絵を買った。写真も買った。あと本を作った。
2011年
ネットで見つけた高木真希人さんのSHIFTのインタビュー記事を見て、ウワッ!サイコー!と思ってからずっと頭の片隅にこのシリーズたち全部好きだなぁってのがこびりついていた。
2017年
今年の6月、フリーランスでの生活もだいぶ安定してきて、実家から引越して一人暮らしを初めた。必要なものは事務所にあるので、部屋にはあまり置くものが無く、ゆったりとしたスペースができた。何もない空間が出来た時に、そこに好きな写真や絵を飾りたくなった。ゆとりが出来た時にそこに何かを添えたくなるものなのだなと思った。「本棚がないと本を買わないから、本を置く場作りからしたい。」みたいなことをかもめブックスの柳下さんが言っていて、それにアートも通ずるなと思いとても共感した。
「欲しいかどうか」という基準で、今までアートを見ていなかったのだけど、何かそういったものが今まで見てきたものの中にあったかな…と考えてみたら、真っ先に高木さんの絵が浮かんだ。あ、あれ最高だったな!と。
調べてみると、どうやら新作の個展が4月にあったみたいで完全にタイミング逃した……!と思った。アーティストは今作ってるものが一番いいものと思って作品を作ってるだろうし、それを展示で生で見て、グッときたら買っちゃうぞ〜と決めていた。
次に個展とかいつやるかわからないけど、ちょっと待つかな…と思うことにした。
2017年7月
敬老の日に発売される写真集「鶴と亀 禄」のロケ終わりに原宿のBOOKMARCにて行われていた山谷佑介さんの写真展「Into the Light」に寄った。見た瞬間アドレナリンドバだしのカッコよさで、そんなつもりはなかったのに、これは初めて写真のプリントを買っちゃうやつかもしれないと思った。自分の中のコリャヤベエのしきい値を超えたものは買いたい!と思いっていたタイミングで、それが一発目に来てしまった。
ちなみに13万した。
話はそれるが、私は家事の中で洗濯物干しがダントツに一番キライで、引越しの際に、その時間を省けるのだったらという思いで、奮発して17万円するドラム式洗濯乾燥機をネットで買った。大人になった気がした。
数週経ち、ヤマトの人が届けにきてくれて、搬入しようとしたら「あ、これ入らないです。単身用の小さめの縦型洗濯機しかこの部屋には入らないので、返品という形になります」と言われた。悲しみが深かった。後日、4万円の縦型洗濯機を買いなおした。大人にはなれなかった。今も悲しみだけは漂白できないまま洗濯物を手で干している。
なんの話かというと、17万円の洗濯機を買うつもりが4万円のものに成り代わったので、13万円が浮いていた。
写真のプリントは13万円だった。
「パズルのピースガッチリ……!天命…!」と思った。買った。握手した。サインももらった。嬉しかった。
その日は「アートを買う」という初体験に興奮して寝れなかった。誰かにこの興奮を伝えたくていつもよりおしゃべりになっていたし、完全に童貞捨てた感覚と一緒だった。
後日家に届き、部屋に飾ったらまた一層感動した。自分の好きなものが自分の好きな空間にある。たまらない良さがあった。
その良さを感じたら、欲しいと思っていた高木真希人さんの絵も我慢できなくなってしまった。
2017年8月
調べてみたところ、 clubFm(クラブエフマイナー)というサイトで作品を販売をしていることがわかった。基本、アート作品は展示などその場で買うイメージしか持っていなかったので、期を逸した人でもウェブでそれを買えるのはいいことだなと思った。ただ、現物を見てみたいという気持ちはどうしてもある。そういう人のためにレンタルのサービスもあるのかなと思った。欲しさの衝動にかられていたので現物もわからず買ってしまった。
二週間ほどたって作品が届いた。
めっちゃいい。。独り言でめっちゃいいって実際言った。ティッシュみたいの落ちてるのもなんかウケる。いま文章書いていて気づいたけど、良さを伝える語彙力が全然なくてウケる。
どうやら自分は「異世界のあたりまえ」みたいなシチュエーションが好きっぽいこともわかった。異質なものと日常とが混在したビジュアルに惹かれやすいのかもしれない。
しかし、家に届いて眺めていると本当に嬉しい。好きなものに囲まれて生活するのは幸せ。というIQ低めな価値観が満たされまくる。余程こころがすれない限りはいらねーやとなって捨てることも無いだろうし、一生付き合っていくものだと思うと一層愛着が湧く。
絵を買った、写真も買った。
私はデザイナーという職業で、「ビジュアルの力を活かして良い物や良い人をさらにサポートする」という仕事をしている。良くないと思うものはサポートしてもしゃあないのでしない。とわりと決めている。
なかでも写真家やアーティストなど表現をする人を応援したいという気持ちが強い。今回、自身が欲しいと思ったものを買うということを体験してみて、改めてその気持ちが強くなった。自分が面白いと思うものが世の中に広がっていったり増えるようになったらいいなと感じる。ので、それを支えるために自分の出来ることをやっていきたい。
そんな中で
去年くらいから、長野でフリーペーパー「鶴と亀」を作っている小林くんに、写真集を作ろう!という話を持ちかけて動き出し、色々話してるタイミングでオークラ出版に声をかけてもらいタッグを組んで写真集制作を進めることになった。
すげーリスペクトしているブックデザイナーの町口覚さんが、「写真家とは喧嘩しろ。喧嘩しなきゃいいもんなんて出来ねえ。」といっていた。
作家をサポートするのに、喧嘩なんてできんのかな…とか思っていたが、その言葉が胸にあったからか、小林くんとは相当密にやりとりをした。
デザインを見せたら「全然イメージと違うっすね〜」とか言ってきてムカついたりしつつ意見を聞いたり、「いや、こうした方がいいでしょ!」って反論したり、お互い褒め合ったり、とにかくやりとりをしまくった。
「作家本人よりもそいつの作品の事を知れ!」とも町口さんには言われた。
実際作家よりってのはさすがに…とは思ったが、作家と同じくらいの感覚を共有できるくらいまでには知ったつもりだ。という自信がある。それくらいコミュニケーションをとったし、見まくったし、考えた。
そうこうして、きたる9月18日の敬老の日「鶴と亀 禄」が発売される。
是非とも多くの人に見て欲しい。
小林くんの持つ魅力や培ってきた努力を、デザインの力でより良いものに昇華できたと思う。
日本初の爺ちゃん婆ちゃん×ヒップホップ写真集『鶴と亀 禄』―収録内容公開―
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