【デート】

近場の公園へと散歩に出てきた。
公園といっても奥には池があったり、運動会館やランコースがあったりする広いものだ。中は歩道が敷かれていて、その脇には桜が等間隔に植えられている。そこを二人でゆっくり歩いていく。

ちょうどベンチがあったので、一休みすることにして。
「飲み物買ってくる、コーヒー?」
敢えて意地悪で聞いてみる。

「・・・ミルクティ」
彼は少しむぅーっとした顔で言う。

やっぱり香りがキツめのものは今だに苦手のままみたいだ。

一番近くの自販機に珍しくミルクティがなくて。仕方なくもうひとつ先まで行って。結構時間かかってしまった。待ってるかな・・・ポツンとつまんなさそうにしている彼を想像して少し笑う。

「・・・あれ?」
ベンチで座ってるかと思ったのに見当たらない。
暑かったのかコートだけ軽く畳んで置いてある。

辺りを見回してみると、あ。少し奥まったところの桜木の下で
彼がこちらに背を向けて立っている。どうやら蕾が膨らみかけの枝に手を延ばそうとしているようだ。
身体を少しこちらに向けて、綺麗な横顔が見えるー。

その姿は本当に端正に作られた人形のようだ。
太陽の光が丁度当たっていつもより肌が白く見える。
そして。少し風が出て髪が揺れて。
髪色は実体化するときに真っ黒になったはずなのに。
光の加減のせいだとは思えない、紫に見えてドキリとした。
・・・何だかこのまま消えてしまいそうだー。

「・・・セイ!」

そんな不穏な感じを振り払うように、慌てて声をかけて駆け寄る。こちらに気づいた彼は、笑顔で。
髪の色もいつもの黒に戻っていた。気のせい・・・?でも。
買ってきた缶をコートのポケットに押し込み、思わず彼の手をぎゅっと握って。ちゃんと体温があるのを確かめてしまう。

「ーどうした?」
明らかに挙動不審な私の顔を心配そうに覗きこむ、彼。

「・・・何でもない」

どうして。

せっかく触れられるようになったのに。
幸せなはずなのに。
こんな不穏な気持ちになるんだろうー。

ーfin

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ワンライお題シリーズ

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