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北海道増毛町

夢を見た。
どんな夢だったかなんてそんなことは覚えていない。
妙にリアルで、たまに残酷で、それからドキドキして。
でも、とても暖かい夢だった。
それが今回の北海道だった。
北海道はニュージーランドに似ているなと何度も思った。
脈々と受け継がれてきた風土がなんともまあ。
寒くなかったらとても住みたいと思った。
寒いのはとても苦手だから難しい相談だったけれど。

最初の夜
増毛町の議会議員に当選したお祝いの集いに純さんは居た。
出会って数分後言われたのが、「BBQしよう、美味いもん食わせてやる」だった。
体重は100kgを優に超える巨漢で瓶ビールを何本もラッパ飲みしていた。
絵に描いたような漁師の親父という印象だった。

数日後、本当に電話がかかってきて、たらふく美味いもん食わせてもらった。
生牡蠣、マグロ、ウニなんかの特上の採れたての海産物。
さがり、心臓、ホルモン、それから行者ニンニクに山菜。
全部この辺りで採れるもので、どれもとんでもなく美味しかったのは言うまでもない。

とてつもない量の食材を平らげ、隣にいる肉食女子ならぬ不倫とつまみ食い大好きな奥様方の会話にたまに冷ややかに笑いながら町の未来について僕らは語り合った。

ほとんど初対面のこちらの話を真剣に聞き、融資まで考えてくれるほどの昔気質の俠気と、
たらふく食べた僕らの会計を聞いて酩酊気味な様相に一瞬見せた驚嘆の表情になんともまあ人間臭くて、僕はこの人がとても好きになってしまった。
何かあれば力添えしたいそう心から思わせる人としての魅力があった。

何をしに北海道に行ったのか。
食について、農について知りたかったからだった。
そこには新鮮で美味しい食材がたくさんあった。
なのに、僕らは映画で見ていた世界が現実の消費に直面していた。
至る所でその噛み合わない現実が起こっていた。
そして、最後に出会ったのが北竜町の大将が話してくれたことだった。

本物とはなんだかわかるか?
そう聞かれたのが農家のお手伝いを終えて、焼肉屋での最後のレッスンだった。
なんと答えれば良いのか、皆目見当がつかなかった。

「本物とは、後味がよく、いやさぎよく、いやしくないことだ、これは全てに当てはまることだ、食でも、仕事でも、人でも」

ああ、僕はてんで偽物じゃないかと言われているようで急に恥ずかしくなった。
とても自分がダサいやつに思えて嫌になった。

そして、帰る飛行機が欠航したお陰で出来た空き時間で寄った場所はそれを痛感させた。

クラーク博士の銅像にある言葉と六花文庫で手に取ったラビンドラナート・タゴールの詩集だった。

「少年よ。大志を抱け。
ただし、金銭や私欲を求める大志であってはならない。ましてや名声などと呼ばれる泡沫のものを求める大志ではあってはならない。人としてなすべき全ての本分に対して大志を抱くものであれ」

「危険から守り給えと祈るのではなく、危険と勇敢に立ち向かえますように。
痛みが鎮まることを乞うのではなく、痛みに打ち克つ心を乞えますように。
人生という戦場で味方をさがすのではなく、自分自身の力を見いだせますように。
不安と恐れの下で救済を切望するのではなく、自由を勝ち取るために耐える心を願えますように。
成功のなかにのみあなたの恵みを感じるような卑怯者ではなく、失意のときにこそ、あなたの御手に握られていることに気づけますように。」

もう一度ゼロからやり直さないといけないと誓った。
今年は学びの年
そうだったと振り返って思える年にしたい〆

 六花文庫にて

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