干しのこういう部分が苦手なんですよ」と教えてもらえそうですし。

で、「この梅干しは苦手とされる部分を少なくしてありますけど、どうでしょうか」みたいなことを提案してもらう記事ができそうな気がします。

「苦手」に触れることで変わる可能性がある

――しのむ:今はちょっと味付けを変えてある梅干しもありますよね。鰹節をいれてアミノ酸の風味を出したものとか、はちみつを入れて甘くしたものとか。

――たくまさん:あ、そうなんですか? 実は梅干しが苦手なので、梅干し業界の世界の広さを知らないんですよ。はちみつや鰹節が入れてある梅干しの世界を知れば、梅干しを好きになるかもしれません(笑)。

「知らない」立場から伝えることは、読み手にとっては読みやすくなると思うんです。誰かに物事を伝えるときに、何もかも知り尽くした人間がより深掘りしたら、あまり知らない人たちを置いてけぼりにしてしまいますよね。

――しのむ:確かに、ありますね。深すぎて、付いていけなくなってしまう、みたいな感覚が。

――たくまさん:僕それめちゃめちゃあるなと思ってて。

好きなものを発信する時に怖いのは、「めちゃめちゃ好きな人」がその道の専門家に聞くと、読み手が限られること、読者が置いてけぼりになっちゃうことなんです。

深すぎて意味が分からない、みたいな。

だから僕は苦手なことがあったらむしろチャンスで、苦手だからこそ、そういう専門の人とか、そこに本気に取り組んでいる人に触れると、自分の苦手、という考え方が変わる可能性があると思っています。

よく知らないから苦手なだけなんで、知ることでびっくりしたとか感動したという体験が隠されている可能性があるからこそ、記事にした時に面白くなると思うんですよ。

知らないことが多ければ多いほど、読者との距離が近くなるんです。

――しのむ:確かに、知らないから苦手なだけかもしれない。好きになれる要素がかくれているかもしれない、と考えて記事にすると、知らない読者の興味を惹きつけられますよね。

――たくまさん:だから僕の記事では、僕の持論とか、僕の考えみたいなのはあまり出てきません。

「知らない」状態で行って、いろいろ聞いた上でびっくりしたりとか感動したというところに、共感してもらえればいいな、と思っています。

初心者にとっての「そもそもの壁」を取っ払いたい

――しのむ:質問する側が専門的すぎると初心者や、まったく知らない読者がついていけなくなっちゃいますもんね。

――たくまさん:そうですね。インタビューされる側の当事者の人は「もっとこんなこと伝えたい」「あんなことを伝えたい」と考えていたとしても、それがときに一般の人の感覚とずれているケースが結構あります。

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「そもそもこれなこれ何?」みたいな。

読者は「そもそも誰?」とか、「そもそもこれは何を楽しんでるの?」「そもそもこれはなんの意味があるの?」みたいな、「そもそも〜」で始まる疑問を持っていることが少なくないんですね。

一般の人たちにとって「そもそもこれ、どんな意味があるんですか?」みたいなことでも、その業界にいる人や専門家は「当たり前にみんな知ってるよね」っていう前提のお話を進められることがあります。

――しのむ:その業界にいる人にとっては、当たり前のことなんですもんね。

――たくまさん:でもその「そもそも」の部分だけは、わかりやすく説明しないといけないんです。

何も知らない人がその「そもそもこれ何?」という「そもそもの壁」(という言い方を僕はよくしているんですが)を楽しく超えられると、その先の深い内容まで読んでくれるっていう持論がありますね。

――しのむ:どうやって読者に「壁」を超えてもらうかは、ライター、インタビュアーの力量にかかっているわけですね。

――たくまさん:僕が苦手なものに取り組むなら、その「そもそもの壁」を楽しく乗り越えられる企画がいろいろありそうなので、いいなと思いますね。

僕の今の仕事の中身からすると、苦手は企画のチャンスといえます。「苦手な人が実際にやったらどうなるか」っていう王道というか、定番というか、1番一般層に響きやすい、共感しやすい中身になりますからね。

・・・

福岡を拠点に活動するライター、大塚たくまさん。

あるメディアでご縁をいただき、さらに今回、1対1でお話を聞ける機会をいただきました。

真摯な仕事への姿勢や、仕事に対する考え方を伺うことができました。

4回にもなった「大塚たくまさんインタビュー」はこれで終了です。

これからも、たくまさんのいちファンとして、新たな記事を楽しみにしたいとおもいます。

たくまさん、楽しいお話をありがとうございました!


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